最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★ピタラス諸島第三、ニベルー島編★

439:ペコッ、パコッ

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   ……ピトッ、……スリスリスリ

   コンコンコン、コンココココン

   バンッ!
   バンバンバンッ!!
   バババババババンッ!!!

「うふふ。そんな事したって、それは破れないわよ?」

   ふわりと宙に浮かぶ球体の中でもがく俺を、悪魔テジーは嘲笑う。

   くっそぉ~、ビクともしないっ!
   見た目はただの薄いガラスなのに、なんでだっ!?

   薄っすらとピンク色を帯びた、俺の周りを覆っているその球体を、なんとか自力で破壊できやしないかと、先程から俺は無駄な努力を重ねていた。
   そっと触って、優しく撫でて……、ノックするように軽く叩き、最後には全力で、粉々に割るつもりで叩いてみたが……
   悲しい哉、非力なピグモルの俺ではまるで歯が立たなかった。

   これはやばい……、非常に、やばいぞっ!!!

   そうこうしているうちに、悪魔テジーは二階の廊下を抜けて、三階へと向かう階段を登り始める。
   俺を閉じ込めている球体は、ふわふわと宙に浮かびながらその後を追った。

   それにしてもこの城は……、見た目に反して妙な機械が本当に多いな。
   さっきの研究室といい製造室といい、これまで見てきた世界の……、いわば世界観をまるっきり無視した化学の産物ばかりだ。
   ここは魔法が存在する、所謂ファンタジーな世界……、ではなかったのか?
   俺の認識が間違っていたのだろうか??
   今上っている階段の天井の隅にも、色んな管やらケーブルやらが沢山通っている。
   外観も内装も、ザ・城! って感じの、かなり気品に溢れた中世ヨーロッパ風のお洒落アンティークであるにも関わらず、だ……
   ミスマッチにも程があるだろうっ!?
   どっちかにしろよっ!!?

   心の中でそんな事を考えていると、とうとう玉座の間がある三階へと辿り着いてしまった。
   目の前に現れた大きな扉は、とても重厚感のあるもので、それこそ前世の記憶シリーズでいうところのRPGでよく見た感じがして、この先に一国の王様がいそうな雰囲気をバンバン醸し出している。
   けど……

   階段の天井を伝っていた管やらケーブルが、壁を突き抜けて、この先へと繋がっている。
   まさか、この玉座の間とやらも、これまでの部屋と同じように、中はめちゃくちゃ未来的な、気味の悪い機械でいっぱいなんじゃ……?

   よからぬ想像をし、身震いする俺。
   そんな事など御構い無しに、悪魔テジーは目の前の扉を押し開けた。
   そして、中に現れたのは……

「くっ!? 想像通り……」

   俺は思わず顔をしかめて、両手で覆った。   
   扉の先は、玉座の間とは名ばかりの、これまで以上に機械だらけの、とてつもなく怪しい部屋だった。

   壁を覆う、無数のケーブルと管。
   それら全てが向かう先は、部屋の中央に位置する椅子だ。
   その椅子もかなり異質で、いったい何の物質で造られているのか、俺には皆目見当もつかない。
   キラキラと輝くその椅子は、金属のように硬そうなボディーで、更には光沢を放っているくせに、何故か表面がこう……、まるで生き物のようにウネウネと波打っているのだ。
   そしてその後ろには、巨大な台座のような機械があり、天井からぶら下がっている無数の電球らしきものが、それを一斉に照らしていた。

   ……なんだろう、とってもとっても嫌な予感がします、はい。
   あの台座のような機械、真ん中がペコッと凹んでいて、それがちょうど、俺が今入っているこの球体と同じ形、同じ大きさなのです。
   まさか、このままあそこにパコッとはめられたりして……?

「モッモ君っ!?」

   はっ!? この声はっ!??

「メラーニア!? 何処っ!??」

   何処からともなく、俺の名を呼ぶメラーニアの声が聞こえて、俺は視線を巡らせる。
   すると、部屋の隅にある四角くて黒い檻の中に、その姿を発見した。

   なっ!? お前も捕まってるんかぁ~いっ!??

   メラーニアは、どうやら杖を取り上げられてしまったらしい。
   悔しそうな表情で、檻の鉄格子を両手で握りしめている。
   その頬は赤く血に濡れていて、白髪は茶色く汚れ、頭に傷を負って出血しているようだ。

「メラーニア? 今はそんな名前を使ってるのね。けど……、残念ね、ニベルー様。せっかくここまで辿り着けたのに、そのメラーニアの体ではあまりに無力。もっとちゃんと準備をして来れば、私に擦り傷をつける事くらいは出来たかも知れないわね、うふふふふ」

   檻の中のメラーニアを一瞥し、嘲笑う悪魔テジー。
   
「ほぉ? その方が、時の神が使わせし使者とやらですかな??」
   
   背後で聞き覚えのない高い声がして、俺は振り返る。
   そこには、見た事のない人間のおじさんが立っていた。

   髪の毛は金髪で、くるくるとカールしている。
   例えれば、学校の音楽室で見た事のある肖像画の、昔の音楽家みたいな髪型だ。
   服装はいやに近代的で、上下が真っ黒なスーツ姿、首元には蝶ネクタイをし、足元にはテカテカの革靴を履いている。
   胸には見た事のない、カクカクがグルグルと渦巻いた、目が回るような紋章の金バッジを付けていた。

   な……、誰だこいつ!?
   ここへ来て新キャラ登場!??
  
   戸惑う俺。
   しかし、これだけはハッキリと分かる。
   こいつは絶対に、悪者だ!
   そのいやらしい笑みが、俺に不快感しか与えていないのだ。

「あら、まだお帰りになってなかったのね? キャファール伯爵様」

   金髪くるくるおじさんに向かって、ニコリと微笑む悪魔テジー。

   ほらやっぱり!
   悪魔テジーの仲間ってことは、こいつは悪者だぁっ!!
   見るからに悪者臭がプンプン漂ってるぞぉっ!!!

「おほほほほ、折角ですからね。あなたの研究の集大成をこの目で見てから帰ろうと思いまして……。で、今から始めるのですか?」

   ほんっ!? 研究!?? 集大成!?!?
   今からだとぅっ!?!??

「えぇ、外が騒がしいから……。今すぐ始めるわ」

   そう言って悪魔テジーは、俺が入ったままの球体を操り始める。

   わわわっ!?
   何すんだぁあっ!??

   更に高く、ふわりと宙に浮かぶ球体。
   それは真っ直ぐに、あの台座の機械に向かって行く。

   やばいっ!?
   やっぱりそうなるぅっ!??

   球体は、俺を中に閉じ込めたまま、俺の想像通りに、台座の機械のペコッとした凹みに、パコッとはまってしまった。

「さぁ~、始めるわよっ! 時の神の使者の体から神力を取り出し、私はそれを糧に進化する!! 更なる高みへ!!! 私は、神になるのよぉっ!!!!」

   悪魔テジーは、両手を広げてそう言い放ち、満面の笑みで高笑いした。
   俺はというと……

   ぎゃあぁあぁぁっ!!!

   やめてっ! そんな事しないでっ!!
   てか、そんな事しても無駄だからっ!!!
   俺……、神力、3ポイントしかないのよぉおっ!!!!

   顔面蒼白し、わなわなと震えて……、心の中で絶叫していた。
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