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★ピタラス諸島第二、コトコ島編★
334:雨よ!
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「し、しかし……。今更、妾が雨を降らせたとて、雄丸は元に戻れまい。それに加えて、雨につられて悪魔ハンニがここへ来ようものなら、妾のみならずお主たちの身も危ないのではないか?」
泣き出しそうな顔で、グレコに問い掛ける桃子。
そうか、桃子は俺たちがハンニを倒した事をまだ知らないんだ。
「大丈夫です。悪魔ハンニは、既に私たちが倒しました」
「なっ!? それは真かっ!??」
驚く桃子に対し、グレコは大きく頷いた。
「けれど、悪魔ハンニの残していった呪いは、まだ解けていません。あそこにいるオマルもそうですが、西の村の者達が大勢、ハンニにその心を操られて、東の村へと攻めて来たんです。事は一刻を争います。みんなの目を覚ますためにも、どうか雨を。姫巫女様のお力を、お貸しください」
跪いたままで、桃子の目を真っ直ぐに見て、グレコは言った。
なるほど、その手があったか……
どうすれば、操られている鬼達が正気を取り戻せるのか、俺には全く良い案がなかったが、グレコの言うように、雨が降ればなんとかなるかも知れないぞ。
「あ、雨……。妾が……、私が、雨を……、呼べば良いのね? コトコ??」
半ば放心したかのような表情で、桃子は思わず、グレコの事をコトコと呼んだ。
それが意図的でないにしろ、この状況に混乱している結果にしろ……、今この瞬間、桃子の目には、グレコがコトコに見えていたのだろう。
その言葉、その声は、姫巫女として生きてきた桃子ではなく、ただの桃子……、五百年前にタイムスリップしたかのような、ただの、一人の少女としての桃子のものだった。
しかしグレコにしてみれば、桃子の言動の訳を知る由などない。
自分とコトコが、まるで同一人物のように瓜二つであった事も、そのコトコと桃子が、固い絆で結ばれていたであろう事も、全く何も知らないのだから。
だけどグレコは……
「……うん。あなたの雨が必要なの。お願い」
瞬時に全てを理解したかのように、抱いたであろう疑念や、名前を間違えられた事に対する不快感など全く感じさせない、朗らかな笑顔でそう答えた。
さすがグレコだ。
優しい……、なんて言葉じゃ足りないほどに、たったの一瞬でさえも戸惑う事なく、桃子の心を思いやれるなんて……
さすがだわ……、ほんと、脱帽です。
そんなグレコの言葉に桃子は……
「……わかった。今、この瞬間に、妾に出来る精一杯の事をしよう」
我に返ったかのように、姫巫女としての顔に戻った。
「しかし! 姫巫女様!! あなたはもうっ!??」
何故か制止しようとする野草。
だけど桃子は振り返らない。
両手に握ったままの鈴を、シャン! と一振りして、ふらつく足取りで、桃子は祭壇の中央へと移動する。
そして、スーッと大きく息を吸ったかと思うと、両手を空へと向けて広げ、叫んだ。
「雨よ! 大地に恵みを!! 雨よ!!! 生きとし生けるものに幸を!!!! 雨よ!!!!!」
シャンシャンシャーン!!!
鈴の音が響き、桃子は舞を舞い始めた。
力強く、軽やかなステップで。
それと同時に、桃子の体からは無数の光の玉が放たれた。
水色に輝くその光の玉は、水の雫のように様々に形を変えながら、桃子の周りを優雅に漂う。
それは規則的なようで、また変則的でもあって……
実に美しい光景が、俺の目の前に広がっていた。
「くっ、姫巫女様……。祭壇から降りるのだ! そこにいては雨乞いの邪魔になる!!」
野草に言われて、俺とグレコと砂里は慌てて祭壇を降りた。
「勉坐っ!? 大丈夫なのっ!??」
野草の服の端を破って作った即席の包帯で、右肩をグルグル巻きにした勉坐は、未だ苦しそうな表情ながらも、なんとか身を起こしている。
「なんのこれしき……。雄丸め、ふざけた真似をしてくれる」
怪我してたって、勉坐の怖さは健在である。
その鋭い目が見やる先には……
祭壇広場の中央で、手も足も出ない巫女守りの皆さんに囲まれながら、戦う袮笛と雄丸。
雄丸は器用に両手で双剣を操り、袮笛は破邪の刀剣である光の大剣を振り回している。
双方の力はほぼ互角だろう。
どちらかが気を抜けば、勝負は決まってしまう。
しかし二人とも、鬼神の如き形相で戦いを繰り広げていて、隙などまるで見当たらない。
このままだと、どちらかの命が尽きるまで、戦い続けるんじゃ……?
