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2章

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「おい!何やってんだお前!」
「ぁ、ぁの、騎獣がいたので…俺…」

結局、忍び込む方法は思いつかなかったので、男達に見つかって捕まることにした。これなら女の人と同じ場所にいれられるはずだ!

男達に物置きから出て来てもらうために小屋の裏の走駝に騒いでもらうことにして、気配を消さずに普通に近づいてみた。見知らぬ人が一直線に近づいて来るんだから当然走駝は警戒して騒ぎ出す。すぐに小さい方の男が走って来た。

「朝ごはんあげようと思って…」

俺は騎獣が好きで勝手にご飯をあげようとした子ども。のつもり。片手鍋にその辺りの草もちゃんと入れてある。片手鍋は小道具として役に立った!

「こんなとこにそんな格好でいるなんておかしいだろう!こっち来い!!」

よし!捕まった!

腕を掴まれて引き摺られる。

「やだー。はなしてー」
「うるせぇ!だまれ!」

ほどほどに抵抗もしてみよう。
すぐに振り払える掴み方だったけど、無力な子どもを装って男に引っ張られるままについて行く。
すぐにあの物置きに連れて来られた。

「おら、入れ!」

物置きの中には木箱に座ってナイフをチラつかせてる大きい方の男と男から出来るだけ離れて壁に張りついて立っている女の人。木箱の側には俺を掴んでいる男が担いでいた袋が置かれている。

女の人、目が覚めてるし何もされてないみたいでよかったって思ったけど、よく見たら、あの人ギィの結婚相手の人じゃないか!?
どういうこと!??

「なんだ、そいつ」
「騎獣にえさやろうとしてた」
「そんな格好でか?」
「ああ。警備隊に見つかったかと思ったがこいつだった。1人だしこの格好だ、まだ子どもだし何も出来んだろ。ちょうどいいんじゃねぇか?」
「ちょっと歳食ってるが、まぁいいか。女もこいつも使い道はありそうだしな」
「収穫が多い分にはリーダーも怒らねぇって」
「そうとなれば運ぶ準備がいるな。今からやっとくか」
「だな。
おぃ、お前ら逃げ出そうなんてするんじゃねぇぞ!森は獣がウヨウヨいるからここから出たら無事では済まないぜ!喰われたくなければ大人しくしとけ!」

俺を突き飛ばして物置きに入れると男達は出て行った。

え。手とか縛らなくていいの?
身体検査も無し?
扉の鍵は締めたみたいだけど…。

あんなので人攫いって大丈夫なんだろうかと思いながら、有利になったことには感謝する。リーダーってのはもっとちゃんとした?悪党かもしれないから、今のうちにお姉さんを逃がさないと。

「君、大丈夫?そんな格好で…何もされてない?」

どこか壊せそうな箇所はないか壁を探っている俺に、床の袋を開けようとしながらお姉さんが話しかけてきた。

お姉さんを逃す方法を考えてたら、逆にお姉さんから心配されてしまった。

「あ、大丈夫です。パジャマですみません。寝起きだったもので…。
お姉さんは大丈夫ですか?ケガはないですか?」
「…パジャマ…?ぇ、それ1枚?」
「え?これがいつものパジャマなんですけど…」

おかしいのかな?魔王領でもこんな感じだったし。もうちょっと長かったけど。エリカに来てギィが渡してくれたやつだし、ルークも何も言ってなかったけどな??

なんかすごく悲しそうな目で見られてる気がする…。まあ、パジャマでは普通外出しないしな。
今は非常事態だから許して、お姉さん!

「えと、お姉さんはどうしてここに?」
「私はっ、路地でっ、この子が攫われそうになってるのをっ、見つけてっ、助けようとしたんだけどっ、捕まっちゃってっ。っんー!開いた!!」
「えっ!?」

壁の調査を止めて振り向いた先で、お姉さんが袋から小さな男の子を助け出してた。

えええっ!?
子どもも攫ってたのかっ!?

「僕、大丈夫だった?怖かったね。もう大丈夫だからね」

いや、まだ大丈夫ではないです。が、今から大丈夫にするべくもっと頑張ります!

壁は隙間はあるけど意外としっかりしてる。
木箱に乗っても天井には届かない。
どうする。どうしよう。

子どもの様子はお姉さんに任せて、狭い物置きの中を見回す。壁を壊すための道具って言っても、ここには何も残ってないし、俺が持ってる片手鍋じゃ無理がある。

焦る俺の目に木箱が入った。
正確には木箱の周りの地面が、だ。

どうしてあの辺りの土間だけ泥濘んでるんだ?
もしかして…

「お姉さん、木箱を動かすの手伝ってくださいっ」

お姉さんと俺は力を合わせて木箱を押した。空なのに長いことここに置いてあったからか土間に沈んでてなかなか手強い。
袋から出てきた男の子も一緒に押してくれる。

元気でよかった!って、この子、こないだヤックが連れて帰ってた風見鶏の子だ!また勝手に外に出てたのかなぁ、もう。

「動けぇー……やった!」
「すごいっ」

やっぱりだ!
木箱で壁に空いた穴を塞いでたんだ!

木箱を退かした後の壁と床の境目に子どもなら何とか通れそうな穴がある。

「お姉さん、まずこの子を逃がします。その後地面を掘って穴を大きくして逃げましょう」
「わかったわ」

俺は男の子の前にしゃがんで目線を合わす。
こんな状況でも泣くのを我慢してる強い子だ。幸いどこにもケガはなさそうだし、ちゃんと逃げきれるだろう。

「俺はカイト。冒険者だよ。ヤックとグレンの友達だ。君の名前は?」
「…リノ」
「…カイト?」

お姉さんが何か言ってるけど、今は急いでるんで後で聞きますね。

「よし。リノは冒険者を目指してるんだろ?今から俺がリノに依頼を出すよ。リノの初依頼だ」
「…おれ、まだ冒険者になれないって…」
「大丈夫だって!リノは今からこの穴から外に出て、アイツらに見つからないように街まで行って、警備隊にここの事を教えるんだ。俺たちを助けて欲しい」
「おれ…できるかな」
「リノならできるって信じてる。
ほら、俺のギルド証を持って行けよ」

寝るときも首から下げたままのギルド証をリノの首にかける。

「…D級…」

あ、ガッカリしちゃったかな…。

「お、俺はD級だけどさっ。このギルド証の鎖はA級のルークが使ってたやつを貰ったんだ!リノもこれを持ってたらきっとルークが守ってくれる!」
「ルーク!すごい!」
「だろ!?
穴から出たら太陽の方向に行くんだ。でも焦ったらダメだぞ。慎重に隠れながら…隠密行動だ。この葉っぱを持って行くと獣は寄って来ないから、アイツらに見つからないことだけ考えて警備隊まで行くんだ。いいな」

無言で頷いたリノに片手鍋からエラニ草を取り出して握らせる。

よし、急げ!
でも慎重に!

小さなリノの体は壁の穴を無事に通り抜けて、リノはすぐに側の茂みに潜り込んで見えなくなった。

きっと大丈夫。街まで逃げられるはず。
次はお姉さんだ!
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