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2章
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すごいぬくぬく。
そしてすっぽりはまってる安心感。
例えばソファの背もたれと座面の間のいい感じの隙間にはまったときのような。ぎゅっとなってるけど硬くはなくて、ちょっと苦しい具合がかえっていい。でも、お腹空いた。
「起きたか?」
声が甘いってどういうことかと思うけど、そうとしか言いようのない声がして、俺は寝る前の事を一瞬で思い出して硬直した。
そうだった。俺、ギィに告白されてキスまでしちゃったんだったっ。それもいっぱい…。全然嫌じゃなかったし、なんなら強請ったくらいかもしれない。
「ほら、固まってないで顔上げろ。
おはよう、カイト」
ギィは当たり前みたいにキスをした。口に。
チュッて軽いやつだったけど、今までそんなおはようのキスなんてしたことなかっただろ!?
「昨日のことは覚えてるな?」
「な、な、な」
思わせぶりに左手のお守りを撫でられて一気に顔に熱が集まる。
「ギルド証受け取りに行かないとな?」
「あっ、ギルド証。そう、そう、合格、合格したし!」
抱きしめられてたギィの腕から飛び出すみたいに離れて、あわあわ支度しようとする俺に笑ったギィは
「全力で口説いていくから覚悟しとけよ」
って、爽やかに宣言した…。
まずは俺の着替えを買いに来た。
ギィの洗浄魔法で着たままきれいになるから洗い替えはいらないんだけど、きれいになってるとしても毎日同じパンツなのもな。って感じだし、破れは洗浄魔法じゃ直せないから着替えは必要だ。
俺の物を買うお金は魔王が用意してくれた。魔王領にいた間、畑の作業をしたりハクの手伝いをしてたのを仕事として、冒険者に依頼した時くらいの報酬を付けてくれた。使う事がないから貯まる一方だったそのお金は、ギィが預かってくれてて俺の色々を買う時にそこから払うことになってる。
で、只今服屋でギィが暴走中。
今着てる冒険者の服はギィとルークが用意してくれたやつ。シャツとズボンと靴がギィでマントがルークらしい。ギィはその時の店に俺を連れて来た。
「これもいいな。あっちのと重ねて着るのも良さそうだ」
「こちらなどもお似合いになりそうですけど。ちょっとタイトすぎますでしょうか」
「そうだな…カイトの華奢さが強調されて危ないかもしれん」
「そうですよね。ではこれは却下で」
危ないってなんだよ!
後、こっちの服って基本的に黒、茶、白で形も大体同じ。女性用と子供用はもうちょっとカラフルだけどそれでも日本にあった程の種類はない。しかも俺に合うサイズなんてすごく少ない。俺にはどれもあんまり違いがわからないんだけど、ギィとお店のお姉さんはさっきからアレでもないコレでもないと吟味している。
「最初にお話を伺った時にはそんなに小柄…んんっ、お可愛らしい方がいらっしゃるものかと思いながらお選びさせていただきましたけど、実際にお会いしましたら!えぇ!もぅ!想像以上で!腕がなります!」
びったりな物を必ずご用意いたします!ってお姉さんはすごくいい笑顔だった。あと、俺に対する「お可愛らしい」は褒め言葉とは認められん!
「よし、これを試着だ」
ようやくギィのお眼鏡に適う一式が見つかったようだ。
渡された服を持って試着室に入る。ギィ、なんで当然のように一緒に入って来ようとするんだ!?1人で着替えられるから!
着替えながらふと鏡を見てそれに気づいた。
神様の印、形が変わってないか!?ただの大きめの丸だったはずなのに、なんか上向きに尻尾が生えてオタマジャクシみたいになってるんだけど!?
「ギィ…」
怖くなって小さい声しか出なかったけど側にいたみたいでギィはすぐ気づいてくれた。
「…どうした。」
俺の声の調子で何かあったとわかったのか、少し険しい顔でギィが覗いて印の変化にすぐ気づいた。
「痛みや違和感はないな?特に悪そうにも見えないが、成長するのか?ひとまず魔王に連絡しておこう。調べて何かわかれば教えてくれるだろう」
大丈夫だ、俺がついている。って頭を撫でてもらってちょっと落ち着いた。あの神様はそんなに悪いやつじゃないと思う。前回心配のあまり大泣きだったし。わからないこと悩んだってどうしようもないしな。
ギィ、どさくさに紛れて首筋にキスするのはやめろ!
外では嫌そうだったから我慢してたけどここなら誰もいないからいいかと思った。じゃない!
試着した服は鎖骨が見えるのがダメだってことでインナーがハイネックタイプに交換された以外は全部お買い上げになった。
お店のお姉さんはギィに俺のサイズの品揃えを増やしておくのでまた是非一緒にお越し下さいって言ってた。
そしてすっぽりはまってる安心感。
例えばソファの背もたれと座面の間のいい感じの隙間にはまったときのような。ぎゅっとなってるけど硬くはなくて、ちょっと苦しい具合がかえっていい。でも、お腹空いた。
「起きたか?」
声が甘いってどういうことかと思うけど、そうとしか言いようのない声がして、俺は寝る前の事を一瞬で思い出して硬直した。
そうだった。俺、ギィに告白されてキスまでしちゃったんだったっ。それもいっぱい…。全然嫌じゃなかったし、なんなら強請ったくらいかもしれない。
「ほら、固まってないで顔上げろ。
おはよう、カイト」
ギィは当たり前みたいにキスをした。口に。
チュッて軽いやつだったけど、今までそんなおはようのキスなんてしたことなかっただろ!?
「昨日のことは覚えてるな?」
「な、な、な」
思わせぶりに左手のお守りを撫でられて一気に顔に熱が集まる。
「ギルド証受け取りに行かないとな?」
「あっ、ギルド証。そう、そう、合格、合格したし!」
抱きしめられてたギィの腕から飛び出すみたいに離れて、あわあわ支度しようとする俺に笑ったギィは
「全力で口説いていくから覚悟しとけよ」
って、爽やかに宣言した…。
まずは俺の着替えを買いに来た。
ギィの洗浄魔法で着たままきれいになるから洗い替えはいらないんだけど、きれいになってるとしても毎日同じパンツなのもな。って感じだし、破れは洗浄魔法じゃ直せないから着替えは必要だ。
俺の物を買うお金は魔王が用意してくれた。魔王領にいた間、畑の作業をしたりハクの手伝いをしてたのを仕事として、冒険者に依頼した時くらいの報酬を付けてくれた。使う事がないから貯まる一方だったそのお金は、ギィが預かってくれてて俺の色々を買う時にそこから払うことになってる。
で、只今服屋でギィが暴走中。
今着てる冒険者の服はギィとルークが用意してくれたやつ。シャツとズボンと靴がギィでマントがルークらしい。ギィはその時の店に俺を連れて来た。
「これもいいな。あっちのと重ねて着るのも良さそうだ」
「こちらなどもお似合いになりそうですけど。ちょっとタイトすぎますでしょうか」
「そうだな…カイトの華奢さが強調されて危ないかもしれん」
「そうですよね。ではこれは却下で」
危ないってなんだよ!
後、こっちの服って基本的に黒、茶、白で形も大体同じ。女性用と子供用はもうちょっとカラフルだけどそれでも日本にあった程の種類はない。しかも俺に合うサイズなんてすごく少ない。俺にはどれもあんまり違いがわからないんだけど、ギィとお店のお姉さんはさっきからアレでもないコレでもないと吟味している。
「最初にお話を伺った時にはそんなに小柄…んんっ、お可愛らしい方がいらっしゃるものかと思いながらお選びさせていただきましたけど、実際にお会いしましたら!えぇ!もぅ!想像以上で!腕がなります!」
びったりな物を必ずご用意いたします!ってお姉さんはすごくいい笑顔だった。あと、俺に対する「お可愛らしい」は褒め言葉とは認められん!
「よし、これを試着だ」
ようやくギィのお眼鏡に適う一式が見つかったようだ。
渡された服を持って試着室に入る。ギィ、なんで当然のように一緒に入って来ようとするんだ!?1人で着替えられるから!
着替えながらふと鏡を見てそれに気づいた。
神様の印、形が変わってないか!?ただの大きめの丸だったはずなのに、なんか上向きに尻尾が生えてオタマジャクシみたいになってるんだけど!?
「ギィ…」
怖くなって小さい声しか出なかったけど側にいたみたいでギィはすぐ気づいてくれた。
「…どうした。」
俺の声の調子で何かあったとわかったのか、少し険しい顔でギィが覗いて印の変化にすぐ気づいた。
「痛みや違和感はないな?特に悪そうにも見えないが、成長するのか?ひとまず魔王に連絡しておこう。調べて何かわかれば教えてくれるだろう」
大丈夫だ、俺がついている。って頭を撫でてもらってちょっと落ち着いた。あの神様はそんなに悪いやつじゃないと思う。前回心配のあまり大泣きだったし。わからないこと悩んだってどうしようもないしな。
ギィ、どさくさに紛れて首筋にキスするのはやめろ!
外では嫌そうだったから我慢してたけどここなら誰もいないからいいかと思った。じゃない!
試着した服は鎖骨が見えるのがダメだってことでインナーがハイネックタイプに交換された以外は全部お買い上げになった。
お店のお姉さんはギィに俺のサイズの品揃えを増やしておくのでまた是非一緒にお越し下さいって言ってた。
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