異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

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2章

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女の子同士の会話ってすごいよな。あんなにぽんぽん話題が変わっても普通に会話が続いてる。

「…なんか圧倒されるね。あれで話しできるってすごいな」
「しらね。俺は俺に関係のある話以外は適当に聞き流してるし」

今日はヤックとティナと採取依頼。ちょっと遠出になるって事でC級の女性冒険者のメリアさんが同行してくれてる。
これまではギィかルークが一緒でないと外の依頼を受けられなかったけど、最近はギルド長の選んだ冒険者と一緒なら受けてもいいってことになった。
メリアさんは元風見鶏の人で、独り立ちしてエリカを出ても時々帰って来るらしい。里帰りって感じかな?帰って来たけどすることないから一緒に行くよ。ってついて来てくれた。

無事採取は終えての帰り道、街道に出て後はのんびりエリカまで歩きましょうってところからティナとメリアさんのお喋りが止まらない。

今の話題はかわいい装備について。のようだ。
装備にかわいいは必要なのか?って思うけど口を挟むと大変な目にあうし、ティナは俺の探してた巾着袋を作ってくれたいい子だから大人しく横で話を聞いておく!

「あれ、アイツら何であんなとこいるんだ。
ちょっと行って来るわ」
「え、ヤック?」

もうすぐエリカってとこの街道横の草原に、小さな男の子ともっと小さな女の子がしゃがんで何かをしてた。だいぶん距離あるけどよく見つけたな。
ヤックは子供達の所へ走って行く。

「あー。また黙って外に出たんだ。あれ、風見鶏の子なんだけど、子どもだけで街の外に出ちゃダメってなってるのに、勝手に出て採取したりしてるんだよね。
お兄ちゃんの方が冒険者になりたがってるんだけど、まだ小さいから親父さんの許可がもらえなくて」
「昔のヤックみたいなのね」
「見つかる度に怒られてるのに諦めないんだよねー」
「最近近くの村で子どもが行方不明になってるし、警備隊も気をつけてるだろうけど、心配ね」

ヤックは子供達に何かを言って走って戻って来た。

「アイツら大人しく帰りそうにないから、俺監視兼ねてちょっと付き合ってから風見鶏まで送って行くわ。その後ギルドに報告行くから先に行ってて」
「はーい」
「ヤックだけで大丈夫?」
「壁が見える範囲にするから大丈夫」
「気をつけてね」
「はい。じゃ、また」

ヤックは子供達の所に戻って、2人を連れて移動し出した。

「ヤックも自分みたいだって思うから放っておけないんでしょうね」
「ヤックって口は乱暴だけど優しいしね」
「本人は認めなさそうだけど」

確かに。って笑いながら3人で歩き出す。

「ねぇ、カイト君ってA級と一緒に行動してたんでしょ?今は?」
「あー、ギィとルークに会ってエリカに連れて来てもらったから。色々教えてもらって」
「いいなー」
「ね、ね、メリアさんはギィ?ルーク?」
「私、断然ルーク!」
「わたしもー!カッコかわいいよね!」

キャーって2人が盛り上がる。ティナにかわいいって言われるルークって、どうなんだ…。

「あ、ギィは最近エリカにホーム持ったって噂だけど、本当なの?」
「あ、それ「本当みたいなの!女の人と家に入って行くの見たし、噂は確定だよ!」」

え?

「あー、遂にA級の1人がホーム持ちかー。でもまだルークが残ってるし!」
「だよね!わたしも頑張って女を磨かないと!」

いや、ティナ、女を磨くってまだ13だよね?
じゃ、なくって!

「あ、あの、ホームって」
「あら、ギィから聞いてなかったの?弟子に言うのは恥ずかしいのかしら」
「ギィって孤高のイメージあるし、そうかも!照れて言い出せないとか!」

キャーってまた2人で盛り上がってるけど、待って待って。

「ホームって拠点って」
「あ、ホームを持つことは聞いてるの?
確かに風見鶏みたいな拠点もホームだけどね、単独行動してる冒険者がホームを持つっていったら…ね」
「え?」
「察しが悪いなあ。これだから男は!
結婚に決まってるでしょ!家庭を持つの!」

けっこん…
ギィが結婚。
女の人と結婚。

「守りたい相手が出来て2人でホームを持つって憧れるわー。ね、ね、ティナが見た女の人ってどんな人?」
「んー。若くてかわいい系かなー。見たことない人だったから最近エリカに来た人かも」
「あー、依頼で出た先の村とかで見初めて連れて来たのかなー。私もそんな出会いが欲しいー」
「住宅区の新しい家だったし、2人で住んでるのかなー」
「A級だったら今後も安泰だよね」
「「いいなー」」

2人はその後も理想の出会いについて盛り上がってたけど、俺は全然聞いてなかった。顔は笑顔をキープ出来てたと思うけど、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

いつから?
最近忙しそうだったのはそのせい?
なんで言ってくれなかったの?
言われなくても察するものなの?

いつギルドに着いて報告して、どうやって家まで帰って来たのか全くわからなかったけど、気がついたらポーチのテーブルセットに座ってて辺りはすっかり暗くなってた。

俺、なんでこんなに動揺してるんだろ。
ギィが結婚するって聞いて自分がショックを受けてるってこともショックなんだけど。
知らなかったことがショックなのかな。
なんか勝手にギィのことなんでも知ってる気になってた。そんな大事なこと教えてくれなかったなんて。

でも俺のこと好きって言ってた。俺にギィを好きになって欲しいって。あれは恋人の好きってことだし、あの時のギィに嘘はなかったと思う。

じゃあいつ変わったんだろう。家にあまり居なくなった頃かな。
この家に来てからギィから好きって言ってもらったっけ?

なんでかな。
俺、何かしたかな。

いや、違う。俺が何もしなかったから…かな?

俺が、いつまでもギィに好きって言わなかったからかな。
好意を受け取るだけで、返さない俺が面倒になった?


ショックが大きすぎると涙って出てこないんだな。
頭がクラクラする。
胸が痛い。


あぁ…

俺…俺、とっくにギィがそういう意味で好きになってたんだ…。
俺、ギィが好きなんだ。
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