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★ピタラス諸島第二、コトコ島編★
314:夢だよ?
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……不思議な夢を見た。
「モッモ……、モッモ、聞こえるか?」
聞き覚えのある声が、耳元で囁く。
「頼みたい事があるのだ」
女の声だ。
「破邪の刀剣を、探して欲しい。おそらくだが……、志垣様がその在処を知っているはずだ。私は一足先に、奴の元へ行く。怪しい動きがあれば、その時は、力づくで止めてみせる。しかし、助けるには、破邪の刀剣が必要だ。破邪の刀剣を見つけ、私の元へ……。頼んだぞ」
そう言うと、女の声は聞こえなくなった。
「いつまで寝てるのぉおぉ~っ!?!??」
「ぎゃあぁぁっ!??」
耳元で聞こえた怒鳴り声に、俺は飛び起きた。
頭の中が、グワングワンと揺れる。
だっ!? 誰だぁあっ!??
こんなひどい事する奴はぁあっ!?!?
目の前に立つのは、腰に手を当てたポーズで仁王立ちし、冷たい視線で俺を見下ろす、黒髪のエルフ。
「ぐっ!? グレコぉっ!??」
お前かぁあっ!?
俺の耳を苛める奴はぁあっ!!?
「いったいどれだけ寝るつもりよっ!? さっきから何度起こしたと思っているのっ!?? この緊急事態によくもまぁ、グースカと寝ていられるわねぇっ!!??」
ひぃっ!?
何々っ!??
なんで朝一からガチギレしてるのぉっ!?!?
「なんか、ネフェが居なくなったらしぃ~」
弱々しい声が聞こえて、横を見ると……
「ひゃあっ!? どどっ!?? どうしたのカービィ!?!? そのっ……、その顔ぉおっ!!???」
隣にちょこんと座るカービィの顔は、両頬が真っ赤になってパンパンに腫れ上がり、完全に変形してしまっているのだ。
「なっはっはっ! 小さな幸せの代償さぁっ!!」
満足そうに笑っている辺り、おそらく……、寝惚けてグレコの胸元に顔を突っ込んで、驚いたグレコに往復ビンタを食らった、という感じだろう。
ようやく頭の揺れが治った俺は、改めて周りを見る。
ここは、泉守りの小屋。
俺とグレコとカービィと……、椅子に腰掛けているのは仮面を被った桃子だ。
ベッドには、寝ていたはずの袮笛の姿はなく、ついでに砂里と野草の姿も見当たらない。
昨晩、いろいろあった後で、疲れがピークにきた俺たちはみんな、床まで広がった分厚い毛布の上で雑魚寝をしたのだった。
あの時、袮笛と砂里とグレコは既に寝ていたし、カービィは横になった途端イビキをかき始めて……
野草は壁を背もたれにして座り、静かに目を閉じていたし、桃子はそんな野草の膝枕の上に頭を乗せて眠りについた。
そんな様子を見て、俺は安心して目を閉じたのだが……
「袮笛がいないって……、どうして?」
「朝目が覚めたら居なくなっていたのよ。今、ヤグサとサリが辺りを捜索しているわ。私もさっきまで外を見回ってたんだけど……、土地勘がないから遠くまで行くのは危険だと思って戻ってきたの」
なるほど、そうだったのか。
「何処へ行ったんだろう? ……怪我は?? 昨日、袮笛の体を見るって言っていたけど、なんともなかったの???」
「あぁ、それは大丈夫。手の甲に現れた紋章以外、体には何の異変も見つからなかったわ」
そっか、大丈夫だったのか……
でも、袮笛は何処へ?
すると、扉がガチャリと開いて、野草と砂里が戻ってきた。
野草は渋い表情で、砂里はポロポロと涙を零している。
「どう……、でしたか?」
グレコが野草に尋ねる。
「駄目だ、何処にも居なかった。いったい何処へ行ったのだ?」
額に手を当てて、大きく溜息をつく野草。
「どうしよう……。姉様の身に何かあったら、私……」
顔を両手で覆い、肩を震わせて泣く砂里。
「大丈夫よサリ! ネフェなら大丈夫!!」
グレコが駆け寄り、砂里の背を優しく撫でる。
「……時に野草、昨晩妙な事を申しておったな?」
仮面を付けた桃子が、唐突に言葉を発した。
「妙な事……、と申しますと?」
「袮笛の手の甲に現れた、妙な印の事じゃ」
あ、そういえばそうだな。
何か、三人の闘士がどうのこうのとか……
紫族の始祖が持ち得ていたとかなんとか言ってたやつ。
「姫巫女様は、あまり書物を読まれませぬ故、存じ上げませぬでしょうが」
ちょっぴり馬鹿にしたような野草の前置きに、桃子はピクリと体を動かすも、声を上げずに続きを聞いた。
「我ら紫族には、古より言い伝えられております神話が存在するのです。その名も白蛇伝。我らがこの世界に降り立つ以前からの物語でございます」
ん? お?? 白蛇伝、とな???
それは確か……、勉坐の家の地下室で、石碑の碑文を読み解く際に使った書物の名前だ。
「その中に、鬼族の命運を賭けて戦った、勇敢なる三人の闘士の話がございまして……。昨晩、袮笛の手の甲に現れたあの紋章は、その闘士の証として伝えられている物でございました。そして何を隠そう、この泉に眠る我々紫族の始祖と呼ばれる者が、その三人の闘士の一人だったのです。あの紋章が袮笛に刻まれた理由までは分かりませぬが……。もしかすると袮笛は……、始祖に選ばれし者なのかも知れませぬ」
始祖に選ばれし者……、それって、なんぞ?
「そのさぁ、始祖っていうのは名前がないのか? シソシソ呼んでるけど」
……カービィ、今そこ重要?
「不思議な事に、名は伝わっておらぬのだ。白蛇伝の中で、三人の闘士はそれぞれ、緑の闘士、赤の闘士、紫の闘士と呼ばれるのみ。破邪の刀剣を使いて呪いを断ち切り、民を守ったとされているが……。その名は誰にも分からぬ」
……ん? え??
「今……、破邪の刀剣って言った?」
俺の言葉に、野草がギロリと俺を睨む。
……あ、いや、普通に見ているだけかも知れないけど。
こ、怖い。
「破邪の刀剣がどうかしたか?」
「あ、いや、その……。なんか、夢の中で誰かが、破邪の刀剣を探して持って来いって……、ん?」
そういやあの声……、もしかして、袮笛の声か……?
「モッモ、今は夢の話なんてしてる場合じゃないの! とにかく、ネフェを探して見つけないと!!」
グレコに強い口調で言われて、俺は縮こまって口をギュッと閉じた。
「いや、袮笛の捜索は中断じゃ。あやつとてもう童ではない。何らかの理由があって、一人ここを出て行ったのじゃ。心配には及ばぬじゃろう。それよりも野草、妾を雨乞いの祭壇まで連れて参れ。雨乞いの儀を執り行う」
「それでは……、やはり、悪魔ハンニとやらをおびき寄せると?」
「そうじゃ。カービィの申すように、上手くいくとは思えぬが……。物は試しじゃ。奇襲を恐れて待つよりも、此方から仕掛けてやろうぞ」
「承知致しました」
ふむ、桃子と野草は村に戻って、雨乞いの儀をするのだな。
俺たちは……、さてどうしよう?
「姫巫女様、私達は別行動でもいいでしょうか?」
心細そうに肩をすくめている砂里に寄り添って、グレコが尋ねる。
「私は、ネフェを探します。確かに、彼女には何か目的があって、一人で行動しているのかも知れないけれど……。でも、だからって放っておくわけにはいきません!」
グレコの言葉に、仮面を被った桃子の表情は読み取れない。
もしかしたら、逆らった事に対して怒っているかも……、と思ったのだが……
「好きにするが良い。妾と野草は村へと戻る。野草、参るぞ!」
桃子は野草の背に負ぶわれて、小屋を出て行った。
「さてと……。で、どうすんだ、グレコさん? この辺りはもう探して、居なかったんだろう??」
カービィの言葉に、グレコは腕組みをして考える。
「昨日のネフェの言葉、覚えている?」
グレコに問われて、俺は記憶を遡る。
確か袮笛は……
「猛き魂を持つ戦士が、悪に蝕まれている……。姉様はそう言っていたわ」
砂里の言葉に、頷くグレコ。
「猛き魂を持つ戦士って聞くと……、私には、あの人しか思い浮かばない。西の村の首長、オマル」
えぇっ!? おっ!?? 雄丸ぅっ!???
「ちょっ! ちょっと待って!! ……え? 雄丸が異形な怪物になるっていうの??」
それはさすがにないんじゃ……
てか、子どもじゃないじゃんっ!?
「私も違うと思う。けど、猛き魂を持つ戦士って、他に誰か思いつく?」
そう言われましても……
地元民じゃないからさ、ここにどんな奴がいるかなんて知らないよぅ。
「まぁ、思い当たる奴がいるんなら、そいつのとこに行くのも一つだな。だけどグレコさん、一度東の村へ戻らねぇか? 騎士団のみんなも残してきたままだしさ」
カービィが、珍しくまともな事を言った。
……槍でも降るんじゃなかろうか?
「そうね。じゃあ、私たちも一度東の村へ戻って、それから西の村へ行きましょう。サリ、それでもいいかしら?」
グレコの言葉に砂里は、頼り無げに小さく頷いた。
「よし! そうと決まれば、この馬鹿みたいな毛布を片付けましょう!! サリ、手伝って♪」
不安そうな砂里に対し、グレコは努めて明るくそう言った。
何故だかその姿が、コトコにそっくりだと俺は思った。
「なぁ、モッモ」
「ん? どしたのカービィ??」
「さっき言ってたさ、破邪の刀剣? それ、何処にあるんだ??」
……いや、知らないよ。
「わかんない。でも……、ただの夢だよ、きっと」
「ん~、そうかぁ? なんか臭うんだよなぁ~」
……何? オナラでもしましたか??
「あ、でも確か……、志垣が場所を知っているかもって言ってた!」
「シガキ? ……あぁ、あの倒れた爺ちゃんか!? ふ~ん……。じゃあさ、村に戻ったらその爺ちゃんに会いに行こうぜ!! 何か知ってるかも知れねぇ!!!」
「いいけど……。夢だよ?」
「バーカ! 男はなぁ、夢に生きてなんぼなんだよぉっ!!」
てやんでいっ! という雰囲気でそう言ったカービィは、一人上機嫌になって、毛布を片付けているグレコと砂里の元へと飛んで行った。
夢に生きてなんぼって……、その夢と俺のいう夢は全然意味が違う気がするんですけどぉ~?
なんとも言えない気持ちを抱えたまま、毛布を片付けるグレコと砂里、その横で邪魔をしているようにしか見えないカービィを、俺は眺めていた。
「モッモ……、モッモ、聞こえるか?」
聞き覚えのある声が、耳元で囁く。
「頼みたい事があるのだ」
女の声だ。
「破邪の刀剣を、探して欲しい。おそらくだが……、志垣様がその在処を知っているはずだ。私は一足先に、奴の元へ行く。怪しい動きがあれば、その時は、力づくで止めてみせる。しかし、助けるには、破邪の刀剣が必要だ。破邪の刀剣を見つけ、私の元へ……。頼んだぞ」
そう言うと、女の声は聞こえなくなった。
「いつまで寝てるのぉおぉ~っ!?!??」
「ぎゃあぁぁっ!??」
耳元で聞こえた怒鳴り声に、俺は飛び起きた。
頭の中が、グワングワンと揺れる。
だっ!? 誰だぁあっ!??
こんなひどい事する奴はぁあっ!?!?
目の前に立つのは、腰に手を当てたポーズで仁王立ちし、冷たい視線で俺を見下ろす、黒髪のエルフ。
「ぐっ!? グレコぉっ!??」
お前かぁあっ!?
俺の耳を苛める奴はぁあっ!!?
「いったいどれだけ寝るつもりよっ!? さっきから何度起こしたと思っているのっ!?? この緊急事態によくもまぁ、グースカと寝ていられるわねぇっ!!??」
ひぃっ!?
何々っ!??
なんで朝一からガチギレしてるのぉっ!?!?