そんな不安が頭をよぎるほど、二人は全力で剣を振るっていた。
すると……
ドゴゴゴゴォーーーン!!!
「うわぁあっ!?」
「きゃあっ!??」
またもや、強烈な揺れと爆音が俺たちを襲った。
足元が崩れそうなほどの揺れと、鼓膜が破れそうなほどの轟音に、俺は思わず耳を塞いで身を縮めた。
「なんなのさっきからっ!?」
キレるグレコ。
「あ!? そうだった!!? グレコ、みんな、火山が噴火したんだよっ!!!!」
ハタと思い出し、叫ぶ俺。
「噴火ですってぇっ!?」
更にキレるグレコ。
「噴火というのは……、よもや、山から火の波が押し寄せる現象の事か!?」
野草の口振りからするに、どうやら噴火という現象は、紫族の間では詳しく知られていないらしい。
「そう! リーシェの話だと、マグマは真っ直ぐこの村に向かってくるらしい!! ノリリア達がなんとかするって言っていたけど……、もし何とかならなかったら、ここは危険だよっ!!!」
自分でも、説明が下手過ぎるだろうと思うものの、再度の噴火音と地響きのせいで、脳内がもうパニックで、これが限界です!
「それは真かっ!? ならば、早く皆を避難させねば!! うっ……、くぅ……」
立ち上がろうとするも、肩の痛みの為に膝をついてしまう勉坐。
「勉坐様っ!? まだ動いてはいけませんっ!!」
砂里が慌てて勉坐を支える。
「なんとかするって、具体的には何て言ってたのっ!?」
俺の両肩を掴んで、ガクガクと揺さぶるグレコ。
あうっ!? 脳味噌が揺れるぅっ!!?
俺に対しても、桃子と同じように優しく接してよぅっ!!!
「えっと! えっと!! 溝を掘って!!! 流れを変えるって!!!!」
小さな頭の片隅に残っている記憶を、必死に思い出して答える俺。
「溝を掘って流れを変えるだとっ!? そのような事が可能なのかっ!??」
俺に向かって、ぐわっ! と顔を近付ける野草。
ひぃっ!? 怖いぃっ!!?
「わっ!? わかんにゃいけどぉっ!! でもっ!!! ノリリアがそうするってぇえっ!!!!」
言ってたんですよぉおぉっ!!!!!
アワアワする俺を睨みつける野草。
その隣で、何やら考えているような素振りをするグレコ。
そして……
「ノリリアが出来ると踏んだなら、おそらくそれは可能な事……。ノリリア達を信じましょう! 私たちは、今ここで出来る事をしましょう!!」
グレコの言葉に、野草、勉坐、砂里が、同時に頷いた。
けど、でも……
俺たちがここで出来る事って、いったい何っ!?
「グレコ、僕達はいったい何をす……、ん? なんだこの音??」
グレコに問い掛ける途中で、俺は言葉を切った。
雄丸と袮笛が剣を振るう音、巫女守り達が応援する声、それらに混じって不意に聞こえてきた音。
聞き慣れないその音に、俺は神経を集中させる。
遠くから、何かが近付いてくる。
粘着質のある巨大な何かが、ズリズリと、ネチャネチャと、地面を這う音だ。
バキバキと音を立てながら倒れる木々と、逃げ惑う動物の足音に鳥の羽ばたき。
これらはいったい……?
