最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★寄り道・魔法王国フーガ編★

462:帰還命令

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「何だぁあっ!? ……なっ!?? どうしたお前らぁっ!?!?」

   最初に声をあげたのは、船長のザサークだった。
   ウサギの人形が発した大音量の叫び声に驚き、後尾楼にある船長室からすぐさま飛び出してきて、倒れる船員達を前に叫んだ。
   その手には既に、刃渡りが俺の体の二倍以上ある剣が握られていた。

「船長! 突然空からこいつが降ってきて!!」

   後ろ向きに倒れながらも、なんとか意識を失わずに済んだらしい甲板長のイケメンダイル族バスクが、手で頭を抑えながら起き上がり、ザサークに向かってそう言った。

「何だそれはっ!? 何だってそんな……、おいお前らっ!! いつまで寝っ転がってんだぁあっ!?? さっさと起き上がれっ!!!」

   甲板の中央に立つウサギの人形を目にしたザサークは、それを鋭い目付きで睨み付けながら、周りで倒れている船員達を叱責する。
   その声に反応し、副船長のビッチェ、操舵手の灰色ダイル族ヘルマンと、航海士で半分小鬼のライラは、それぞれ顔を歪めながらも起き上がった。
   しかし、三つ子ダイル族のギガ、グガ、ゲガと、積荷担当のピンク色のダイル族であるカルゴは、ウサギの人形から比較的近い場所にいた為に、完全に気を失ってしまっていた。

「船長の俺様に無断で船に乗り込むたぁ……、良い度胸だぜウサギ野郎め。その耳、引き千切ってやらぁあっ!!!」

   ワニ顔の、牙の生えた大きな口を最大限まで開き、激怒するザサーク。
   大剣を手に、後尾楼の上から甲板へと大ジャ~ンプ!
   その目はいつも以上に鋭くて、睨まれたら最後、動けなくなっちゃいそうな程に恐ろしい。

「うぉらぁあぁぁ~!!!!!」

   目にも留まらぬ速さで間合いを詰め、ザサークはウサギの人形に斬りかかった!
   その動きはまるで、戦国の武士のようだ。
   左右上下に全力で大剣を振り回し、その度にブンブンという空を裂く重い音が鳴り響く。

   ぎゃあぁ!? 怖えぇっ!??
   あ、あんな威力抜群の攻撃喰らったら、一溜まりもねぇえぇぇっ!!??

   ウサギの人形はザサークの大剣の餌食となり、ズタズタに引き裂かれて……、ないっ!?

   なんとウサギの人形は、ザサークの攻撃全てを避けていた。
   それはまるで、どこぞの仙人かのごとく、小さく可愛らしい赤いドレスを紙のようにヒラヒラとなびかせながら、流れるように剣を避けているではないか。

   なんじゃありゃあっ!? すぅっげぇえっ!!?

「待ってポ! ザサーク船長!!」

   ザサークの攻撃と、それを避けるウサギの人形の動きに気を取られていると、船内に続く階段からノリリアが現れた。
   その後ろにはカサチョとアイビーも一緒だ。

「ノリリア~……、ポォーーーー!!!!!」

   叫んだのはまたしてもウサギの人形だ。
   怒りのあまり、その顔面はほぼ崩壊している。
   そして、上から振り下ろされたザサークの大剣をスッと避けたかと思うと、離れた場所にいるノリリアの真ん前まで、ビュン! っと飛んで行った。

「ポポゥッ!?!??」

   ノリリアが、ピンク色の顔を真っ青にして後退る。
   ウサギの人形は、ノリリアの顔の寸前で止まって……

「あんたのせいで! 私は一晩中!! 空の上を飛ばされてたんだぁあっ!!! どんだけ怖かったかぁあっ!!?? 分かるかぁあああんっ!!???」   

   ウサギの人形の絶叫が甲板に響き渡る。

「ご、ごめんポよコニーちゃん!? で、でも……、飛ばしたのはローズ団長であって、あたちじゃな……」

「あんたのせいだろうがよぉおおっ!? ローズが私を飛ばしたのはぁあっ!! あんたのせいだろうがぁあぁぁっ!!? それとも何か……? ローズのせいにするってか?? ……ローズにチクるぞごらぁああぁぁっ!!??」

「ヒィッ!? ごっ!?? ごめんポォッ!!!?」

   ……完全に、ノリリアが押されている。
   なんなんだあのウサギ? 何者なんだ??
   外見はほんと、可愛いウサギの人形のくせに、言動が半端なくヤクザに近い。
   叫ぶ時の舌の巻き具合といい、手の動きといい、かなり暴力的である。
   あんな人形……、絶対いらねぇ。

「なんだぁ~? ノリリアの知り合いかぁ??」

   ノリリアとウサギの人形のやり取りを見ていたザサークは、先程までの殺気を消す。
   いつも通りの様子に戻って(といっても、いつもおっかないけど……)、大剣をガッ! と肩に担いだ。

「あいつはコニーちゃん。ローズの……、白薔薇の騎士団団長の、ペットだ」

   はへ? ペット?? ……人形なのに???

