672 / 801
★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
659:宝物庫
しおりを挟む
「フゥ~! これでおいら達は大金持ちだぁあっ!!」
「ガッハッハッハッハッ! 宝じゃ宝じゃっ!!」
積み上げられた金銀財宝目掛けて、一目散に走り出す カービィとテッチャ。
もう……、恥ずかしいったらありゃしない!
騎士団メンバー達は驚きながらも、各々にゆっくりと台座を離れて、それらの側まで歩く。
皆じっくりと辺りを見渡しながら、注意深くそれらを観察していて、特に浮かれる様子もないのはさすがである。
俺はグレコと一緒に、一番近くの宝石の山まで歩き、そこにある特大の真っ赤な宝石を見つめ、そのあまりの輝き、あまりの美しさに、二人同時にホゥ~っと溜息を漏らした。
ギンロは、近くに立っている黄金の甲冑を見上げて、顎に手を当て、何を想像しているのか、ニヤニヤと厭らしく笑っていた。
「ここは宝物庫でしょうか? 何故このような場所が、塔の中に……??」
訝しげに頭上を見やるインディゴ。
洞窟の延長のような岩肌が剥き出しの天井までは、地面からおよそ10メートルといったところだろうか、めちゃくちゃ高い。
「理由は定かではありませんが、ここは間違いなく宝物庫ですな。しかしながら……、いやはや恐れ入った。幻影か、はたまた現物かは定かではありませんが、ざっと見る限りでは、ここにある物は全て、歴史的価値の高い物ばかりです、はい」
目の前にある、俺なら中にすっぽりと隠れられそうなほどの大きさの、表面がツルンとした青い壺を繁々と眺めながら、パロット学士がそう言った。
「それにしても……、ノリリア副団長。何故ここが安全だと分かったんです? 初めて来た場所だというのに、迷う事なく台座に炎を灯せだなんて……、どうして分かったんですか??」
炎を灯した張本人であるマシコットが、ノリリアに尋ねた。
確かに、ノリリアはさっき、「思った通りポ」って言ってた。
つまり、台座の中央に炎を灯すと、周囲に点在している別の台座にも炎が灯る仕掛けになっているという事を、ノリリアは事前に知っていた……、或いは予測出来ていたという事である。
それに、迷わず台座に炎を灯したという事は、洞窟内でわんさか寝ていた小鬼がここにはいないという事、ここは安全だと確信していたが故の選択だったはず……
ノリリアは何故、全てを知っていたのだろう?
……てかマシコット、その質問は、炎を灯す前にするべきでは?
もし万が一にもここに小鬼がいたならば、君の炎で奴らを起こしてしまっていたわけだからね。
ま、結果オーライだからいいけどさ。
「ポポ、実は……、気付いたのポ。第一階層の第一の試練と、この第二階層の第二の試練は、ある絵本を題材に創られているんじゃないポかって」
ほう? 絵本、とな??
「あ! それ、おいらも思ってた!! あれだろ? 『少年プッカと七つの試練』!!!」
金銀財宝の山に埋もれながら、頭に金ピカの王冠を被り、両手に指輪やブレスレットをジャラジャラとつけた品の無い格好で、遠くからカービィが叫ぶ。
お馬鹿なカービィはさておき……
少年プッカと七つの試練、とな???
なんだその、締まりの無い題名は。
(この小説の題名と大差ない幼稚さだな!)
「それならば、私も聞いた事があるな。内容までは知らないが……。確か、完全なる子供向けの書物ではなかったか?」
ロビンズは腕組みをしながら、かなり厳しい表情でそう言った。
「そうポ。小さな子供に、物事の良し悪しを教える為の教育絵本ポね。あたちがまだフーガに渡ったばかりの頃、文字の勉強の為に読んだ事があるのポ。物語の詳細まではよく覚えていないポが……。確か、主人公の少年プッカが、不思議な塔に登って、七つの試練に挑戦するのポ。一つ目がグリフォンの試練、二つ目がゴブリンの試練だったはず……。そのゴブリンの試練のお話に、ここと同じような仕掛けの宝物庫があったのポよ」
ふむ、つまり……
この封魔の塔の試練は、その絵本をモチーフに創られている可能性が高い、という事か……?
「とすると、この先の試練も、その絵本と同じような試練が待ち構えとる……、という事でさぁ?」
何故そうなっているのかは分からないが、小さな小さな手鏡を両手に一つずつ持ちながら、ライラックが尋ねた。
「もしかすると、そうかも知れないポ。だけど、さっきも言ったポが、物語の細かな部分は覚えていないポよ。もう随分と昔に、一度だけ読んだ絵本ポからね……。この第二の試練、ゴブリンの試練においても、主人公が何をどうしてどうなったのか、全然覚えてないポ」
両手を上げた降参ポーズで、ノリリアはそう言った。
「おいらの記憶が正しけりゃ、プッカは確か、小鬼に追い駆けられてたぞ~」
今度は高そうな絨毯の上で大の字になって寝転びながら、ヘラヘラと話すカービィ。
よくもまぁ、こんな場所で寛ごうと思えるものだ……
「何をして追い駆けられたのよ?」
尋ねるグレコ。
「それは~……、なははっ! 覚えてないっ!!」
肝心なところで役に立たない変態ピンク。
「とにかく! この宝物庫の何処かに、あたち達が求める上階への鍵が隠されているはずポ!! リブロ・プラタは、色こそ違えど、同じような宝玉だと言っていたポね。手分けして探すポよ!!!」
ノリリアの指示で、騎士団メンバー達は一斉に辺りを捜索し始める。
俺とグレコも、目の前の宝石の山をそっと掻き分けながら、上階へ向かう鍵となる宝玉を探した。
しっかしなぁ~……、この宝物庫、めちゃくちゃ広いぞ!?
この中から小さな宝玉一つ探し出すのは、至難の業じゃないかっ!??
いったい、何時間かかる事やらっ!?!?
と、心の中でぶつぶつ思う俺。
この時の俺は、目の前の宝石の山を掻き分けるのに必死で……
背後で何やら怪しい動きをしているテッチャの事など、まるで気にしていなかった。
「ガッハッハッハッハッ! 宝じゃ宝じゃっ!!」
積み上げられた金銀財宝目掛けて、一目散に走り出す カービィとテッチャ。
もう……、恥ずかしいったらありゃしない!
騎士団メンバー達は驚きながらも、各々にゆっくりと台座を離れて、それらの側まで歩く。
皆じっくりと辺りを見渡しながら、注意深くそれらを観察していて、特に浮かれる様子もないのはさすがである。
俺はグレコと一緒に、一番近くの宝石の山まで歩き、そこにある特大の真っ赤な宝石を見つめ、そのあまりの輝き、あまりの美しさに、二人同時にホゥ~っと溜息を漏らした。
ギンロは、近くに立っている黄金の甲冑を見上げて、顎に手を当て、何を想像しているのか、ニヤニヤと厭らしく笑っていた。
「ここは宝物庫でしょうか? 何故このような場所が、塔の中に……??」
訝しげに頭上を見やるインディゴ。
洞窟の延長のような岩肌が剥き出しの天井までは、地面からおよそ10メートルといったところだろうか、めちゃくちゃ高い。
「理由は定かではありませんが、ここは間違いなく宝物庫ですな。しかしながら……、いやはや恐れ入った。幻影か、はたまた現物かは定かではありませんが、ざっと見る限りでは、ここにある物は全て、歴史的価値の高い物ばかりです、はい」
目の前にある、俺なら中にすっぽりと隠れられそうなほどの大きさの、表面がツルンとした青い壺を繁々と眺めながら、パロット学士がそう言った。
「それにしても……、ノリリア副団長。何故ここが安全だと分かったんです? 初めて来た場所だというのに、迷う事なく台座に炎を灯せだなんて……、どうして分かったんですか??」
炎を灯した張本人であるマシコットが、ノリリアに尋ねた。
確かに、ノリリアはさっき、「思った通りポ」って言ってた。
つまり、台座の中央に炎を灯すと、周囲に点在している別の台座にも炎が灯る仕掛けになっているという事を、ノリリアは事前に知っていた……、或いは予測出来ていたという事である。
それに、迷わず台座に炎を灯したという事は、洞窟内でわんさか寝ていた小鬼がここにはいないという事、ここは安全だと確信していたが故の選択だったはず……
ノリリアは何故、全てを知っていたのだろう?
……てかマシコット、その質問は、炎を灯す前にするべきでは?