音がする方向を、俺はジッと凝視する。
「とにかく、雨が降るまで……、えっ!? 姫巫女様っ!??」
叫ぶグレコ。
その視線の先には、祭壇の中央で倒れている桃子の姿があった。
「やはり! もう限界だったのだ!!」
急いで祭壇に駆け上がる野草とグレコ。
野草がそっとその小さな体を抱き上げるも、桃子は気を失っているようだ、その瞳は閉じられている。
「そうか、つい先日も、雨乞いの儀式をされたばかりだったから……」
勉坐が小さく呟いた。
「では……、雨は? 雨は呼べないのですか!?」
砂里の言葉には、誰も返事をする事が出来なかった。
そのような状況を背中に感じつつも、俺は、別の方向へと視線が釘付けになっていた。
目に映ったそいつの姿に、身も心も固まってしまっていたのだ。
なん、で……?
なんでここに来たっ!?
……てか、どうやってぇえっ!??
バキバキバキと、祭壇広場の周りを囲う木々を薙ぎ倒して現れたのは、ネバネバとした粘液で体を覆った、水色の光を放つ巨大ナメクジ。
身体中からウネウネと伸びる触手は、暗がりで見るよりも更に気持ち悪い。
「……ん? ひっ!? ぎゃあぁぁぁっ!!!」
「ばっ!? 化け物だぁあっ!!?」
「武器をぉっ!? 武器を構えろぉっ!!?」
そいつの登場に気付き、口々に叫びながら、薙刀のような武器を構える巫女守り達。
「なっ!? ……何あれ??」
青褪めるグレコと、冷や汗を流す野草。
目を見開き固まる勉坐と、あっと驚く砂里。
「アメコだ……。どうして?」
ポツリと言葉を零す俺。
間違いない。
あれは、あの巨大なナメクジは、試練の洞窟の先にある、青い泉の洞窟にいるはずの精霊アメフラシ。
どうしてここへ!?
するとアメコは、のっそりとした動きで口を動かし、こう言った。
『我が、雨を降らせよう』
泣き出しそうな顔で、グレコに問い掛ける桃子。
そうか、桃子は俺たちがハンニを倒した事をまだ知らないんだ。
「大丈夫です。悪魔ハンニは、既に私たちが倒しました」
「なっ!? それは真かっ!??」
驚く桃子に対し、グレコは大きく頷いた。
「けれど、悪魔ハンニの残していった呪いは、まだ解けていません。あそこにいるオマルもそうですが、西の村の者達が大勢、ハンニにその心を操られて、東の村へと攻めて来たんです。事は一刻を争います。みんなの目を覚ますためにも、どうか雨を。姫巫女様のお力を、お貸しください」
跪いたままで、桃子の目を真っ直ぐに見て、グレコは言った。
なるほど、その手があったか……
どうすれば、操られている鬼達が正気を取り戻せるのか、俺には全く良い案がなかったが、グレコの言うように、雨が降ればなんとかなるかも知れないぞ。
「あ、雨……。妾が……、私が、雨を……、呼べば良いのね? コトコ??」
半ば放心したかのような表情で、桃子は思わず、グレコの事をコトコと呼んだ。
それが意図的でないにしろ、この状況に混乱している結果にしろ……、今この瞬間、桃子の目には、グレコがコトコに見えていたのだろう。
その言葉、その声は、姫巫女として生きてきた桃子ではなく、ただの桃子……、五百年前にタイムスリップしたかのような、ただの、一人の少女としての桃子のものだった。
しかしグレコにしてみれば、桃子の言動の訳を知る由などない。
自分とコトコが、まるで同一人物のように瓜二つであった事も、そのコトコと桃子が、固い絆で結ばれていたであろう事も、全く何も知らないのだから。
だけどグレコは……
「……うん。あなたの雨が必要なの。お願い」
瞬時に全てを理解したかのように、抱いたであろう疑念や、名前を間違えられた事に対する不快感など全く感じさせない、朗らかな笑顔でそう答えた。
さすがグレコだ。
優しい……、なんて言葉じゃ足りないほどに、たったの一瞬でさえも戸惑う事なく、桃子の心を思いやれるなんて……
さすがだわ……、ほんと、脱帽です。
そんなグレコの言葉に桃子は……
「……わかった。今、この瞬間に、妾に出来る精一杯の事をしよう」
我に返ったかのように、姫巫女としての顔に戻った。
「しかし! 姫巫女様!! あなたはもうっ!??」
何故か制止しようとする野草。
だけど桃子は振り返らない。
両手に握ったままの鈴を、シャン! と一振りして、ふらつく足取りで、桃子は祭壇の中央へと移動する。
そして、スーッと大きく息を吸ったかと思うと、両手を空へと向けて広げ、叫んだ。
「雨よ! 大地に恵みを!! 雨よ!!! 生きとし生けるものに幸を!!!! 雨よ!!!!!」
シャンシャンシャーン!!!