「なんか、ネフェが居なくなったらしぃ~」
弱々しい声が聞こえて、横を見ると……
「ひゃあっ!? どどっ!?? どうしたのカービィ!?!? そのっ……、その顔ぉおっ!!???」
隣にちょこんと座るカービィの顔は、両頬が真っ赤になってパンパンに腫れ上がり、完全に変形してしまっているのだ。
「なっはっはっ! 小さな幸せの代償さぁっ!!」
満足そうに笑っている辺り、おそらく……、寝惚けてグレコの胸元に顔を突っ込んで、驚いたグレコに往復ビンタを食らった、という感じだろう。
ようやく頭の揺れが治った俺は、改めて周りを見る。
ここは、泉守りの小屋。
俺とグレコとカービィと……、椅子に腰掛けているのは仮面を被った桃子だ。
ベッドには、寝ていたはずの袮笛の姿はなく、ついでに砂里と野草の姿も見当たらない。
昨晩、いろいろあった後で、疲れがピークにきた俺たちはみんな、床まで広がった分厚い毛布の上で雑魚寝をしたのだった。
あの時、袮笛と砂里とグレコは既に寝ていたし、カービィは横になった途端イビキをかき始めて……
野草は壁を背もたれにして座り、静かに目を閉じていたし、桃子はそんな野草の膝枕の上に頭を乗せて眠りについた。
そんな様子を見て、俺は安心して目を閉じたのだが……
「袮笛がいないって……、どうして?」
「朝目が覚めたら居なくなっていたのよ。今、ヤグサとサリが辺りを捜索しているわ。私もさっきまで外を見回ってたんだけど……、土地勘がないから遠くまで行くのは危険だと思って戻ってきたの」
なるほど、そうだったのか。
「何処へ行ったんだろう? ……怪我は?? 昨日、袮笛の体を見るって言っていたけど、なんともなかったの???」
「あぁ、それは大丈夫。手の甲に現れた紋章以外、体には何の異変も見つからなかったわ」
そっか、大丈夫だったのか……
でも、袮笛は何処へ?
すると、扉がガチャリと開いて、野草と砂里が戻ってきた。
野草は渋い表情で、砂里はポロポロと涙を零している。
「どう……、でしたか?」
グレコが野草に尋ねる。
「駄目だ、何処にも居なかった。いったい何処へ行ったのだ?」
額に手を当てて、大きく溜息をつく野草。
「どうしよう……。姉様の身に何かあったら、私……」
顔を両手で覆い、肩を震わせて泣く砂里。
「大丈夫よサリ! ネフェなら大丈夫!!」
グレコが駆け寄り、砂里の背を優しく撫でる。
「……時に野草、昨晩妙な事を申しておったな?」
仮面を付けた桃子が、唐突に言葉を発した。
「妙な事……、と申しますと?」
「袮笛の手の甲に現れた、妙な印の事じゃ」
あ、そういえばそうだな。
何か、三人の闘士がどうのこうのとか……
紫族の始祖が持ち得ていたとかなんとか言ってたやつ。
「姫巫女様は、あまり書物を読まれませぬ故、存じ上げませぬでしょうが」
ちょっぴり馬鹿にしたような野草の前置きに、桃子はピクリと体を動かすも、声を上げずに続きを聞いた。
「我ら紫族には、古より言い伝えられております神話が存在するのです。その名も白蛇伝。我らがこの世界に降り立つ以前からの物語でございます」
ん? お?? 白蛇伝、とな???
それは確か……、勉坐の家の地下室で、石碑の碑文を読み解く際に使った書物の名前だ。
「その中に、鬼族の命運を賭けて戦った、勇敢なる三人の闘士の話がございまして……。昨晩、袮笛の手の甲に現れたあの紋章は、その闘士の証として伝えられている物でございました。そして何を隠そう、この泉に眠る我々紫族の始祖と呼ばれる者が、その三人の闘士の一人だったのです。あの紋章が袮笛に刻まれた理由までは分かりませぬが……。もしかすると袮笛は……、始祖に選ばれし者なのかも知れませぬ」
始祖に選ばれし者……、それって、なんぞ?
「そのさぁ、始祖っていうのは名前がないのか? シソシソ呼んでるけど」
……カービィ、今そこ重要?
「不思議な事に、名は伝わっておらぬのだ。白蛇伝の中で、三人の闘士はそれぞれ、緑の闘士、赤の闘士、紫の闘士と呼ばれるのみ。破邪の刀剣を使いて呪いを断ち切り、民を守ったとされているが……。その名は誰にも分からぬ」
……ん? え??
「今……、破邪の刀剣って言った?」
俺の言葉に、野草がギロリと俺を睨む。
……あ、いや、普通に見ているだけかも知れないけど。
こ、怖い。
「破邪の刀剣がどうかしたか?」
「あ、いや、その……。なんか、夢の中で誰かが、破邪の刀剣を探して持って来いって……、ん?」
そういやあの声……、もしかして、袮笛の声か……?