   かなり深刻な表情でそう言ったカービィの言葉に、俺とギンロは揃って首を傾げる。

   コニーちゃんというウサギの人形は、その後もノリリアに対し、恫喝に近い喋り方で話し続けた。
   それが余りに口汚く、余りに聞き辛いものだったので、代わりに俺がコニーちゃんの言葉を要約すると、大体以下のような内容だった。

   白薔薇の騎士団の団長ローズは、今かなり怒ってる。
   それもこれも、今回のニベルー島の探索調査で、プロジェクトには参加させないと決めたはずのカービィが、大活躍してしまった事が理由らしい。
   まぁ確かに、ホムンクルスの城に乗り込んで、ホムンクルス達全員を一人で石化したんだから、カービィは大活躍してたな。
   そのおかげで、みんなが城の中に入る事が出来たし、メイクイとポピーも救われたわけだが……
   団長曰く……

「カービィの世話になるなど言語道断っ! 一度王都へ帰還し、経緯を説明しろぉっ!!」

   という事らしい。

「ポポ!? 帰還!!? 団長は、プロジェクトを中止しろとっ!?!?」

「プロジェクトを中止しろとは言ってない。ノリリアは一度帰還しろと、そう言っただけだ」

「で、でもっ!? 一度フーガに戻れば、ここまで来るのに早くても数ヶ月はかかるポよっ!?? このプロジェクトはあたちの悲願ポ!!! 離れる訳にはいかないポねっ!!!!」

「だったら、私のように空を飛ばされればいいんじゃない? なに、フーガからこの船まで、半日もかからなかったぞ?? まぁ……、生身のあんたが耐えられる保証はないけどな」

「ポ、ポポポゥ……、そんなぁ……」

   どうにか気持ちが落ち着いたらしいコニーちゃんは、冷静かつ冷徹な声で、ノリリアに帰還命令を通達した。
   ノリリアはショックのあまり、その場に膝から崩れ落ちた。

「なぁコニーちゃん、おいらとこいつも一緒に行っていいか?」

   ……は? 今なんと??

   ノリリアとコニーちゃんのやり取りを静観していたカービィが、いつものヘラヘラ顔でコニーちゃんに声を掛ける。
   そのピンク色の手は、何故か俺のローブのフードを握っている。

「カービィ・アド・ウェルサー……。よくもそんな事が言えたもんだ。あんた、今度ローズの前に現れた時には死が待っている事、忘れたわけじゃないだろう?」

   コニーちゃんは、ゆっくりとカービィを見て……、魔力のない俺でも感じられるほどの、まるで死神のようなおどろおどろしいオーラを放ちながらそう言った。

「はははっ! そういや、そんな事言われてたなぁ~!! けどよ、おいらが行った方が話が早いと思うんだ。ローズが本当に問い詰めたいのは、きっとおいらだろうからさ。そいで、このモッモも一緒なら、すぐに船に戻れるからよ」

「え? ……船に戻れるって、どうやってさ??」

 疑問を呈する俺。

「いいから話合わせろって。ノリリア一人じゃ危ねぇんだよ。おいら達が付いて行ってやらねぇと……」

   カービィはコソコソと、そう耳打ちしてきた。

   なるほど、ノリリアの身が危ないのか……
   確かに、コニーちゃんのさっきの恐喝まがいの喋り方といい、仕草といい……、その飼い主であるローズとかいう団長もかなりヤバそうだ。

「あ……、はい。僕も行きたいです」

   スッと手を挙げた俺を、コニーちゃんがギロリと睨み付けてくる。

   う……、こ、怖くなんかないぞ。
   さっきみたいに怒鳴らなければ、見た目はただの可愛い人形だもんね。
   怖くないぞこんにゃろ!

   だがしかし、俺は後に深く反省する事になる。
   この場の空気に完全に飲み込まれ、カービィの言葉に流されて、あまり深く考えずにそう言ってしまった事を……

「ポポ……、カービィちゃん、モッモちゃん……」

   床に崩れ落ちたままのノリリアは、今まで見た事がないような情け無い顔で俺たちを見て、小さな涙の雫をホロリと零していた。
   
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