鈴の音が響き、桃子は舞を舞い始めた。
力強く、軽やかなステップで。
それと同時に、桃子の体からは無数の光の玉が放たれた。
水色に輝くその光の玉は、水の雫のように様々に形を変えながら、桃子の周りを優雅に漂う。
それは規則的なようで、また変則的でもあって……
実に美しい光景が、俺の目の前に広がっていた。
「くっ、姫巫女様……。祭壇から降りるのだ! そこにいては雨乞いの邪魔になる!!」
野草に言われて、俺とグレコと砂里は慌てて祭壇を降りた。
「勉坐っ!? 大丈夫なのっ!??」
野草の服の端を破って作った即席の包帯で、右肩をグルグル巻きにした勉坐は、未だ苦しそうな表情ながらも、なんとか身を起こしている。
「なんのこれしき……。雄丸め、ふざけた真似をしてくれる」
怪我してたって、勉坐の怖さは健在である。
その鋭い目が見やる先には……
祭壇広場の中央で、手も足も出ない巫女守りの皆さんに囲まれながら、戦う袮笛と雄丸。
雄丸は器用に両手で双剣を操り、袮笛は破邪の刀剣である光の大剣を振り回している。
双方の力はほぼ互角だろう。
どちらかが気を抜けば、勝負は決まってしまう。
しかし二人とも、鬼神の如き形相で戦いを繰り広げていて、隙などまるで見当たらない。
このままだと、どちらかの命が尽きるまで、戦い続けるんじゃ……?
そんな不安が頭をよぎるほど、二人は全力で剣を振るっていた。
すると……
ドゴゴゴゴォーーーン!!!
「うわぁあっ!?」
「きゃあっ!??」
またもや、強烈な揺れと爆音が俺たちを襲った。
足元が崩れそうなほどの揺れと、鼓膜が破れそうなほどの轟音に、俺は思わず耳を塞いで身を縮めた。
「なんなのさっきからっ!?」
キレるグレコ。
「あ!? そうだった!!? グレコ、みんな、火山が噴火したんだよっ!!!!」
ハタと思い出し、叫ぶ俺。
「噴火ですってぇっ!?」
更にキレるグレコ。
「噴火というのは……、よもや、山から火の波が押し寄せる現象の事か!?」
野草の口振りからするに、どうやら噴火という現象は、紫族の間では詳しく知られていないらしい。
「そう! リーシェの話だと、マグマは真っ直ぐこの村に向かってくるらしい!! ノリリア達がなんとかするって言っていたけど……、もし何とかならなかったら、ここは危険だよっ!!!」
自分でも、説明が下手過ぎるだろうと思うものの、再度の噴火音と地響きのせいで、脳内がもうパニックで、これが限界です!
「それは真かっ!? ならば、早く皆を避難させねば!! うっ……、くぅ……」
立ち上がろうとするも、肩の痛みの為に膝をついてしまう勉坐。
「勉坐様っ!? まだ動いてはいけませんっ!!」
砂里が慌てて勉坐を支える。
「なんとかするって、具体的には何て言ってたのっ!?」
俺の両肩を掴んで、ガクガクと揺さぶるグレコ。
あうっ!? 脳味噌が揺れるぅっ!!?
俺に対しても、桃子と同じように優しく接してよぅっ!!!
「えっと! えっと!! 溝を掘って!!! 流れを変えるって!!!!」
小さな頭の片隅に残っている記憶を、必死に思い出して答える俺。
「溝を掘って流れを変えるだとっ!? そのような事が可能なのかっ!??」
俺に向かって、ぐわっ! と顔を近付ける野草。
ひぃっ!? 怖いぃっ!!?
「わっ!? わかんにゃいけどぉっ!! でもっ!!! ノリリアがそうするってぇえっ!!!!」
言ってたんですよぉおぉっ!!!!!
アワアワする俺を睨みつける野草。
その隣で、何やら考えているような素振りをするグレコ。
そして……
「ノリリアが出来ると踏んだなら、おそらくそれは可能な事……。ノリリア達を信じましょう! 私たちは、今ここで出来る事をしましょう!!」
グレコの言葉に、野草、勉坐、砂里が、同時に頷いた。
けど、でも……
俺たちがここで出来る事って、いったい何っ!?
「グレコ、僕達はいったい何をす……、ん? なんだこの音??」
グレコに問い掛ける途中で、俺は言葉を切った。
雄丸と袮笛が剣を振るう音、巫女守り達が応援する声、それらに混じって不意に聞こえてきた音。
聞き慣れないその音に、俺は神経を集中させる。
遠くから、何かが近付いてくる。
粘着質のある巨大な何かが、ズリズリと、ネチャネチャと、地面を這う音だ。
バキバキと音を立てながら倒れる木々と、逃げ惑う動物の足音に鳥の羽ばたき。
これらはいったい……?
音がする方向を、俺はジッと凝視する。
「とにかく、雨が降るまで……、えっ!? 姫巫女様っ!??」
叫ぶグレコ。
その視線の先には、祭壇の中央で倒れている桃子の姿があった。
「やはり! もう限界だったのだ!!」
急いで祭壇に駆け上がる野草とグレコ。
野草がそっとその小さな体を抱き上げるも、桃子は気を失っているようだ、その瞳は閉じられている。
「そうか、つい先日も、雨乞いの儀式をされたばかりだったから……」
勉坐が小さく呟いた。
「では……、雨は? 雨は呼べないのですか!?」
砂里の言葉には、誰も返事をする事が出来なかった。
そのような状況を背中に感じつつも、俺は、別の方向へと視線が釘付けになっていた。
目に映ったそいつの姿に、身も心も固まってしまっていたのだ。
なん、で……?
なんでここに来たっ!?
……てか、どうやってぇえっ!??
バキバキバキと、祭壇広場の周りを囲う木々を薙ぎ倒して現れたのは、ネバネバとした粘液で体を覆った、水色の光を放つ巨大ナメクジ。
身体中からウネウネと伸びる触手は、暗がりで見るよりも更に気持ち悪い。
「……ん? ひっ!? ぎゃあぁぁぁっ!!!」
「ばっ!? 化け物だぁあっ!!?」
「武器をぉっ!? 武器を構えろぉっ!!?」
そいつの登場に気付き、口々に叫びながら、薙刀のような武器を構える巫女守り達。
「なっ!? ……何あれ??」
青褪めるグレコと、冷や汗を流す野草。
目を見開き固まる勉坐と、あっと驚く砂里。
「アメコだ……。どうして?」
ポツリと言葉を零す俺。
間違いない。
あれは、あの巨大なナメクジは、試練の洞窟の先にある、青い泉の洞窟にいるはずの精霊アメフラシ。
どうしてここへ!?
するとアメコは、のっそりとした動きで口を動かし、こう言った。
『我が、雨を降らせよう』
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