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★寄り道・魔法王国フーガ編★
479:全くもって話が見えない
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「それでは……、何故今回、ローズ団長がノリリアをプロジェクトから呼び戻したのか……。その理由を説明するとしよう」
一通り、皆の紹介を終えたライネルが、ローブの内側から分厚い羊皮紙の束を取り出して、それに目を通しながら話し始める。
「そもそも、ピタラス諸島及びアーレイク島の墓塔の探索調査は、現国王ウルテル様直々のクエストであった。故に、クエストを受けたいと申し出る魔導師ギルドは複数あったが、ノリリアの強い希望と、これまでのギルドの実績が認められて、我らが白薔薇の騎士団がクエストを受ける事となったのだ。そして事前調査の後、ノリリア達は国を出立……、ピタラス諸島へと向かった。だがしかし、今回のクエストには一つの懸念材料があった。それが、ピタラス諸島に残留している悪魔の存在だ」
ライネルの言葉に、黒髪お姉さんことジオーナの眉毛がピクリと動く。
「悪魔だと? そのような話は初耳だ」
……うん、もう既に怒ってらっしゃるわね。
こわやこわや。
「儂も、その話を団長から聞いたのは、現地で先行して調査を行なっていたオーラスがこちらに戻ってからだった。しかし、ノリリアは前もって知っていたのだな?」
「ポ、ポポゥ……。クエスト受注の為と言われて、団長と二人で国王との謁見に行った際に……、聞いたポね。今からおよそ550年前に起こったムームー大陸大分断の裏には、悪魔の存在があって……、ヴェルドラ歴2022年に起きた【第74代国王ゾロモンの乱心】と、深い関係があるのポと……」
「なんだとっ!? そんなっ!?? まさか……」
「あたちもまさかと思ったポよ。けど、国王自ら、それが真実だと告げられたのポ。そして、ピタラス諸島にはまだ、大陸大分断以前にこちらに渡って来てしまった悪魔が生き残っているかも知れないという事を、教えられたのポ」
「ならば何故!? その時点でプロジェクトを中止にしなかったのだ!?? ノリリア、お前は副団長ではあるが、あくまでも歴史探求部に過ぎん。悪魔がその地にいるのであれば、私と戦闘防衛部の連中を向かわせるのが筋だろうっ!???」
「ポポ……、ジオーナさんの言う事は最もポ。けれど、そうなると話が大きくなるポね、国王はそれを避けたかったのポ。あくまでも、全ては憶測に過ぎないと国王は仰っていたポ。今現在、国王の手元に残っているのは、故アーレイク・ピタラスの残した一通の手紙のみ……。ゾロモン王の乱心とムームー大陸大分断の関係性を明白にするには、証拠が余りにも少な過ぎるポね。それなのに、騎士団の戦闘防衛部が動くとなると、学会や政会が黙っていないはずポ、それこそ何事かと煩く騒ぎ立てるポよ。だから国王は、あくまでも墓塔の探索をメインとして、クエストを遂行して欲しいとあたちに仰っていたポよ」
「なんという危険な真似を……。国王とて許すまじ。我ら魔導師の命をなんだと思ってるのだっ!?」
「落ち着けジオーナ! 国王を愚弄してはいかん!! 最終的にクエストの実行を決めたのはローズ団長だ。俺たちが何をどう吠えたところで、決定は覆らなかっただろうさ」
ブチ切れるジオーナを、木のおじさんことトゥエガが諌める。
「それで……、いたんだね? ピタラス諸島に悪魔が」
金髪の少年ことウィルが、別段表情を変えずに尋ねる。
「ポポゥ……。報告書には、嘘偽りない事を書いたポね。第一の島、イゲンザ島にはサキュバス。第二の島、コトコ島にはハンニ。第三の島には悪魔は居なかったポが……、ニベルーによって生み出された造出生命体と、悪魔の心臓を喰らう事で進化したホムンクルスが存在して居たポ。つまりは……、国王の懸念通り、三つの島全てに、悪魔が残留していたポよ」
ノリリアの言葉に、ジオーナ、トゥエガ、ウィルは、それぞれに何かを頭の中で考えているのだろう、口を一文字に結んで沈黙する。
