最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★ピタラス諸島第四、ロリアン島編★

567:どっちも

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 ここはいったい何処なんだ?
 ゼコゼコは……、いないぞ、あいつどこいった??
 それに、周りに沢山いたはずの死霊達もいない。
 みんな、どこへ……???

 上も下も、右も左も分からない真っ暗闇の中に、俺はいた。
 何も見えないし、何も感じない。
 空気の抵抗も無ければ、水の中にいるとも思えない。
 それでいて、ふわふわと浮かんでいるような、無重力のような不思議な感覚を、俺は覚えていた。

『随分、と、時間が、かかった、ものだ、な……。どれく、らい、待った、のか、もう分、からない、けど、きひひ』

 またもや近くで、気味の悪い声が響く。
 しかしながら、自然と怖くは無かった。
 いつもだったら、こんな真っ暗闇の中に一人きりの状態で正体不明の声が聞こえてきたら、びびってちびっているとこだけども……
 俺はいたって冷静で、ある言葉を思い出していた。
 奈落の泉の底に巣喰うとされる死の神は、実は影の精霊である……、ゼンイが言っていた言葉だ。
 ゼンイは、生贄とされた際に、その影の精霊に命を救われたのだ、と…… 
 この言葉を思い出したからなのか、どうしてだか声の主は危険な者ではないと、俺は感じていた。

「誰!? 誰かいるのっ!??」
 
 出来るだけ大きな声でそう言ってみる俺。
 声は耳元で聞こえているものの、実際の相手との距離が分からないからだ。
 この不思議な空間では、とてもよく声が通るものの、反射するものが無いのか、響く事は無かった。

『見え、ない? 見えな、いの?? どうし、てかな??? あ……、あぁ、そうか。光、が、必要だ、ね』

 そう声が聞こえたかと思うと、何かが俺の胸に触れた。
 冷たくて、風のように軽い何か。
 すると次の瞬間、俺の全身が薄らと、黄色い光を帯びたではないか。
 まるで俺自身が電球にでもなったかのように、辺りを照らして……
 そこでようやく、声の主の姿をこの目で捉える事が出来た。

「あ……? き、君は……、影??」

 俺の体から放たれる光に照らされて、そこに現れたのはゆらゆらと揺れる影だ。
 二つの青い瞳を持つその影は、何時ぞやに出会ったゼンイの影とよく似ている。
 ただ少し違うのが、原型がほぼ無いことだ。
 瞳はあるものの、その体は生き物の形をしていない。
 煙のような楕円形の黒い影が、蜃気楼のように俺の目の前で揺れている。

『か、影? ……あぁ、そう、だ。僕は、影だ。名前も、ない、ただの、影。だけ、ど、影に、なる、前は、名前が、あった。ろ……、ロリ、アン……、マーチ……。ロリアン・マーチ。そ、れが、僕、の、名前、だった』

「ロリアン・マーチ……? ロリアン!? じゃあ……、じゃあ君が!?? 大魔導師アーレイク・ピタラスの弟子で、この島の悪魔を倒したロリアンなのっ!?!?」

『きひ、きひひひひ。そうか、も、知れな、いねぇ~。昔の、こと、過ぎて、よく分、からない、ね。ロリア、ン……? 古い、名前、だ。けど、覚えて、るよ。師匠……、アー、レイク、師匠。予言、は、本当だ、ったん、だ。君、が、この時、代の、時の、神、の使、者だ、ね?? 待って、たよ。ずっと、待っ、てた。きひひひひひひ』

 興奮気味に尋ねた俺に対し、自らをロリアンだと認めた影は、非常に聞き取りづらい話し方でそう言って、ゆらゆらと揺らめきながら、不気味に笑った。

「そうか、良かった。実は、あなたに会う為に僕はここに来たんだ。鍵が必要なんだよ!」

『か、ぎ……? それ、は、どっち、の鍵??』

 ……ホワッツ? どっち、とは??
 まさかあれか、有名な童話にある、金の斧銀の斧的なやつだろうか???
 正直に答えないと、鍵は渡さないぞ! ってやつ????

「えと……。あ、選択肢を教えてくれない?」

『選、択肢……。分か、ったよ。君が、欲しいの、は、塔の、鍵? それと、も、神殿、の鍵??』

 おお? 塔の鍵と、神殿の鍵だと??
 ちょっと待て待て、予想外だな。
 金の斧銀の斧パターンではなさそうだぞ。
 塔の鍵ってまさか……、アーレイク島にある封魔の塔、通称アーレイク・ピタラスの墓塔の鍵の事だろうか???
 それに、神殿の鍵って……、どこの神殿????

「え~っとぉ~。あの……、塔の鍵っていうのは、どこの塔のこと? 神殿も……、どこの神殿なのかな??」

『塔……。師匠が、建て、た塔。時空、穴を、塞ぐ、為の、塔。神殿……。邪神を、封印、した場、所。黄金、の、山の、中。邪神、を、捕らえ、ている、神殿』

 ふむ、塔の鍵というのは、封魔の塔の鍵で間違いないようだ。
 つまりは、ノリリア達が探している、ロリアンの遺産の事だろう。
 そして神殿の鍵というのは、影の言葉から推測するに、チャイロが……、いや、イグが求めていた金山の鍵に違いない。
 となると……、これは、めちゃくちゃラッキーなのではないか?
 どこにあるのかすら分からなかった(俺が知らなかっただけかもだけど)塔の鍵と、今すぐ欲しかった金山の鍵が一気に手に入るんだもの。
 これをラッキーと呼ばずしてなんと呼ぶ!?
 
 ……だけど、影はどっちが欲しい? って聞いたよな。
 てことは、どっちかしか貰えないのだろうか??
 出来れば俺は、どっちも欲しいのだけど。

「あ~、っとぉ~。……どっちも、欲しいんですけど、いいですか?」

 ドキドキしながら答える俺。

 もし断られたらどうしよう?
 もしいきなりキレられたりしたらどうしよう??
 そんでもって、なんか怖い事されちゃったりしたら……、どうしよう???

 ドキドキドキドキ

『どっち、も? ……い、いいよぉ~』

 おおっ!? マジかっ!??
 いいのかよっ!?!?
 やったぁああぁぁぁっ!!!!!

 心の中で小さくガッツポーズする俺。
 すると影は、二つの青い瞳を少しだけ細めてこう言った。

『だけど、約束、して欲、しい。必ず、倒す、と』

 ……はて? 倒すとな?? 何を???

「倒すって……、何をですか?」

『必ず、倒して、欲しい。こちら、に、残って、しま、った悪魔。それ、と、神殿に、捕らえてい、る、邪神……。悪意、に満ち、た、美しき、蛾神、モシューラ、を』

 影の真っ直ぐな視線に、俺は息が止まった。

 え? 蛾神モシューラを倒す??
 悪魔……、はいいとしても、モシューラまで???
 それはもしかして……、いや、もしかしなくても、チャイロとイグが求めている結末では無いのではないか、と。

「あ……、えと……。僕は、出来れば、救いたいと思ってます、蛾神モシューラさんを。確かに、長年ずっと閉じ込められていて、邪神になりそうだって聞いてますけど……。どうやるのかはまだ知らないけど、助けたいって言っている……、そう、仲間がいるんです。だから倒すんじゃなくて、助けようって思ってます」

 戸惑いながらも、俺はハッキリとそう言った。
 チャイロとイグの願いを叶える為に。
 すると影は、思わぬ事を口にした。

『助け、られ、ない。助けられ、なかった……。彼女、は、僕が、出会っ、た時、にはもう、心、が、悪に、染まっ、ていた。彼女、は、助から、ない。滅す、しか、道は、無い。世界、の、平和の、為、に』
 
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