623 / 801
★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
610:ピリピリバーガー
しおりを挟む
ピリピリとした空気の中、食堂で朝食をとる俺たち。
料理を作っているダーラも相当ピリピリしている為か、出されたハンバーガーのような食べ物には、香辛料がふんだんに使われたバンズが挟まっていて、一口食べる度に俺のやわなお口の中はピリピリと痺れた。
隣に座るテッチャは(今更ながら、テッチャがここにいる事が、かな~り不思議なんだけど)、お口も喉もお強いので、ピリピリバーガーを三口ほどで平らげていた。
グレコとカービィは難なく完食していたが、甘党のギンロは飲み込むのに苦戦していて涙目だし、香辛料に慣れていないティカは一口齧っただけで後は全部残していた。
騎士団のみんなは、手短に食事を済ませた後、出発の準備をする為に自室へと戻った。
食堂には、俺たち六人だけが残されていた。
俺、グレコ、テッチャ、ギンロ、カービィ、そして新たに仲間に加わったティカ。
全員が一堂に会する事は、ほぼ初かも知れないな。
なんというか……、改めてこう見てみると、種族も背の高さもバラバラで、とてもアンバランスなメンバーである。
「そいで、その港町を襲っておったハーピー共の巣の近くを、堂々と横切って行くっちゅ~わけか?」
既に食べ終わっているテッチャが、ちゃっかりダーラに淹れてもらったホット珈琲を片手に、同じく食事を終えたグレコとカービィに問い掛ける。
「そう。それが最短距離だってノリリアは言っていたわ」
「んだども、危険じゃろう?」
「だろうなぁ~。けどまぁ、白薔薇の騎士団は結構鍛えられてるからな。ハーピーくらい何とかするさ。……まっ、数によるけどな!」
「うむ。ハーピーを舐めてかかるのはよくねぇ。あいつらはなかなかに悪賢いでの。しかし……、なんじゃろうな、夜に行動するとは思わなんだ」
「それって……、どういう意味かしら?」
「そのまんまの意味じゃよ。ハーピーはその姿通りの鳥目じゃて、夜間は目が効かんはずじゃ。どんな理由があるかは知らんが、襲撃するなら普通、夜間は避けるはずじゃて」
「そうなの? じゃあどうして……??」
「テッチャおまい、案外物知りなんだなぁっ!?」
「ガハハ! なぁ~に、ハーピーはわしの祖国、デタラッタの近郊にも生息しておるでの、ちょいと聞いた事があるだけじゃよ。じゃが、ここにおるハーピーとは種類が違うはずじゃて、習性も違っておるのかも知れんのぉ」
「種類? ハルピュイアは、そんなに沢山種類があるの??」
「いんや、多くはねぇぞ。おいらの記憶が正しければ、現存するハーピーは三種類だ。ベルクハルピュイア、メーアハルピュイア、シュタトハルピュイア。デタラッタの近郊に生息しているのは恐らくベルクハルピュイアだろう、奴らは岩山を好んで住処とするんだ。メーアハルピュイアは切り立つ海岸に、小型のシュタトハルピュイアは都会に生息するな」
「都会!? 都会って、町中にって事!??」
「んだ。フーガの西の町リバイノーガには、それこそシュタトハルピュイアの群れがわんさかいるぞ。けど、他のハーピーに比べると温厚だし、大きさもこれくらいしかねぇから……、よっぽどの事が無い限り、危険はねぇ」
カービィの言うこれくらいとは、俺の顔ぐらいの大きさだ。
言うなればまぁ、鳩くらいの大きさだろうな。
「そうなのね。じゃあ……、この島に生息しているハルピュイアは……?」
「たぶん、メーアハルピュイアだろうな。ここまで船が通って来た場所は、島の海岸のほぼ全てが切り立つ断崖だっただろう? メーアハルピュイアは、海にほど近い高所の岩場に巣を作る。つまりこの島は、メーアハルピュイアにはうってつけの住処だって事だ☆」
「なるほどのぉ。その、メーアハルピュイアっちゅうハーピーは、夜目が効くんか?」
「さぁ~? そこまではおいらも知らねぇ」
くっ……、肝心な所で役に立たないな、カービィこの野郎。
「けれど、カナリーの話じゃ、ハルピュイア達は夜にしか襲って来ないって……。だとしたら、メーアハルピュイアは昼間の方が苦手なんじゃないのかしら?」
「んだ、グレコさんの説は一理有ると思うぞ。つまり、昼間だったら、ユーザネイジアの木の近くを通っても大丈夫って事だ☆」
「んんっ!? ユーザネイジア!?? カービィお前さん、今なんて言ったんじゃ!?!?」
ユーザネイジアという言葉を耳にして、テッチャの顔色が変わった。
勿論、青くなったわけではなく、目がお金のマークになったのだ。
「ありゃ? モッモ、テッチャには話して無いのか??」
カービィの問い掛けに、まだ口の中がバーガーでいっぱいな俺は、ふんふんと頷く。
「ハルピュイア達はここ最近、この島に存在するユーザネイジアという名前の巨木に群がっているらしいのよ」
あ~っと……、グレコ?
テッチャが聞きたいのはそういう事じゃないと思うよ??
「なんとっ!? この島には、根絶されたはずの、あのユーザネイジアがあるのかっ!??」
うん……、テッチャの目のキラキラが止まらないね。
「らしいな。まぁ、おいらもユーザネイジアは見た事ねぇし、この目で見れるのはちょいと楽しみではあるな♪」
相変わらずの呑気なコメントですな、カービィこの野郎。
「うほほっ!? それはいい事を聞いたわいっ!!! ユーザネイジアの実と種があれば、ガッポガッポ儲けられるぞぉっ!!?」
あぁやっぱり……、あんたはなんでいつもそうやってさ、お金の事にばかり思考が向くのかね?
他の楽しみも見つけなさいよ、テッチャの馬鹿野郎。
「なはは! それはやめとけぇ~!! 少なくとも、アンローク大陸に持ち込んだ時点で、おまいが犯罪者になっちまうからな。ザサークが取引している以上、ワコーディーン大陸やパーラ・ドット大陸では規制が緩いみたいだけどよ」
「なんじゃ、世連(世界共和連合の略)で禁止されとるんかぁ。そりゃ残念じゃのぉ~」
そうは言うものの、テッチャは全然諦めていない顔をしている。
きっと良からぬ事を企んでいるのだろう、いつにも増してツルツルの頭が光って見えた。
そこで会話が途切れて、ピリピリバーガーの最後の一欠片を口に放り込む俺。
口の中の痺れと戦いながら、モグモグと咀嚼している……、まさにその時だった。
頭上にある天井、つまり甲板が、何やら騒がしくなってきたのだ。
ドタドタ、ワーワーと……
「何かあったんかの?」
カップに残っていた珈琲をゴクッと飲み干して、上を見上げるテッチャ。
俺達もみんな、真似して上を見上げた。
……うん、天井を見たって意味ないんだけどさ。
すると、ダダダダダーっと大きな足音を立てながら、甲板長のバスクが階段を駆け下りてきた。
そして……
「ダーラ! ガレッタが来たっ!!」
血相を変えた様子で、バスクが叫ぶ。
「えっ!? 重体じゃ無かったのかい!??」
魚の下処理をしていたダーラは、驚いて手元を狂わせて、持っていた包丁で魚の頭を激しく吹っ飛ばした。
「とにかく来てくれっ!!!」
そう言われて、バスクと共に、ダーラは急いで階段を上がって行った。
残された俺たち六人は、互いに目を見合わせる。
「……行くか?」
ニヤニヤするカービィ。
「そうね、気になるわ」
頷くグレコ。
「うむ、ダーラ殿が心配である」
涙目のまま、手元に残っていたピリピリバーガーを口に詰め込むギンロ。
「戦闘か?」
何故か殺気立つティカ。
「いやいや、知り合いじゃろうて、武器は必要ねぇじゃろう」
ティカより現状を把握出来ているらしいテッチャが、ティカを制止する。
「とりあえず、行ってみよう!」
ピョーンと椅子を飛び降りて、俺は階段へと向かった。
タタタタタッと階段を駆け足で登って、甲板へと向かう。
朝日が昇り始めたのであろう、辺りは少しばかり白んでいて、薄らと東の空が明るくなってきている。
甲板では、船員達が港側の船のへりに集まっていて、何やら深刻な顔で下を見ている。
俺たち六人も、同じように船のへりに立ち、下を見やった。
そして、全員がギョッとした。
手作り感満載の、決して立派とは言えない桟橋に立つ、船長ザサークとダーラ、副船長のビッチェ。
その三人を取り囲むのは、ざっと見た感じ30匹はいるであろう、見慣れない風貌の、人型の生き物だ。
およそ地上の生物とは思えない彼らは、魚に似た容姿をしている。
「な……、何あれ? 魚??」
グレコが思わず呟いた。
「いや、あれは……、マーレ・ヴァンデアンだ」
眉間にシワを寄せて、答えるカービィ。
マーレ……、ヴァンデアン?
なんだそれ??
「それは何だ?」
尋ねるギンロ。
「見た目通り、魚だよ。だけど、あいつらは陸でも暮らせるように進化してんだ。まさか、こんな所に住んでるとはなぁ……」
ふむ、なるほど、つまり……、魚人か?
マーレ・ヴァンデアンと呼ばれた魚人達は、背丈こそザサークの半分ほどで小さいが、体型は普通の人と変わらない。
服も、それなりの物を身に付けているし、首から上を見なければほぼ人だ。
肝心の首から上はというと……、所謂ナマズのような、ヌボーンとした顔だが、様々な色の鱗に包まれていて、全体的にテラテラとしている。
その中でも、唯一可愛い顔をしているというか……、鮮やかで美しいピンク色の鱗を持つ一人が、何やらザサークに向かって怒りを露わにして叫んでいるのだ。
「うちらはここを離れるつもりはないよっ! ボナークと約束したんだ……、彼が戻るまで、町を離れないって。だから、小島になんて渡らないよっ!!」
ピンク色の魚人は、足がだらんとしていて、自力では立てないのだろう、両脇を仲間に支えてもらいながらも、必死な形相でザサークに訴えていた。
料理を作っているダーラも相当ピリピリしている為か、出されたハンバーガーのような食べ物には、香辛料がふんだんに使われたバンズが挟まっていて、一口食べる度に俺のやわなお口の中はピリピリと痺れた。
隣に座るテッチャは(今更ながら、テッチャがここにいる事が、かな~り不思議なんだけど)、お口も喉もお強いので、ピリピリバーガーを三口ほどで平らげていた。
グレコとカービィは難なく完食していたが、甘党のギンロは飲み込むのに苦戦していて涙目だし、香辛料に慣れていないティカは一口齧っただけで後は全部残していた。
騎士団のみんなは、手短に食事を済ませた後、出発の準備をする為に自室へと戻った。
食堂には、俺たち六人だけが残されていた。
俺、グレコ、テッチャ、ギンロ、カービィ、そして新たに仲間に加わったティカ。
全員が一堂に会する事は、ほぼ初かも知れないな。
なんというか……、改めてこう見てみると、種族も背の高さもバラバラで、とてもアンバランスなメンバーである。
「そいで、その港町を襲っておったハーピー共の巣の近くを、堂々と横切って行くっちゅ~わけか?」
既に食べ終わっているテッチャが、ちゃっかりダーラに淹れてもらったホット珈琲を片手に、同じく食事を終えたグレコとカービィに問い掛ける。
「そう。それが最短距離だってノリリアは言っていたわ」
「んだども、危険じゃろう?」
「だろうなぁ~。けどまぁ、白薔薇の騎士団は結構鍛えられてるからな。ハーピーくらい何とかするさ。……まっ、数によるけどな!」
「うむ。ハーピーを舐めてかかるのはよくねぇ。あいつらはなかなかに悪賢いでの。しかし……、なんじゃろうな、夜に行動するとは思わなんだ」
「それって……、どういう意味かしら?」
「そのまんまの意味じゃよ。ハーピーはその姿通りの鳥目じゃて、夜間は目が効かんはずじゃ。どんな理由があるかは知らんが、襲撃するなら普通、夜間は避けるはずじゃて」
「そうなの? じゃあどうして……??」
「テッチャおまい、案外物知りなんだなぁっ!?」
「ガハハ! なぁ~に、ハーピーはわしの祖国、デタラッタの近郊にも生息しておるでの、ちょいと聞いた事があるだけじゃよ。じゃが、ここにおるハーピーとは種類が違うはずじゃて、習性も違っておるのかも知れんのぉ」
「種類? ハルピュイアは、そんなに沢山種類があるの??」
「いんや、多くはねぇぞ。おいらの記憶が正しければ、現存するハーピーは三種類だ。ベルクハルピュイア、メーアハルピュイア、シュタトハルピュイア。デタラッタの近郊に生息しているのは恐らくベルクハルピュイアだろう、奴らは岩山を好んで住処とするんだ。メーアハルピュイアは切り立つ海岸に、小型のシュタトハルピュイアは都会に生息するな」
「都会!? 都会って、町中にって事!??」
「んだ。フーガの西の町リバイノーガには、それこそシュタトハルピュイアの群れがわんさかいるぞ。けど、他のハーピーに比べると温厚だし、大きさもこれくらいしかねぇから……、よっぽどの事が無い限り、危険はねぇ」
カービィの言うこれくらいとは、俺の顔ぐらいの大きさだ。
言うなればまぁ、鳩くらいの大きさだろうな。
「そうなのね。じゃあ……、この島に生息しているハルピュイアは……?」
「たぶん、メーアハルピュイアだろうな。ここまで船が通って来た場所は、島の海岸のほぼ全てが切り立つ断崖だっただろう? メーアハルピュイアは、海にほど近い高所の岩場に巣を作る。つまりこの島は、メーアハルピュイアにはうってつけの住処だって事だ☆」
「なるほどのぉ。その、メーアハルピュイアっちゅうハーピーは、夜目が効くんか?」
「さぁ~? そこまではおいらも知らねぇ」
くっ……、肝心な所で役に立たないな、カービィこの野郎。
「けれど、カナリーの話じゃ、ハルピュイア達は夜にしか襲って来ないって……。だとしたら、メーアハルピュイアは昼間の方が苦手なんじゃないのかしら?」
「んだ、グレコさんの説は一理有ると思うぞ。つまり、昼間だったら、ユーザネイジアの木の近くを通っても大丈夫って事だ☆」
「んんっ!? ユーザネイジア!?? カービィお前さん、今なんて言ったんじゃ!?!?」
ユーザネイジアという言葉を耳にして、テッチャの顔色が変わった。
勿論、青くなったわけではなく、目がお金のマークになったのだ。
「ありゃ? モッモ、テッチャには話して無いのか??」
カービィの問い掛けに、まだ口の中がバーガーでいっぱいな俺は、ふんふんと頷く。
「ハルピュイア達はここ最近、この島に存在するユーザネイジアという名前の巨木に群がっているらしいのよ」
あ~っと……、グレコ?
テッチャが聞きたいのはそういう事じゃないと思うよ??
「なんとっ!? この島には、根絶されたはずの、あのユーザネイジアがあるのかっ!??」
うん……、テッチャの目のキラキラが止まらないね。
「らしいな。まぁ、おいらもユーザネイジアは見た事ねぇし、この目で見れるのはちょいと楽しみではあるな♪」
相変わらずの呑気なコメントですな、カービィこの野郎。
「うほほっ!? それはいい事を聞いたわいっ!!! ユーザネイジアの実と種があれば、ガッポガッポ儲けられるぞぉっ!!?」
あぁやっぱり……、あんたはなんでいつもそうやってさ、お金の事にばかり思考が向くのかね?
