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2章

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拠点に引っ越して以来、ギィはめちゃくちゃ忙しくなった。泊まりがけの依頼も多いし、帰ってきても難しい顔で資料を読んだり調べ物をしてる。

「ギィ、お風呂空いたよ」

そっと声をかけると読んでいた資料を置いてギィが顔を上げる。

「あぁ。明日から3日程依頼で出る。カイトはいつも通り過ごしておいてくれ」

おいで。と手を広げられて足元に座る。大きな手で髪をすかれ乾いた事が確認できるとソファの隣に引き上げられた。

「魔力鉱石も充填しておくぞ」

宿にいたときは灯りを点ける時くらいしか使わなかった俺のバッテリー魔力鉱石も、拠点では色々使う事が増えている。魔力残量は俺は見たらだいたいわかるから少なくなって来たら道具を使わないようにするとかで節約できるんだけど、ギィは依頼に出る前は必ず充填する。

「道具類の充填も済んでいるから今回も問題ないと思うが、何かあったらすぐにルークかギルド長に言うんだ」
「わかってる。でも大丈夫だよ。子どもじゃないんだし。
ギィこそ昨日帰って来たばっかりなのに、疲れてない?」
「これぐらいでは何ともない。帰ればカイトがいるしな。約束は覚えてるな?」

ぎゅっと抱き寄せられて…首筋の匂いをくんくんされてる?お風呂あがりだから石鹸の匂いだと思うんだけど。

「大丈夫だって。
ルーク以外は中にいれない。拠点の場所をむやみに教えない。1人で遠くに行く依頼は受けない。暗くなる前に帰る。ね?」
「…あぁ。留守を任せた」
「うん。ギィも気をつけてね」
「はは。わかった。
よし、カイトの補充もできたし、カイトはもう寝ろ」

補充って。くんくんしてたのはそれかっ。
でも最近一緒に住んでるはずなのに一緒にいる時間が短くて、ちょっとね。寂しいって言うか…ギィは平気なのかな。忙しいから気にしてる暇ないかな。

「ギィは?まだ寝ない?」
「俺はもう少し準備があるからな。終わったら上へ行く。先に寝てろ」
「…わかった。おやすみ」
「おやすみ」

おでこにキス、唇にもチュッてされて2階へ促される。階段を上がる前に振り返って見たギィは、もう厳しい顔に戻って資料を読んでた。


「カイト、もう行くがいい子で待ってろよ」
「…ん」

前髪をかき上げられて意識が浮上してくる。まだ夜明け前なのか部屋は薄暗かった。
ベッドの横には完全装備のギィ。
昨日、ギィが上がってくるまで起きてようって思って結構遅い時間まで頑張ってたと思うんだけど、結局寝てしまったんだな…。

「まだ早いから起きなくていい。黙って行ったら怒るから声をかけただけだ。
3日で戻る。留守番頼んだぞ」

俺はちゃんといってらっしゃいって言えたかな。次に目が覚めたときにはギィは当然いなくて、家の中はしんとしてた。

「ちゃんと起こしてくれればいいのにっ。てか、朝何時に出発するか教えておいてくれたら自分で起きるのにっ。
…いってらっしゃい言いたかったし、見送りもしたかったのになぁ」

はぁ…いない相手に文句を言っても虚しいな…。
しょんぼりしてても仕方ない!
今日も頑張るぞ!


今日の一杯はメロン味。ギルド食堂のシロップは甘い物好き冒険者達に広まって罪悪感のない甘味としてシロップ入りミルクが人気になってる。ミルク、カラダにいいもんな。

「ギィはまた依頼か?」
「うん。一昨日帰って来たばっかりだったんだけどもう行っちゃった」
「以前のペースに戻ってるってことは、カイトがべったり面倒を見なくても大丈夫になったって認めてるってことだろ。いい事じゃないか」
「そうかなー」
「晩飯はここで食べてくか?」
「んーん。暗くなる前には帰りたいから晩御飯はまたにする」
「そうか。じゃ持って帰れる物包むからちょっと待ってろ」

帰っても1人だとご飯作る気も出なくて携帯食で済ませたりしちゃうから、料理を持たせてくれるのはすごく嬉しい。しっかり食べろよ。って見送ってくれたダスさんに手を振って帰り道を急ぐ。

街の西側の壁についた小さな扉を潜り出て家に着くと、玄関ポーチの手すりにピヨちゃんがいて、俺の帰りを待ってた。
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