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2章

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「カイト、どう?揃った?」

今日はルークが講師の訓練で近くの森へ採取に来てる。参加者は俺以外にはE級1人、D級1人の3人だ。外で行われる訓練は講師1人に対し多くても5人まで。今日の参加者はこれまでにも何度か一緒になってるやつら。年も近そうだから友達になれたらいいんだけど。

参加者は申込者の中から講師が選ぶ。A級のギィとルークが講師をする訓練は毎回すごい競争率らしいんだけど、俺は身内特権で申し込めば確実に参加できちゃってる。そういうのも俺が遠巻きにされてる理由なんだろうけど、そこを譲る気はない。だって他の講師の外の訓練には参加できないんだから多めに見て欲しいよ。

「うん。なかなかいい状態のが集めれたと思うんだ。日陰でも見つけれたから図鑑に書き込んどこうと思って」
「査定が楽しみだな」
「今日こそはルークに勝てるかもしれない!」
「ははは。まだまだ負けないよ」

まだ他の2人は採取中みたいだし、今なら聞いてもいいかな?

「ねぇ、ルークはギィの全力の戦闘って見たことある?ギィとパーティー組んだ人がすごいすごいって言ってたけど俺見たことないから、どんな感じなんだろうって思って」
「あー、前に組んだことのあるB級のパーティーかな?
ギィの戦闘はすごいと言えばすごいけどそいつらが言うすごいは本当にギィがすごい理由とはズレてると思うなぁ。そいつらの言ってるすごいは見えてる戦闘力のことだと思うんだよね。
もちろんギィは強い。俺とはタイプが違うから戦い方については俺も細かい部分まで評価できるものではないけど、純粋な攻撃力は随一だと思うよ。
でも、本当にギィがすごいのは判断力と冷静さだ。
激しい戦闘になると特に近接戦闘タイプのやつは一種の興奮状態になって周りが見えなくなることがあるんだ。それで怪我をすることもあるし、戦闘が終わっても気が立ってるままのやつも出てくる。
ギィはそれがない。戦闘中も周りもみてきっちり計算してパーティーを組んでいるやつらを支えながら最も強い攻撃も与えることができるんだ。
パーティーを組んでるやつらにしたらいつも以上に攻撃が当たるように感じるだろうし、戦えてる爽快感みたいなものも強くなるだろうね。ギィがそう導いているんだけどね。そいつらもそこに気づけないうちはまだまだA級にはなれないな」
「へぇー。ルークもそういう判断をするの?」
「まぁ、俺は遠距離タイプだしそれが役割だしね。戦闘にも興味が出てきた?」
「うぅん。そういう訳じゃないんだけど、俺の入れない世界だなぁって、ちょっと…ね」

ルークは何も言わず俺の頭をかきまぜた。
ちょっと寂しかったって言わなくてもわかってくれたかな。こういうとこはルークの方が断然頼れる気がする。

「あ、そういえばルークもずっと宿だよね?いつかエリカから移動するから?」
「ん?移動する予定は今のところないよ?なんで?」
「俺の居たところでは宿ってその日のうちに家に帰れないときに泊まるものだったから、移動しないんだったら家の方がいいんじゃないかと思って。そういうのホームって言うんでしょう?」
「ホーム…それ、ギィにも言ったのか?」
「うん。ギィもルークもいつかエリカから移動しちゃうんだったら、俺はエリカに居たいから1人で家借りないといけないな。って思って」
「え?家ってホームだよね?ホームは1人では住まないんじゃないかなぁ」
「そうなの?一人暮らしはない?」
「ない…な。最初から一人ってのはないと思う。ギィはなんて言ってた?」
「ギルドに聞いてみるって言ってたけど…。家だとお風呂あるって。ギィが家借りたらルークも一緒に住む?」
「いや…それは…俺はカイトといれるから嬉しいけど、ギィが何て言うかなぁ…。もう一度ギィとちゃんと話した方がよさそうだぞ。まぁ、そんなにすぐ動かないとは思うが」
「??」

3人だと狭くなるってことかな?
ルークも一緒だとルームシェアって感じで楽しいと思ったんだけどなぁ。

採取をしていた2人が戻ってきた。E級はヤック、D級はグレンだ。そう、2人とも前にギルド長が言ってた拠点に住んでる冒険者だった。拠点は家の屋根に風見鶏が付いてるから”風見鶏”って呼ばれてる。

「2人とも依頼数は集まったか?」
「「はい」」
「よし、じゃあ荷物をまとめて帰る準備だ」

俺は広げてた採取物を種類ごとに束ねてそれぞれ紙のファイルに挟んで袋に仕舞う。今日は植物の採取だったからファイルに挟んでおくと持ち運びのときの破損が少なくて査定額が上がるんだ。

「なぁ、お前、それ、なんでそんなことするんだ?」

初めてヤックに声をかけられた。グレンもこっちを見てる。ルークは見守る姿勢なので俺が答えて大丈夫かな。

「えっと、こうやって持って帰ると端っこが折れたりしにくいから査定額が下がりにくいかと思って。あと、袋の中で混ざったりもしないし。カウンターで出すときもサッてできるよ」
「へぇー。いいな。それ自分で考えたのか?」
「えっ?うん。だって便利だし。報酬多い方がいいし」

これでもまだギィにもルークにも勝てないけど。でも、時給じゃなくて達成で給料が出るんだったらちょっとでも高くなるようにしないと損だろ!

「俺も真似してもいいか?ちょっとでも報酬多くしたい」
「そんなの俺に聞かなくてもいいに決まってる。今日はコレ使う?余ってるし。ほら、グレンも」

余分に持ってきてた紙ファイルを2人に渡す。紙ファイルはギルドの書類整理で要らなくなった物を貰ったリサイクルだ。

「俺はコレ使ってるけど、挟めたらなんでもいいと思う。ほんとはコレのサイズにぴったりの袋があれば採取しながら収納していけるんだけど、まだ見つけられてないんだよね…」
「お前、カイトだっけ。ちゃんと自分で考えてやってるんだな」
「えぇ…」
「だっていつもギィさんとルークさんと一緒にいてさ。全部用意してもらってやってるんだと思ってたから…」

俺も。ってグレンも小さく言った。ショックだ…。そんな風に見られてたのか。

「コレにぴったりの袋さ、ティナに言ったら何かあるかも。あ、ティナって風見鶏にいるE級の女な」

知ってる。あと、女っていうか女の子ね。たぶん年下だと思う。

「今度話しかけてみようかなぁ」
「いいんじゃね?アイツ、カイトがかわいいって言ってたから話しかけたら大興奮するんじゃね?」
「ぇ。なんだそれ」
「知らね。女ってすぐかわいいって言うしよくわからん」

帰り支度が出来たので移動開始だ。森を出るまでは周囲の警戒も怠らない。俺は魔力を見れば獣の接近にはすぐ気づけるんだけどね。でも訓練だから魔力は見ずに警戒方法を習いながら移動する。
街道に出てからはちょっとくらいはおしゃべりしても大丈夫。
2人は依頼報酬のうち必要な分を除いた余分を風見鶏に入れてるんだそうだ。だからちょっとでも報酬を上げたいって。偉いなー。
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