もし万が一にもここに小鬼がいたならば、君の炎で奴らを起こしてしまっていたわけだからね。
ま、結果オーライだからいいけどさ。
「ポポ、実は……、気付いたのポ。第一階層の第一の試練と、この第二階層の第二の試練は、ある絵本を題材に創られているんじゃないポかって」
ほう? 絵本、とな??
「あ! それ、おいらも思ってた!! あれだろ? 『少年プッカと七つの試練』!!!」
金銀財宝の山に埋もれながら、頭に金ピカの王冠を被り、両手に指輪やブレスレットをジャラジャラとつけた品の無い格好で、遠くからカービィが叫ぶ。
お馬鹿なカービィはさておき……
少年プッカと七つの試練、とな???
なんだその、締まりの無い題名は。
(この小説の題名と大差ない幼稚さだな!)
「それならば、私も聞いた事があるな。内容までは知らないが……。確か、完全なる子供向けの書物ではなかったか?」
ロビンズは腕組みをしながら、かなり厳しい表情でそう言った。
「そうポ。小さな子供に、物事の良し悪しを教える為の教育絵本ポね。あたちがまだフーガに渡ったばかりの頃、文字の勉強の為に読んだ事があるのポ。物語の詳細まではよく覚えていないポが……。確か、主人公の少年プッカが、不思議な塔に登って、七つの試練に挑戦するのポ。一つ目がグリフォンの試練、二つ目がゴブリンの試練だったはず……。そのゴブリンの試練のお話に、ここと同じような仕掛けの宝物庫があったのポよ」
ふむ、つまり……
この封魔の塔の試練は、その絵本をモチーフに創られている可能性が高い、という事か……?
「とすると、この先の試練も、その絵本と同じような試練が待ち構えとる……、という事でさぁ?」
何故そうなっているのかは分からないが、小さな小さな手鏡を両手に一つずつ持ちながら、ライラックが尋ねた。
「もしかすると、そうかも知れないポ。だけど、さっきも言ったポが、物語の細かな部分は覚えていないポよ。もう随分と昔に、一度だけ読んだ絵本ポからね……。この第二の試練、ゴブリンの試練においても、主人公が何をどうしてどうなったのか、全然覚えてないポ」
両手を上げた降参ポーズで、ノリリアはそう言った。
「おいらの記憶が正しけりゃ、プッカは確か、小鬼に追い駆けられてたぞ~」
今度は高そうな絨毯の上で大の字になって寝転びながら、ヘラヘラと話すカービィ。
よくもまぁ、こんな場所で寛ごうと思えるものだ……
「何をして追い駆けられたのよ?」
尋ねるグレコ。
「それは~……、なははっ! 覚えてないっ!!」
肝心なところで役に立たない変態ピンク。
「とにかく! この宝物庫の何処かに、あたち達が求める上階への鍵が隠されているはずポ!! リブロ・プラタは、色こそ違えど、同じような宝玉だと言っていたポね。手分けして探すポよ!!!」
ノリリアの指示で、騎士団メンバー達は一斉に辺りを捜索し始める。
俺とグレコも、目の前の宝石の山をそっと掻き分けながら、上階へ向かう鍵となる宝玉を探した。
しっかしなぁ~……、この宝物庫、めちゃくちゃ広いぞ!?
この中から小さな宝玉一つ探し出すのは、至難の業じゃないかっ!??
いったい、何時間かかる事やらっ!?!?
と、心の中でぶつぶつ思う俺。
この時の俺は、目の前の宝石の山を掻き分けるのに必死で……
背後で何やら怪しい動きをしているテッチャの事など、まるで気にしていなかった。
0
お気に入りに追加
496
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~
杵築しゅん
ファンタジー
20XX年、本当にその瞬間がやってきた。私は宇宙の管理者に1番目の魂の扉に入るよう指示され、扉を開け一歩踏み出したところで、宇宙の理の渦(深遠)の中に落ちていった。気付けば幼女に・・・これはもう立派な宇宙人として、この新しい星で使命を果たすしかない・・・と思っていたこともありました。だけど使命を果たせるなら、自由に生きてもいいわよね? この知識や経験を役立てられるなら、ちょっとくらい傍若無人でいいってことよね? 暗殺者や陰謀なんて無関係に生きてきたのに、貴族の事情なんて知ったこっちゃないわ。早く産業革命してラブロマンスを書くのよ!
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる