最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

文字の大きさ
上 下
568 / 801
★ピタラス諸島第四、ロリアン島編★

555:グレコの許可が降りたぞ!!

しおりを挟む
「なるほどね。それで……、こんな朝早くから、連絡をしてきたわけね? ふぁ~あ~んんっ!」

   耳元で響く、グレコが欠伸をする音。
 不謹慎だけど、なんだかちょっと色っぽく聞こえた。

「ごめん。今、暗いところにいるから、まだ夜明け前だとは知らなくて……」

「いいわよ、そろそろ起きようかと思っていたから。で、そのトエトさんは今どこに?」

「あ、うん。チャイロがまだ寝ていたから、先に朝ご飯を取りに行ってくれてる。……僕、昨日から全然食べてなくて、腹ペコなんだ。鞄の中も、ほとんど空っぽで」

「あら、そうだったの? じゃあ、暇があったら町で何か買っておくわね。……あ、でもお金が無いわ」

「くっ……、お金は僕が持ってるよね」

「そうね、残念ながら」

「くぅう~!!!」

「合流したら市場に行きましょうよ。モッモも、食べたい物を自分で選びたいでしょ?」

「それもそうだね。……でもさ、そんなにノンビリしてる暇なんかあるのかなぁ?」

「……無いかも知れないわね。けど、そろそろ乾いてきたから、血が欲しいのよ」

「えっ!? それって……、清血ポーション、飲めばいいんじゃない?」

「モッモ、私があれ嫌いなの知ってるでしょ? なんとなく嫌なのよ、薬飲んでいるみたいで。私は生きてる血が欲しいの」

「うぅっ……、なんと生々しい表現……」

「それに、飲めばいいんじゃないって言うけれど、清血ポーションもモッモが持ってるでしょ?」

「はっ!? そうだった……」

   絆の耳飾りを使って、俺とグレコはどうでも良い会話を繰り広げる。
 ……いや、どうでも良くはない。
 食料問題は死活問題である!
 だけど、今はそれよりも、今後どうするかを考えなくちゃ!!

「まぁいいわ。それで、私達はどうすればいいわけ?」

「あ、うん。とりあえず……、僕とチャイロと、それからティカを助けて欲しいんだ。北にある奈落の泉に沈められる前に!」

「う~ん……、アバウト過ぎる注文ね。具体的にはどうしたらいいの? 何か作戦はあるの??」

「無いよ。あったらトエトに嘘なんて付かないよ」

「はぁ~。ほんとにもう、毎度毎度出たとこ勝負なんだから……。モッモって、本当に私達がいなきゃ駄目ね」

 大きく溜息をつきながらも、グレコの声はどこか嬉しそうだった。

 俺はグレコに、これまでの事を全て話した。
 宰相イカーブと、亡者の玉に封じ込められている悪魔の事。
 創造神ククルカンと、その再来と呼ばれる者達の歴史。
 紅竜人の兵士であるティカが、俺に協力してくれて、今は牢屋に捕まっている事。
 イカーブの本当の姿と、魔法を使える事。
 そして、チャイロが何者であり、この金山の中に蛾神が閉じ込められていて、邪神と化そうとしている事、などなど……

   一気に話すと混乱するかと思ったけれど、グレコは至って冷静に最後まで話を聞いてくれた。
 何故なら、土の精霊ノームのチルチルから、これまでの大筋を聞いていたからだ。

 昨晩、突然眠ってしまった俺の元を離れ、チルチルはグレコのところへと向かった。
 そして、たまたま一緒に食事をしていた(酒を飲んでいた)グレコ、カービィ、ギンロに、俺が置かれている現状と、これからやろうとしている事、チャイロの正体などを、とても分かりやすく説明したそうだ。
 他でも無い、心底頼りない俺を助ける為に。
 
「とりあえず……、そのイカーブって奴は得体が知れないわね。人間の魔法使いが、紅竜人のフリして王宮に潜入しているなんて、何か裏があるに違いないわ。チルチルちゃんの話だと、悪魔の方は玉から出られないらしいし、今のところは大丈夫そうね。となると……、問題は王子様ね。……ねぇモッモ。あなた、本当にその子を助けたい?」

   突然グレコに問われ、俺は返事に詰まる。

「え? えと……、それって……?? けど……、うん。助けたいと思ってるよ」

「でも、チルチルちゃんの話だと、その王子様は旧世界の神々の一人で、つまりは神代の悪霊と呼ばれる者なんでしょう? だったら、呪縛の間から出すべきでは無いはず。……まぁ、生贄にされるんだったら、結果的には一度外に出る事にはなるだろうけどね。その後で、本当に王子様を助ける気??」

「そりゃ……、うん、助ける。だって友達だもん」

「友達ねぇ……。神代の悪霊については、私も大まかな事しか知らないわ。里のどの伝承にも、旧世界の事は詳しく記されていなかったから。けれど、私の遠い祖先であるハイエルフは、彼らを神代の悪霊と呼んでいた……、つまりは敵だったのよ。正直、私はブラッドエルフだし、ハイエルフの事はよく分からないけれど……。でも、同じエルフ族が敵とみなした相手を、モッモが友達になったからという理由で助ける事に、ちょっぴり抵抗を感じたりもするのよね」

「それは……。確かに、グレコの言いたい事はよく分かるよ。僕だって、得体の知れないチャイロの事を、全部信じ切れるかって言われたらそうじゃないし……」

   暴言と暴行を受けた後だから、余計にね。

「それでも見捨てられないのよね?」

   グレコに、念を押されるように尋ねられ、俺は覚悟を決める。

「うん……。やっぱり、一度助けたいと思ったんだから、助けるべきだと思うんだ。それに、友達になったんだから……。友達は、友達を見捨てたりなんかしないよね? 友達は、助け合うものだよね??」

   俺の問い掛けに、グレコはふふっと笑う。

「そうね。モッモがそう言うなら、仕方ないわね。助けましょ♪」

 おぉ、良かった!
 グレコの許可が降りたぞ!!
 もう怖いもの無しだっ!!!

「ありがとうグレコ!」

「御礼を言うのは助けてからにしてよね。それで……、いつ、どこで助ければいい? ここからその奈落の泉までどれくらいの距離があるのかしら?? あまり離れているのなら、泉に向かう前に……、つまり、王宮を出る前に助けた方がいいわよね???」

「あ~っと、それなんだけどぉ……。なんかね、チャイロは一度、泉に沈みたいらしいんだ」

「……え? どういう事??」

「それが……、なんかね、奈落の泉には、アーレイク・ピタラスの弟子のロリアンさんも沈んでいるらしくてね、そこに蛾神の居場所に繋がる鍵があるとかなんとか……」

「何それ? ……え?? モッモ、どうするの???」

「えと……、なんかね、チャイロは泳げないらしくて、僕も一緒に沈めって言われてて……」

「は? モッモが?? ……駄目よっ! 駄目駄目っ!! モッモ、あなた泳げないでしょっ!??」

「……っつ、そこなんだよねぇ~」

「そこなんだよね~、じゃないわよっ! そんな馬鹿な事、絶対にしちゃ駄目よっ!?」

「わわっ!? 分かってる分かってるっ! だから……、でも……、そのぅ~……」

   モゴモゴする俺。
 するとグレコは、はぁ~っと大きく溜息をついた後、決心したかのようにこう言った。

「分かった! とりあえず、私達が王宮に忍び込むのは無理だと思う。警備をしている兵士が多過ぎるからね。だから、あなた達が外に出たところを待ち伏せて、時を見計らって助けるわ!! 泉に沈められる前にっ!!!」

 スパーン! と言い切ったグレコに対し、さすがだな~、頼りになるな~、なんて、俺は呑気に思っていた。

「うん! じゃあそんな感じで!! よろしくお願いしまっす!!!」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

処理中です...