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★寄り道・魔法王国フーガ編★
480:悪魔退治の才能
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「じゃあ、こういうのはどうだ?」
黙りこくる副団長達を前に、カービィが能天気な声を出す。
「おいらとノリリアと、船にいる騎士団のみんなでよ、ピタラス諸島にいるはずの残り二体の悪魔を討伐するんだ!」
ニカッと満面の笑みでカービィはそう言った。
その言葉に、ライネルはフッと苦笑し、トゥエガは「おぉ~」と小さく唸って、ウィルはぽかんと口を開けた。
怒ったのは勿論、ジオーナだ。
「カービィ、貴様……。ふざけるのは顔だけにしろっ! 今の話を聞いていなかったのかっ!? ゴエティアが盗まれ、時空間の歪みが懸念されているのだぞっ!?? それが何を意味するか……、頭の緩いお前でも分かるだろうっ!?!?」
おおう、怖い……
軽くちびりそうになったぜ。
しかしジオーナよ、なかなかに辛辣なお言葉を並べますな。
ふざけるのは顔だけにって……、うくく、まぁ言えてるけどさ。
「まぁ待て待て、落ち着け。おまいがそう言うのも最もだ。実際、悪魔は恐ろしいし、また時空穴が発生してもおかしくないってんなら、そりゃ事は重大だ。だけどよ、今のところ時空穴は空いてねぇし、悪魔だってなんとかなってる。まぁ……、ちょいと被害も出てるがよ、相手が悪魔なんだ、死人が出てねぇだけでも大したもんだろ?」
「馬鹿がっ! だからっ!! これ以上の犠牲を出さないように、プロジェクトを中止しろとローズは言ってるんだっ!!! サキュバスは下級悪魔に分類されるが、ハンニは中級だったはず……。残り二諸島に存在する悪魔が上級……、もしくはその更に上の力を持つ悪魔やも知れんという事は、容易に考え得る。なのに、それを相手に戦うというのか? たかだか数名の……、戦闘経験が乏しい連中と共に?? そのような事が本当に可能だと思うのかっ!?!? 次は死人が出るぞっ!!!??」
ひぃっ!?
きょ、きょええぇぇ~っ!!
ジオーナの目力半端ねぇえぇぇっ!!!
あなたの怒号で、今ここで死人が出ちゃいますよぉおっ!!!!
「あ~も~、落ち着けって。んなこた百も承知だよ。けどな、こっちには最強の武器がある!」
ドーン! と胸を張るカービィ。
ほう? 最強の武器とな??
そんなもの、どこにあるんだ???
まさか……、このおいらが最強の武器だぁっ! とかなんとか、言うつもりじゃないだろうな????
やめとけよ~、余計に怒らせちゃうぞっ!?
するとカービィは、ニヤニヤとしながら、俺の肩にポンっと手を置いた。
突然のその行動に、例によって肩からゾワゾワが全身に駆け巡り、ブルルッと俺は身震いする。
「ここに居るのが誰だと思ってんだ? 神力をその身に携えた時の神の使者、モッモ様だぞ?? こいつが居れば、悪魔なんて怖いもん無しだっ!!!」
……は? はひっ!?
お、俺ですか!??
副団長達の視線が、再度一斉に俺に向けられる。
ノリリアは憐れみの目で、トゥエガは疑いの目で、ウィルはぽかんとした目で、ライネルは何故か納得したような目で、そしてジオーナは怒りの目で……
「くっ!? カービィ、貴様……、馬鹿も大概にしろとあれほど……、ぐぐぐっ。そいつに一体、何が出来ると言うんだぁあぁぁっ!!!??」
ぎゃひぃいいぃぃ~~~!!!
今にも飛びかかってきそうなほど、剣幕を露わにするジオーナ。
ワナワナと怒りに震えるその体からは、真っ黒な魔力がゾワゾワと流れ出ている。
しかしながら、次の瞬間、ジオーナの強い怒りはスッと消えて無くなった。
「待って、ジオーナ。私に考えがあります」
聞き覚えのある声がして、俺は部屋の奥にある天蓋付きベッドへと視線を向ける。
すると、閉じていたカーテンがさっと開かれて、中から幼女が姿を現した。
レースがフリフリの白いネグリジェを身にまとった彼女は、間違いなくあのローズだ。
眠たげな目をこすり、輝く銀色の長い髪をなびかせながら、ローズはゆっくりとこちらに歩いてくる。
こうやって見てみると……、本当に、可愛らしいだけの普通の女の子だ。
まさかあんな恐ろしい竜に変化できるなんて、知らない者なら想像だにしないだろう。
「ローズ……、もう大丈夫なのか?」
ローズの姿を見るや否や、ジオーナの怒りは収まった。
その横顔は、ホッと安心したような、優しい表情となっている。
「ふぁ~あ……、まだちょっと眠いけど、大丈夫よ」
大きな欠伸をしながら、ローズは自分の席に座った。
そしておもむろにコニーちゃんの両耳を掴んで、自分の膝の上に乗せた。
「……ロ、ローズ。客人の前だからその……、私をここに座らせるのはやめ」
「私に口答えする気!?」
「何でもないです」
明らかに恥ずかしがる……、いや、嫌がるコニーちゃんを一喝して、ローズはその視線をカービィに向けた。
「カービィ……、あなたがノリリアのプロジェクトに同行していると分かった時点から、こうなる事は大体予想していたわ。だけどね、こっちにもこっちの事情があるのよ。あなたとそのお仲間の目的はどうでも良いけれど、ノリリアの宿願である墓塔の調査を、悪魔ごときに邪魔されるなんて私は嫌なの。それに、私の大事な団員達が傷付くのも嫌。魔連(世界魔法連盟の略)が私に何て言ってきたと思う? 墓塔の調査をしているパーティーがあるのなら、時空間の歪みの調査もついでに行って来てくれないか~、ですって。ほんと、馬鹿にしてるわ! 私の騎士団をなんだと思っているかしらっ!? だから、そいつらに言ってやったのよ。そんな危険な場所なら、今すぐ団員達を呼び戻すって!!! あいつらに顎で使われるなんて真っ平御免よ」
フンッ! と鼻を鳴らして、ローズはそう言った。
まだ魔力が回復し切っていないらしく、かなり眠そうなので、怒っていても全然怖くない。
「まぁ、そんなこったろうとは思ってたけどな。でもよぉ、こうは考えられねぇか? もし仮に、本当においら達が残留悪魔を全部退治できて、墓塔の調査もクリア出来れば……。それこそ魔連に大きな貸しを作れる。そうすりゃ今後も、何かにつけ有利だと思うぞ??」
カービィの悪戯な笑みに、ローズは目を細める。
「やっぱりあなたはそう考えるのね。だけど、前にも言ったはずよ。私、賭け事は大っ嫌いなの! そんな危険な賭けには乗りたくないわ!!」
「だ~いじょ~ぶだって! 言ったろ? ここにいるのは時の神の使者、モッモ様だぞ!?」
「ぎゃっ!?」
バーンッ! と俺の背を叩くカービィ。
思わず変な声を上げちゃう俺。
いきなり叩くなよ、ビックリするだろがっ!
それに……、俺を頼りにするなっ!!
何を隠そうこの俺は、世界最弱のピグモルなんだぞぉっ!!!
プニプニとモフモフだけが取り柄の、可愛いだけの種族なんだぞっ!!!!
そんな俺に、一体何が出来るってんだ馬鹿野郎めっ!!!!!
俺は、キッ! とカービィを睨み付ける。
しかしながらカービィは、その視線に気付いてもなお、ニヤニヤ顔をやめない。
「まぁ、見た目はこんなだけどよ……、中身は本物なんだよ、こいつ。ノリリアは見てねぇから、報告書にも書いてなかっただろうけど……。こいつ、悪魔の心臓を素手で握り潰したんだぜ?」
ヘラヘラと笑いながらそう言ったカービィに対し、俺は「ん?」と首を傾げる。
握り潰したって……、何のこと?
え、もしかしてあれか??
悪魔ハンニの心臓を、思わずギュッと握っちゃったあれの事か???
確かに握ってはいたが……、別にあれは、あいつを倒す為にやったわけじゃなくて、その場の流れと言うか、俺がびびって思わずそうしちゃっただけで、特に何のアピールにもならないと思うのだが……
だがしかし、疑問に思う俺とは裏腹に、周りの反応は違っていた。
ローズも、四人の副団長も、ノリリアまでもが、ギョッとした表情で俺を見ているのだ。
な……、何だ何だ? どうしたみんな??
そんな、化け物を見るような目で俺を見ないでよ。
「それにこいつ、悪魔に呪いを掛けたんだぜ? 悪魔を相手に呪いをかけるなんざ、恐ろしい事しやがるぜまったく。まぁ、相手は下級悪魔のサキュバスだったけど……、でも、並みの魔導師には出来ねぇ技だろう??」
それは……、グノンマルの時の事かな?
確かに、元に戻れ~みたいな事を思いながら、万呪の枝を振るったけど……、え、駄目だったのかな??
あの時はあの時で必死だったから、悪魔に呪いをかけるのが恐ろしい事かどうかなんて、考えている暇も無かったんだよ、うん。
そして、カービィのその言葉に反応し、またしてもギョッとした顔をする皆さん。
「それに……、あ~、これはおいらも見てはいねぇんだけど……。モッモ、ニベルー島のホムンクルスの城でよ、あのテジーをやっつけたのはおまいだったよな? ほら、悪魔化したホムンクルスの親玉のやつ。おまいが一人でやっつけたよな?? だって、おいらも誰も、助けに行けなかったしなぁ???」
「え? あ……、やっつけたって言うか……。僕の中にある神力が倒してくれたって言うか……」
モゴモゴと口籠る俺に対し、カービィはいささか不服そうな顔になるものの、クルッと視線をみんなの方に戻してこう言った。
「なっ!? 大丈夫な気がするだろっ!!? モッモは確かに、幻獣指定されている絶滅種のピグモル族で、腕力や魔力は無に等しい。けど、こいつには類稀なる才能がある! おいらが思うにそれは、悪魔退治の才能だ。こいつが一緒なら大丈夫!!なんたってこいつは、時の神の使者だからな!!! 時空王クロノシア・レアの加護があると思えば、悪魔なんざ屁でもねぇさっ!!!! なっはっはっはっはっ!!!!!」
馬鹿笑いするカービィを、俺は横から冷ややかな目で見つめていた。
悪魔退治の才能て……、なんだよそれ?
そんな才能、初めて聞いたわ。
俺をよいしょしたって何も出ねぇぞこの野郎っ!!
ただ、カービィのその言葉によって、ローズと四人の副団長、そしてノリリアの俺を見る目が、先程までとは明らかに変わっている事に、この時俺はまだ気付いていなかった。
黙りこくる副団長達を前に、カービィが能天気な声を出す。
「おいらとノリリアと、船にいる騎士団のみんなでよ、ピタラス諸島にいるはずの残り二体の悪魔を討伐するんだ!」
ニカッと満面の笑みでカービィはそう言った。
その言葉に、ライネルはフッと苦笑し、トゥエガは「おぉ~」と小さく唸って、ウィルはぽかんと口を開けた。
怒ったのは勿論、ジオーナだ。
「カービィ、貴様……。ふざけるのは顔だけにしろっ! 今の話を聞いていなかったのかっ!? ゴエティアが盗まれ、時空間の歪みが懸念されているのだぞっ!?? それが何を意味するか……、頭の緩いお前でも分かるだろうっ!?!?」
おおう、怖い……
軽くちびりそうになったぜ。
しかしジオーナよ、なかなかに辛辣なお言葉を並べますな。
ふざけるのは顔だけにって……、うくく、まぁ言えてるけどさ。
「まぁ待て待て、落ち着け。おまいがそう言うのも最もだ。実際、悪魔は恐ろしいし、また時空穴が発生してもおかしくないってんなら、そりゃ事は重大だ。だけどよ、今のところ時空穴は空いてねぇし、悪魔だってなんとかなってる。まぁ……、ちょいと被害も出てるがよ、相手が悪魔なんだ、死人が出てねぇだけでも大したもんだろ?」
「馬鹿がっ! だからっ!! これ以上の犠牲を出さないように、プロジェクトを中止しろとローズは言ってるんだっ!!! サキュバスは下級悪魔に分類されるが、ハンニは中級だったはず……。残り二諸島に存在する悪魔が上級……、もしくはその更に上の力を持つ悪魔やも知れんという事は、容易に考え得る。なのに、それを相手に戦うというのか? たかだか数名の……、戦闘経験が乏しい連中と共に?? そのような事が本当に可能だと思うのかっ!?!? 次は死人が出るぞっ!!!??」
ひぃっ!?
きょ、きょええぇぇ~っ!!
ジオーナの目力半端ねぇえぇぇっ!!!
あなたの怒号で、今ここで死人が出ちゃいますよぉおっ!!!!
「あ~も~、落ち着けって。んなこた百も承知だよ。けどな、こっちには最強の武器がある!」
ドーン! と胸を張るカービィ。
ほう? 最強の武器とな??
そんなもの、どこにあるんだ???
まさか……、このおいらが最強の武器だぁっ! とかなんとか、言うつもりじゃないだろうな????
やめとけよ~、余計に怒らせちゃうぞっ!?
するとカービィは、ニヤニヤとしながら、俺の肩にポンっと手を置いた。
突然のその行動に、例によって肩からゾワゾワが全身に駆け巡り、ブルルッと俺は身震いする。
「ここに居るのが誰だと思ってんだ? 神力をその身に携えた時の神の使者、モッモ様だぞ?? こいつが居れば、悪魔なんて怖いもん無しだっ!!!」
……は? はひっ!?
お、俺ですか!??
副団長達の視線が、再度一斉に俺に向けられる。
ノリリアは憐れみの目で、トゥエガは疑いの目で、ウィルはぽかんとした目で、ライネルは何故か納得したような目で、そしてジオーナは怒りの目で……
「くっ!? カービィ、貴様……、馬鹿も大概にしろとあれほど……、ぐぐぐっ。そいつに一体、何が出来ると言うんだぁあぁぁっ!!!??」
ぎゃひぃいいぃぃ~~~!!!
今にも飛びかかってきそうなほど、剣幕を露わにするジオーナ。
ワナワナと怒りに震えるその体からは、真っ黒な魔力がゾワゾワと流れ出ている。
しかしながら、次の瞬間、ジオーナの強い怒りはスッと消えて無くなった。
「待って、ジオーナ。私に考えがあります」
聞き覚えのある声がして、俺は部屋の奥にある天蓋付きベッドへと視線を向ける。
すると、閉じていたカーテンがさっと開かれて、中から幼女が姿を現した。
レースがフリフリの白いネグリジェを身にまとった彼女は、間違いなくあのローズだ。
眠たげな目をこすり、輝く銀色の長い髪をなびかせながら、ローズはゆっくりとこちらに歩いてくる。
こうやって見てみると……、本当に、可愛らしいだけの普通の女の子だ。
まさかあんな恐ろしい竜に変化できるなんて、知らない者なら想像だにしないだろう。
「ローズ……、もう大丈夫なのか?」
ローズの姿を見るや否や、ジオーナの怒りは収まった。
その横顔は、ホッと安心したような、優しい表情となっている。
「ふぁ~あ……、まだちょっと眠いけど、大丈夫よ」
大きな欠伸をしながら、ローズは自分の席に座った。
そしておもむろにコニーちゃんの両耳を掴んで、自分の膝の上に乗せた。
「……ロ、ローズ。客人の前だからその……、私をここに座らせるのはやめ」
「私に口答えする気!?」
「何でもないです」
明らかに恥ずかしがる……、いや、嫌がるコニーちゃんを一喝して、ローズはその視線をカービィに向けた。
「カービィ……、あなたがノリリアのプロジェクトに同行していると分かった時点から、こうなる事は大体予想していたわ。だけどね、こっちにもこっちの事情があるのよ。あなたとそのお仲間の目的はどうでも良いけれど、ノリリアの宿願である墓塔の調査を、悪魔ごときに邪魔されるなんて私は嫌なの。それに、私の大事な団員達が傷付くのも嫌。魔連(世界魔法連盟の略)が私に何て言ってきたと思う? 墓塔の調査をしているパーティーがあるのなら、時空間の歪みの調査もついでに行って来てくれないか~、ですって。ほんと、馬鹿にしてるわ! 私の騎士団をなんだと思っているかしらっ!? だから、そいつらに言ってやったのよ。そんな危険な場所なら、今すぐ団員達を呼び戻すって!!! あいつらに顎で使われるなんて真っ平御免よ」
フンッ! と鼻を鳴らして、ローズはそう言った。
まだ魔力が回復し切っていないらしく、かなり眠そうなので、怒っていても全然怖くない。
「まぁ、そんなこったろうとは思ってたけどな。でもよぉ、こうは考えられねぇか? もし仮に、本当においら達が残留悪魔を全部退治できて、墓塔の調査もクリア出来れば……。それこそ魔連に大きな貸しを作れる。そうすりゃ今後も、何かにつけ有利だと思うぞ??」
カービィの悪戯な笑みに、ローズは目を細める。
「やっぱりあなたはそう考えるのね。だけど、前にも言ったはずよ。私、賭け事は大っ嫌いなの! そんな危険な賭けには乗りたくないわ!!」
「だ~いじょ~ぶだって! 言ったろ? ここにいるのは時の神の使者、モッモ様だぞ!?」
「ぎゃっ!?」
バーンッ! と俺の背を叩くカービィ。
思わず変な声を上げちゃう俺。
いきなり叩くなよ、ビックリするだろがっ!
それに……、俺を頼りにするなっ!!
何を隠そうこの俺は、世界最弱のピグモルなんだぞぉっ!!!
プニプニとモフモフだけが取り柄の、可愛いだけの種族なんだぞっ!!!!
そんな俺に、一体何が出来るってんだ馬鹿野郎めっ!!!!!
俺は、キッ! とカービィを睨み付ける。
しかしながらカービィは、その視線に気付いてもなお、ニヤニヤ顔をやめない。
「まぁ、見た目はこんなだけどよ……、中身は本物なんだよ、こいつ。ノリリアは見てねぇから、報告書にも書いてなかっただろうけど……。こいつ、悪魔の心臓を素手で握り潰したんだぜ?」
ヘラヘラと笑いながらそう言ったカービィに対し、俺は「ん?」と首を傾げる。
握り潰したって……、何のこと?
え、もしかしてあれか??
悪魔ハンニの心臓を、思わずギュッと握っちゃったあれの事か???
確かに握ってはいたが……、別にあれは、あいつを倒す為にやったわけじゃなくて、その場の流れと言うか、俺がびびって思わずそうしちゃっただけで、特に何のアピールにもならないと思うのだが……
だがしかし、疑問に思う俺とは裏腹に、周りの反応は違っていた。
ローズも、四人の副団長も、ノリリアまでもが、ギョッとした表情で俺を見ているのだ。
な……、何だ何だ? どうしたみんな??
そんな、化け物を見るような目で俺を見ないでよ。
「それにこいつ、悪魔に呪いを掛けたんだぜ? 悪魔を相手に呪いをかけるなんざ、恐ろしい事しやがるぜまったく。まぁ、相手は下級悪魔のサキュバスだったけど……、でも、並みの魔導師には出来ねぇ技だろう??」
それは……、グノンマルの時の事かな?
確かに、元に戻れ~みたいな事を思いながら、万呪の枝を振るったけど……、え、駄目だったのかな??
あの時はあの時で必死だったから、悪魔に呪いをかけるのが恐ろしい事かどうかなんて、考えている暇も無かったんだよ、うん。
そして、カービィのその言葉に反応し、またしてもギョッとした顔をする皆さん。
「それに……、あ~、これはおいらも見てはいねぇんだけど……。モッモ、ニベルー島のホムンクルスの城でよ、あのテジーをやっつけたのはおまいだったよな? ほら、悪魔化したホムンクルスの親玉のやつ。おまいが一人でやっつけたよな?? だって、おいらも誰も、助けに行けなかったしなぁ???」
「え? あ……、やっつけたって言うか……。僕の中にある神力が倒してくれたって言うか……」
モゴモゴと口籠る俺に対し、カービィはいささか不服そうな顔になるものの、クルッと視線をみんなの方に戻してこう言った。
「なっ!? 大丈夫な気がするだろっ!!? モッモは確かに、幻獣指定されている絶滅種のピグモル族で、腕力や魔力は無に等しい。けど、こいつには類稀なる才能がある! おいらが思うにそれは、悪魔退治の才能だ。こいつが一緒なら大丈夫!!なんたってこいつは、時の神の使者だからな!!! 時空王クロノシア・レアの加護があると思えば、悪魔なんざ屁でもねぇさっ!!!! なっはっはっはっはっ!!!!!」
馬鹿笑いするカービィを、俺は横から冷ややかな目で見つめていた。
悪魔退治の才能て……、なんだよそれ?
そんな才能、初めて聞いたわ。
俺をよいしょしたって何も出ねぇぞこの野郎っ!!
ただ、カービィのその言葉によって、ローズと四人の副団長、そしてノリリアの俺を見る目が、先程までとは明らかに変わっている事に、この時俺はまだ気付いていなかった。
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