「モッモ、今は夢の話なんてしてる場合じゃないの! とにかく、ネフェを探して見つけないと!!」
グレコに強い口調で言われて、俺は縮こまって口をギュッと閉じた。
「いや、袮笛の捜索は中断じゃ。あやつとてもう童ではない。何らかの理由があって、一人ここを出て行ったのじゃ。心配には及ばぬじゃろう。それよりも野草、妾を雨乞いの祭壇まで連れて参れ。雨乞いの儀を執り行う」
「それでは……、やはり、悪魔ハンニとやらをおびき寄せると?」
「そうじゃ。カービィの申すように、上手くいくとは思えぬが……。物は試しじゃ。奇襲を恐れて待つよりも、此方から仕掛けてやろうぞ」
「承知致しました」
ふむ、桃子と野草は村に戻って、雨乞いの儀をするのだな。
俺たちは……、さてどうしよう?
「姫巫女様、私達は別行動でもいいでしょうか?」
心細そうに肩をすくめている砂里に寄り添って、グレコが尋ねる。
「私は、ネフェを探します。確かに、彼女には何か目的があって、一人で行動しているのかも知れないけれど……。でも、だからって放っておくわけにはいきません!」
グレコの言葉に、仮面を被った桃子の表情は読み取れない。
もしかしたら、逆らった事に対して怒っているかも……、と思ったのだが……
「好きにするが良い。妾と野草は村へと戻る。野草、参るぞ!」
桃子は野草の背に負ぶわれて、小屋を出て行った。
「さてと……。で、どうすんだ、グレコさん? この辺りはもう探して、居なかったんだろう??」
カービィの言葉に、グレコは腕組みをして考える。
「昨日のネフェの言葉、覚えている?」
グレコに問われて、俺は記憶を遡る。
確か袮笛は……
「猛き魂を持つ戦士が、悪に蝕まれている……。姉様はそう言っていたわ」
砂里の言葉に、頷くグレコ。
「猛き魂を持つ戦士って聞くと……、私には、あの人しか思い浮かばない。西の村の首長、オマル」
えぇっ!? おっ!?? 雄丸ぅっ!???
「ちょっ! ちょっと待って!! ……え? 雄丸が異形な怪物になるっていうの??」
それはさすがにないんじゃ……
てか、子どもじゃないじゃんっ!?
「私も違うと思う。けど、猛き魂を持つ戦士って、他に誰か思いつく?」
そう言われましても……
地元民じゃないからさ、ここにどんな奴がいるかなんて知らないよぅ。
「まぁ、思い当たる奴がいるんなら、そいつのとこに行くのも一つだな。だけどグレコさん、一度東の村へ戻らねぇか? 騎士団のみんなも残してきたままだしさ」
カービィが、珍しくまともな事を言った。
……槍でも降るんじゃなかろうか?
「そうね。じゃあ、私たちも一度東の村へ戻って、それから西の村へ行きましょう。サリ、それでもいいかしら?」
グレコの言葉に砂里は、頼り無げに小さく頷いた。
「よし! そうと決まれば、この馬鹿みたいな毛布を片付けましょう!! サリ、手伝って♪」
不安そうな砂里に対し、グレコは努めて明るくそう言った。
何故だかその姿が、コトコにそっくりだと俺は思った。
「なぁ、モッモ」
「ん? どしたのカービィ??」
「さっき言ってたさ、破邪の刀剣? それ、何処にあるんだ??」
……いや、知らないよ。
「わかんない。でも……、ただの夢だよ、きっと」
「ん~、そうかぁ? なんか臭うんだよなぁ~」
……何? オナラでもしましたか??
「あ、でも確か……、志垣が場所を知っているかもって言ってた!」
「シガキ? ……あぁ、あの倒れた爺ちゃんか!? ふ~ん……。じゃあさ、村に戻ったらその爺ちゃんに会いに行こうぜ!! 何か知ってるかも知れねぇ!!!」
「いいけど……。夢だよ?」
「バーカ! 男はなぁ、夢に生きてなんぼなんだよぉっ!!」
てやんでいっ! という雰囲気でそう言ったカービィは、一人上機嫌になって、毛布を片付けているグレコと砂里の元へと飛んで行った。
夢に生きてなんぼって……、その夢と俺のいう夢は全然意味が違う気がするんですけどぉ~?
なんとも言えない気持ちを抱えたまま、毛布を片付けるグレコと砂里、その横で邪魔をしているようにしか見えないカービィを、俺は眺めていた。
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