「それに加えて、ノリリアが故アーレイク・ピタラス氏の弟子達の隠れ家を探索する中で、見えてきた真実がいくつかある。まず、五百余年前に、故アーレイク・ピタラス氏の一存で行われたムームー大陸大分断は、魔界へと通ずる時空穴を塞ぐ為に行われたという事。時を超えて現代に蘇ったイゲンザ・ホーリー氏の証言と、故コトコ・レクサンガス氏の残した伝玉、及び粗霊アメフラシの残した言葉より、それらは明白となった。そしてその事実を、今は亡き当時の国王、第80代国王コダルドが隠蔽したと考えられる事。当時の学会及び政会に関わった者も皆同罪……、共謀し、真実を闇へと葬り去ったのだろう。そしてもう一つ……、過去に生じていたと考えられる時空穴よりこちらの世界へ入り込んできた悪魔のうち、現在までピタラス諸島に残留している悪魔は五体であるという事。即ちそれは、諸島の主要五諸島のうち、残りの二つの島それぞれに悪魔が存在していると考えられる、という事になる。……これら全ては、ノリリアの諸島調査にて得られた情報より考え得る最低ラインの仮説だ。しかしながら、限りなく真実に近いのではないかと、儂は思っている」
そこまで一気に話すとライネルは、手に持っていた羊皮紙をクルクルと巻き上げた。
「つまり……、残りの二つの島にも悪魔が潜んでいるかも知れないから、団長はノリリアさんに帰って来いって言っているわけだね?」
「……いや、事はそう単純ではなかろう」
ウィルの問い掛けに異を唱えたのはジオーナだ。
「これはまだ表立っていない情報だが……。二ヶ月ほど前、王宮の永久管理宝物庫に侵入者が入った」
「なんだと!? それは本当かジオーナ!??」
「あぁ、国営軍の上層部から仕入れた情報だ、間違いない。しかしながら、我々王立ギルドにはその報告すら降りてこなかった。ローズの耳には私から入れておいたのだが……。その時に盗まれた物というのが、【古代魔導書レメゲトン】その第一部、【悪魔の書ゴエティア】なんだ」
ジオーナの言葉に、ノリリア、ライネル、トゥエガとウィルも、そして隣のカービィまでもが、目を見開いて驚いた。
「ポポッ!? ゴエティアがっ!?? それはっ!!! 一大事じゃないポかぁあっ!?!?」
「一大事どころの話じゃなかろう……。何故そのような重大事件が、一切公表されておらんのだ?」
「全ては国王の命令だと、その者は言っていた……。果たして、国王には何か考えがあるのか、それとも……」
「じゃあ……、ローズ団長はその事も知っていて、ノリリアさんを戻そうとしたの?」
「少なくとも、儂はそこまでの話は聞いておらんかった。あくまでも団長は、残りの主要二諸島に悪魔が残留している可能性と……、先日発表された、世界魔法連盟による時空間の歪みの調査結果を元に、ピタラス諸島は危険だと判断されたのだと思っていたからな。団長はああ見えて仲間思いだ。国王直々のクエストの為とはいえ、ノリリアを含め騎士団の者達を、連盟が定めた危険地帯に置いておく事など許せなかったのだろう」
「むむむむ……、盗まれたゴエティアと時空間の歪み……。俺には嫌な予感しかしないがな」
「私とて同じ意見だ。ピタラス諸島に残留悪魔が存在していると考えられる以上、ゴエティアが国王の手元に無いとなると尚更危険。盗んだ者は果たして何者なのか……、魔連(世界魔法連盟の略)が発表した時空間の歪みと何の関係があるのか……。ローズは、クエストの遂行は全てが定かになってからでも遅くは無い、そう考えたのだろう」
「そうだな。それならば儂も納得がいく。いくら残留悪魔が潜んでいるやも知れんとはいえ、増援を送るわけでもなく、国王直々のクエストによるプロジェクトを中止してノリリアを呼び戻すとは、何事かと思っておったのだ。まさか……、ゴエティアが盗まれていたとは……」
「ポポポゥ……。そうなるとやっぱり……。プロジェクトの続行は、不可能ポか……?」
ノリリアの悲しげな声に、副団長達は皆、下を向いて黙りこくってしまった。
……えっとぉ~?
……あのぉ~??
……全くもって話が見えないのは、俺だけなのかしら???
皆の会話がまるでチンプンカンプンな俺は、かなり場違いな場所にいるな~と心の中で冷や汗をかきつつ、困惑した表情を浮かべる事しか出来ない。
だけども、そのような訳の分からない状況にも関わらず、隣に座るカービィだけは、何やらニヤニヤと悪戯な笑みを浮かべているのであった。
一通り、皆の紹介を終えたライネルが、ローブの内側から分厚い羊皮紙の束を取り出して、それに目を通しながら話し始める。
「そもそも、ピタラス諸島及びアーレイク島の墓塔の探索調査は、現国王ウルテル様直々のクエストであった。故に、クエストを受けたいと申し出る魔導師ギルドは複数あったが、ノリリアの強い希望と、これまでのギルドの実績が認められて、我らが白薔薇の騎士団がクエストを受ける事となったのだ。そして事前調査の後、ノリリア達は国を出立……、ピタラス諸島へと向かった。だがしかし、今回のクエストには一つの懸念材料があった。それが、ピタラス諸島に残留している悪魔の存在だ」
ライネルの言葉に、黒髪お姉さんことジオーナの眉毛がピクリと動く。
「悪魔だと? そのような話は初耳だ」
……うん、もう既に怒ってらっしゃるわね。
こわやこわや。
「儂も、その話を団長から聞いたのは、現地で先行して調査を行なっていたオーラスがこちらに戻ってからだった。しかし、ノリリアは前もって知っていたのだな?」
「ポ、ポポゥ……。クエスト受注の為と言われて、団長と二人で国王との謁見に行った際に……、聞いたポね。今からおよそ550年前に起こったムームー大陸大分断の裏には、悪魔の存在があって……、ヴェルドラ歴2022年に起きた【第74代国王ゾロモンの乱心】と、深い関係があるのポと……」
「なんだとっ!? そんなっ!?? まさか……」
「あたちもまさかと思ったポよ。けど、国王自ら、それが真実だと告げられたのポ。そして、ピタラス諸島にはまだ、大陸大分断以前にこちらに渡って来てしまった悪魔が生き残っているかも知れないという事を、教えられたのポ」
「ならば何故!? その時点でプロジェクトを中止にしなかったのだ!?? ノリリア、お前は副団長ではあるが、あくまでも歴史探求部に過ぎん。悪魔がその地にいるのであれば、私と戦闘防衛部の連中を向かわせるのが筋だろうっ!???」
「ポポ……、ジオーナさんの言う事は最もポ。けれど、そうなると話が大きくなるポね、国王はそれを避けたかったのポ。あくまでも、全ては憶測に過ぎないと国王は仰っていたポ。今現在、国王の手元に残っているのは、故アーレイク・ピタラスの残した一通の手紙のみ……。ゾロモン王の乱心とムームー大陸大分断の関係性を明白にするには、証拠が余りにも少な過ぎるポね。それなのに、騎士団の戦闘防衛部が動くとなると、学会や政会が黙っていないはずポ、それこそ何事かと煩く騒ぎ立てるポよ。だから国王は、あくまでも墓塔の探索をメインとして、クエストを遂行して欲しいとあたちに仰っていたポよ」
「なんという危険な真似を……。国王とて許すまじ。我ら魔導師の命をなんだと思ってるのだっ!?」
「落ち着けジオーナ! 国王を愚弄してはいかん!! 最終的にクエストの実行を決めたのはローズ団長だ。俺たちが何をどう吠えたところで、決定は覆らなかっただろうさ」
ブチ切れるジオーナを、木のおじさんことトゥエガが諌める。
「それで……、いたんだね? ピタラス諸島に悪魔が」
金髪の少年ことウィルが、別段表情を変えずに尋ねる。
「ポポゥ……。報告書には、嘘偽りない事を書いたポね。第一の島、イゲンザ島にはサキュバス。第二の島、コトコ島にはハンニ。第三の島には悪魔は居なかったポが……、ニベルーによって生み出された造出生命体と、悪魔の心臓を喰らう事で進化したホムンクルスが存在して居たポ。つまりは……、国王の懸念通り、三つの島全てに、悪魔が残留していたポよ」
ノリリアの言葉に、ジオーナ、トゥエガ、ウィルは、それぞれに何かを頭の中で考えているのだろう、口を一文字に結んで沈黙する。
「それに加えて、ノリリアが故アーレイク・ピタラス氏の弟子達の隠れ家を探索する中で、見えてきた真実がいくつかある。まず、五百余年前に、故アーレイク・ピタラス氏の一存で行われたムームー大陸大分断は、魔界へと通ずる時空穴を塞ぐ為に行われたという事。時を超えて現代に蘇ったイゲンザ・ホーリー氏の証言と、故コトコ・レクサンガス氏の残した伝玉、及び粗霊アメフラシの残した言葉より、それらは明白となった。そしてその事実を、今は亡き当時の国王、第80代国王コダルドが隠蔽したと考えられる事。当時の学会及び政会に関わった者も皆同罪……、共謀し、真実を闇へと葬り去ったのだろう。そしてもう一つ……、過去に生じていたと考えられる時空穴よりこちらの世界へ入り込んできた悪魔のうち、現在までピタラス諸島に残留している悪魔は五体であるという事。即ちそれは、諸島の主要五諸島のうち、残りの二つの島それぞれに悪魔が存在していると考えられる、という事になる。……これら全ては、ノリリアの諸島調査にて得られた情報より考え得る最低ラインの仮説だ。しかしながら、限りなく真実に近いのではないかと、儂は思っている」
そこまで一気に話すとライネルは、手に持っていた羊皮紙をクルクルと巻き上げた。
「つまり……、残りの二つの島にも悪魔が潜んでいるかも知れないから、団長はノリリアさんに帰って来いって言っているわけだね?」
「……いや、事はそう単純ではなかろう」
ウィルの問い掛けに異を唱えたのはジオーナだ。
「これはまだ表立っていない情報だが……。二ヶ月ほど前、王宮の永久管理宝物庫に侵入者が入った」
「なんだと!? それは本当かジオーナ!??」
「あぁ、国営軍の上層部から仕入れた情報だ、間違いない。しかしながら、我々王立ギルドにはその報告すら降りてこなかった。ローズの耳には私から入れておいたのだが……。その時に盗まれた物というのが、【古代魔導書レメゲトン】その第一部、【悪魔の書ゴエティア】なんだ」
ジオーナの言葉に、ノリリア、ライネル、トゥエガとウィルも、そして隣のカービィまでもが、目を見開いて驚いた。
「ポポッ!? ゴエティアがっ!?? それはっ!!! 一大事じゃないポかぁあっ!?!?」
「一大事どころの話じゃなかろう……。何故そのような重大事件が、一切公表されておらんのだ?」
「全ては国王の命令だと、その者は言っていた……。果たして、国王には何か考えがあるのか、それとも……」
「じゃあ……、ローズ団長はその事も知っていて、ノリリアさんを戻そうとしたの?」
「少なくとも、儂はそこまでの話は聞いておらんかった。あくまでも団長は、残りの主要二諸島に悪魔が残留している可能性と……、先日発表された、世界魔法連盟による時空間の歪みの調査結果を元に、ピタラス諸島は危険だと判断されたのだと思っていたからな。団長はああ見えて仲間思いだ。国王直々のクエストの為とはいえ、ノリリアを含め騎士団の者達を、連盟が定めた危険地帯に置いておく事など許せなかったのだろう」
「むむむむ……、盗まれたゴエティアと時空間の歪み……。俺には嫌な予感しかしないがな」
「私とて同じ意見だ。ピタラス諸島に残留悪魔が存在していると考えられる以上、ゴエティアが国王の手元に無いとなると尚更危険。盗んだ者は果たして何者なのか……、魔連(世界魔法連盟の略)が発表した時空間の歪みと何の関係があるのか……。ローズは、クエストの遂行は全てが定かになってからでも遅くは無い、そう考えたのだろう」
「そうだな。それならば儂も納得がいく。いくら残留悪魔が潜んでいるやも知れんとはいえ、増援を送るわけでもなく、国王直々のクエストによるプロジェクトを中止してノリリアを呼び戻すとは、何事かと思っておったのだ。まさか……、ゴエティアが盗まれていたとは……」
「ポポポゥ……。そうなるとやっぱり……。プロジェクトの続行は、不可能ポか……?」
ノリリアの悲しげな声に、副団長達は皆、下を向いて黙りこくってしまった。
……えっとぉ~?
……あのぉ~??
……全くもって話が見えないのは、俺だけなのかしら???
皆の会話がまるでチンプンカンプンな俺は、かなり場違いな場所にいるな~と心の中で冷や汗をかきつつ、困惑した表情を浮かべる事しか出来ない。
だけども、そのような訳の分からない状況にも関わらず、隣に座るカービィだけは、何やらニヤニヤと悪戯な笑みを浮かべているのであった。
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