他の楽しみも見つけなさいよ、テッチャの馬鹿野郎。
「なはは! それはやめとけぇ~!! 少なくとも、アンローク大陸に持ち込んだ時点で、おまいが犯罪者になっちまうからな。ザサークが取引している以上、ワコーディーン大陸やパーラ・ドット大陸では規制が緩いみたいだけどよ」
「なんじゃ、世連(世界共和連合の略)で禁止されとるんかぁ。そりゃ残念じゃのぉ~」
そうは言うものの、テッチャは全然諦めていない顔をしている。
きっと良からぬ事を企んでいるのだろう、いつにも増してツルツルの頭が光って見えた。
そこで会話が途切れて、ピリピリバーガーの最後の一欠片を口に放り込む俺。
口の中の痺れと戦いながら、モグモグと咀嚼している……、まさにその時だった。
頭上にある天井、つまり甲板が、何やら騒がしくなってきたのだ。
ドタドタ、ワーワーと……
「何かあったんかの?」
カップに残っていた珈琲をゴクッと飲み干して、上を見上げるテッチャ。
俺達もみんな、真似して上を見上げた。
……うん、天井を見たって意味ないんだけどさ。
すると、ダダダダダーっと大きな足音を立てながら、甲板長のバスクが階段を駆け下りてきた。
そして……
「ダーラ! ガレッタが来たっ!!」
血相を変えた様子で、バスクが叫ぶ。
「えっ!? 重体じゃ無かったのかい!??」
魚の下処理をしていたダーラは、驚いて手元を狂わせて、持っていた包丁で魚の頭を激しく吹っ飛ばした。
「とにかく来てくれっ!!!」
そう言われて、バスクと共に、ダーラは急いで階段を上がって行った。
残された俺たち六人は、互いに目を見合わせる。
「……行くか?」
ニヤニヤするカービィ。
「そうね、気になるわ」
頷くグレコ。
「うむ、ダーラ殿が心配である」
涙目のまま、手元に残っていたピリピリバーガーを口に詰め込むギンロ。
「戦闘か?」
何故か殺気立つティカ。
「いやいや、知り合いじゃろうて、武器は必要ねぇじゃろう」
ティカより現状を把握出来ているらしいテッチャが、ティカを制止する。
「とりあえず、行ってみよう!」
ピョーンと椅子を飛び降りて、俺は階段へと向かった。
タタタタタッと階段を駆け足で登って、甲板へと向かう。
朝日が昇り始めたのであろう、辺りは少しばかり白んでいて、薄らと東の空が明るくなってきている。
甲板では、船員達が港側の船のへりに集まっていて、何やら深刻な顔で下を見ている。
俺たち六人も、同じように船のへりに立ち、下を見やった。
そして、全員がギョッとした。
手作り感満載の、決して立派とは言えない桟橋に立つ、船長ザサークとダーラ、副船長のビッチェ。
その三人を取り囲むのは、ざっと見た感じ30匹はいるであろう、見慣れない風貌の、人型の生き物だ。
およそ地上の生物とは思えない彼らは、魚に似た容姿をしている。
「な……、何あれ? 魚??」
グレコが思わず呟いた。
「いや、あれは……、マーレ・ヴァンデアンだ」
眉間にシワを寄せて、答えるカービィ。
マーレ……、ヴァンデアン?
なんだそれ??
「それは何だ?」
尋ねるギンロ。
「見た目通り、魚だよ。だけど、あいつらは陸でも暮らせるように進化してんだ。まさか、こんな所に住んでるとはなぁ……」
ふむ、なるほど、つまり……、魚人か?
マーレ・ヴァンデアンと呼ばれた魚人達は、背丈こそザサークの半分ほどで小さいが、体型は普通の人と変わらない。
服も、それなりの物を身に付けているし、首から上を見なければほぼ人だ。
肝心の首から上はというと……、所謂ナマズのような、ヌボーンとした顔だが、様々な色の鱗に包まれていて、全体的にテラテラとしている。
その中でも、唯一可愛い顔をしているというか……、鮮やかで美しいピンク色の鱗を持つ一人が、何やらザサークに向かって怒りを露わにして叫んでいるのだ。
「うちらはここを離れるつもりはないよっ! ボナークと約束したんだ……、彼が戻るまで、町を離れないって。だから、小島になんて渡らないよっ!!」
ピンク色の魚人は、足がだらんとしていて、自力では立てないのだろう、両脇を仲間に支えてもらいながらも、必死な形相でザサークに訴えていた。
0
お気に入りに追加
496
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~
杵築しゅん
ファンタジー
20XX年、本当にその瞬間がやってきた。私は宇宙の管理者に1番目の魂の扉に入るよう指示され、扉を開け一歩踏み出したところで、宇宙の理の渦(深遠)の中に落ちていった。気付けば幼女に・・・これはもう立派な宇宙人として、この新しい星で使命を果たすしかない・・・と思っていたこともありました。だけど使命を果たせるなら、自由に生きてもいいわよね? この知識や経験を役立てられるなら、ちょっとくらい傍若無人でいいってことよね? 暗殺者や陰謀なんて無関係に生きてきたのに、貴族の事情なんて知ったこっちゃないわ。早く産業革命してラブロマンスを書くのよ!
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる