上 下
27 / 87
1章

27

しおりを挟む
寝台から出てソファセットに座る。
俺の両隣にルークとギィ。向かいに魔王を挟んでタチとヘキ。
ギィが俺の腰に腕を回したまま離さないので微妙に座りにくいんだが。
ルークはそれを見てニヤニヤしながら口パクでよかったなって言ってきた。
やめろ。顔が熱くなるだろ!

「カイト、すまなかった」

全員が座った途端タチが謝ってくる。
待って待って。

「なんでタチが謝るの!?俺こそごめんなさい。連れて行ってって自分から言ったのに何もできなくて倒れて」
「カイトは悪くない」
「ちょっ、ギィ!俺が」
「俺もカイトは悪くないと思う」
「っっ!ルーク!」
「いや、いきなり連れて行ったのは間違いだった。木剣もそこそこできるようになったし、本人もやる気だからと確認を怠った私の責任だ」

しらーっとした目でタチを見ているギィとルークから冷気が漏れてる気がする…。
どうしよう。と魔王に目で助けを求める。

「止めなかったわたしにも責任はあるのだけども、少し言い訳をさせてちょうだい。カイトが生き物の死骸を見たり、例えば皮を剝ぐとかの作業ができないかもしれない可能性は考えていたのよ?サトがそうだったから。ただカイトはサトと違って戦闘にも積極的だったから個人差かと思ったのよね」

サトさんは最初から武器を持って戦ったり狩りをすることはできない。と言っていたそうだ。獲物の処理もしたくない。自分の居た環境は直接自分で動物を殺して肉にするようなことはなかったから、自分には耐性がなくできない。と。だから俺がここで暮らすようになってハクに料理を習い始めると肉は全て処理済みの物だけを調理場に用意するようにしていたらしい。

「ただカイトはサトと違って体術も武術も積極的に取り組んで、木剣を渡したときは大喜びだったって聞いてたしね」

そう。確かに大喜びだった。かっこいい!って。向こうじゃ触ったこともなかったし。

「本人も狩りに行きたいって言っていたし、釣りは問題なくできたんでしょう?」

確かに。前回ルークが来た時に釣りに連れて行ってもらった。森の中の川で見たことない魚がいっぱい釣れてその場でもらったばかりのナイフで捌き方も教わった。持って帰った魚は晩御飯にみんなで食べた。川の中の魚も魔力で見たら位置がわかるってことに気づいて、次回は網も持って来ようって、すごく楽しかった。

「だから大丈夫かと思ったのよね」
「…釣りは楽しかったのか?」
「うん…すごく楽しかった」
「そうか。じゃあ次は俺と行こう「ギィ、それ今する話じゃないだろ」な」

サトさんはやっぱり大人だ。色んなことが考えられてちゃんと現実として想像できてる。
俺はまだまだ子供だ。考え方が幼稚なんだ。

「俺、俺も戦うとか狩りとかやったことなくて、サトさんと違ってちゃんとわかってなくて、ゲームとか映画とかそういう空想の世界でしか見たことなかったのにかっこいいって思ってて。それで連れて行って欲しいってお願いしちゃって。本物は血が出て痛そうで…俺、ダメだった」

ごめんなさい。って呟くと、俯いた俺のつむじにギィが頬ずりしてくる。
膝の上で握りしめた拳をルークがとんとんと叩いてくれる。

「俺、練習してもできるようになれると思えない。俺、冒険者にはなれない」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた! ※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。 特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。 毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。 そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。 無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

転生したので異世界でショタコンライフを堪能します

のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。 けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。 どうやら俺は転生してしまったようだ。 元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!! ショタ最高!ショタは世界を救う!!! ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!

処理中です...