67 / 87
2章
67
しおりを挟む
「おかえり。俺も今帰ったところだ。暗くなってきたから心配になってきてた。大丈夫か」
「…ぁ、あ、うん。だ、大丈夫」
喉が絡んで声が出にくい。
まさかいると思ってなかったから、心の準備が間に合わない。
今帰ったとこなんだ…。この時間まであの人の所にいたのかな…いや、違う違う、今考えるのはそれじゃなくって!
…いつもの笑顔ってどんなだっけ!?
「ご飯買って来たからまだだったら食べてね。
俺…俺、お風呂入って来るっ」
ギィが近寄って来ようとするのを避けるように移動しながらテーブルの上に買ってきた焼き串を置いて、足早にお風呂に向かう。
ギィの顔をしっかり見られない。
お風呂でぐずぐず限界まで長湯して茹で上がってヨロヨロしながらリビングに戻った。
ギィは部屋着に着替えてソファで次の依頼の物かな?資料を読んでる。
リビングのオレンジ色の灯りに照らされたギィの横顔は、静かで、完成された大人の男の持つ力強さや美しさを漂わせていて、ただただカッコよかった。
やっぱり俺、ギィのことが好きだ。これは、恋人の好きだ。
胸が痛くて、涙が出そう。
「カイト、上がったのか。そんなところでどうした?」
入り口の柱の陰からギィを見ていたのに気付かれて、いつものようにおいでと腕を広げられるけど、近づくことなんてできない。
「カイト?」
今ギィに触れたら、碌でもないことを口走って困らせてしまいそうだ。
「…つ、疲れたからもう寝るね。おやすみっ」
急いで2階に駆け上がる。
ベッドの俺の側の出来るだけ端に寄って掛布の中に潜り込んだ。
「カイト。カイト、どうした。何があった?」
すぐにギィが追いかけてきて、布団の中で丸まっている俺を上から撫でる。
俺は布団を剥がされまいときつく握って更に体を縮める。
「何もない。疲れただけだから!寝たら治るから」
ギィは何も言わず、掛布の上に寝転んで布団の上から俺を抱え込んだ。
「…指名依頼が入って、明日また出ることになった。今度は少し長くなる。一緒にいてやれなくてすまない」
ギィはまたいなくなるのか。
寂しいけど、一緒にいていつ結婚の話をされるのかびくびくしていなくていいことにちょっと安堵もする。
「この依頼の後はしばらく休める予定だから、待っててくれ」
「…指名依頼なら仕方ないね。気をつけてね」
「カイト…顔を見せてくれ」
小さな声があまりにも悲しそうだったから、俺は諦めて布団から頭を出してギィを見た。
ギィの目は俺の目の奥を覗き込んでくる。
「カイト、大丈夫なんだな」
「大丈夫だって。ちゃんと1人で留守番できるよ」
ギィが言ってる大丈夫と俺が言ってる大丈夫が噛み合ってない事に気づかないふりで精一杯笑ってみせて、そのまま目を瞑った。
ギィはそれ以上何も言わず、俺が寝てしまうまでずっと布団の上から俺を抱きしめたままだった。
「…ぁ、あ、うん。だ、大丈夫」
喉が絡んで声が出にくい。
まさかいると思ってなかったから、心の準備が間に合わない。
今帰ったとこなんだ…。この時間まであの人の所にいたのかな…いや、違う違う、今考えるのはそれじゃなくって!
…いつもの笑顔ってどんなだっけ!?
「ご飯買って来たからまだだったら食べてね。
俺…俺、お風呂入って来るっ」
ギィが近寄って来ようとするのを避けるように移動しながらテーブルの上に買ってきた焼き串を置いて、足早にお風呂に向かう。
ギィの顔をしっかり見られない。
お風呂でぐずぐず限界まで長湯して茹で上がってヨロヨロしながらリビングに戻った。
ギィは部屋着に着替えてソファで次の依頼の物かな?資料を読んでる。
リビングのオレンジ色の灯りに照らされたギィの横顔は、静かで、完成された大人の男の持つ力強さや美しさを漂わせていて、ただただカッコよかった。
やっぱり俺、ギィのことが好きだ。これは、恋人の好きだ。
胸が痛くて、涙が出そう。
「カイト、上がったのか。そんなところでどうした?」
入り口の柱の陰からギィを見ていたのに気付かれて、いつものようにおいでと腕を広げられるけど、近づくことなんてできない。
「カイト?」
今ギィに触れたら、碌でもないことを口走って困らせてしまいそうだ。
「…つ、疲れたからもう寝るね。おやすみっ」
急いで2階に駆け上がる。
ベッドの俺の側の出来るだけ端に寄って掛布の中に潜り込んだ。
「カイト。カイト、どうした。何があった?」
すぐにギィが追いかけてきて、布団の中で丸まっている俺を上から撫でる。
俺は布団を剥がされまいときつく握って更に体を縮める。
「何もない。疲れただけだから!寝たら治るから」
ギィは何も言わず、掛布の上に寝転んで布団の上から俺を抱え込んだ。
「…指名依頼が入って、明日また出ることになった。今度は少し長くなる。一緒にいてやれなくてすまない」
ギィはまたいなくなるのか。
寂しいけど、一緒にいていつ結婚の話をされるのかびくびくしていなくていいことにちょっと安堵もする。
「この依頼の後はしばらく休める予定だから、待っててくれ」
「…指名依頼なら仕方ないね。気をつけてね」
「カイト…顔を見せてくれ」
小さな声があまりにも悲しそうだったから、俺は諦めて布団から頭を出してギィを見た。
ギィの目は俺の目の奥を覗き込んでくる。
「カイト、大丈夫なんだな」
「大丈夫だって。ちゃんと1人で留守番できるよ」
ギィが言ってる大丈夫と俺が言ってる大丈夫が噛み合ってない事に気づかないふりで精一杯笑ってみせて、そのまま目を瞑った。
ギィはそれ以上何も言わず、俺が寝てしまうまでずっと布団の上から俺を抱きしめたままだった。
6
お気に入りに追加
701
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!
Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた!
※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
転生したので異世界でショタコンライフを堪能します
のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。
けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。
どうやら俺は転生してしまったようだ。
元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!!
ショタ最高!ショタは世界を救う!!!
ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる