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1章

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ヘキと体術の稽古中だ。
体術では相手の力を利用して投げ飛ばしたりする練習。俺の体格じゃあこっちの人を倒すことは出来ないから捕まらない練習、押さえ込まれない練習をしてる。
ヘキは大きいくせに動きが早くてなかなか逃げられない。向かい合った状態から距離を取る為に下がろうとした足を掴まられて仰向けにひっくり返った視界にギィが入って、俺は動きを止めた。

「…ギィだ」
「カイト。頑張ってるな」

逆さまの視界に俺を覗き込むギィが見える。
最初の時と同じ様な冒険者の服。腰に剣が下がってる。

「いつ着いたの!?えっ?ずっと見てた??」
「さっき着いたところだ」

ちょっと見てただけだ。と、俺を起こしながら笑う。

「毎日稽古してるからだいぶ体力がつきましたよ。どんなに投げられても諦めないしな」
「ほぅ。そうか。俺と一度やってみるか?」
「いいな!カイト、上位冒険者の力を体感しとけ」

えぇ…。来ていきなりすることがそれなの?
でもギィの力はちょっと興味ある。力持ちなのは知ってるけどスピードもあるのかな?

ギィは腰の剣を外してマントを脱いだ。
やる気マンマンだな。
よし!俺も毎日の稽古の成果を見せてやる!

3メートルくらいの距離でギィと向かい合う。
ギィは普通に立ってるだけに見える。とりあえず距離を取ろうとした瞬間俺は仰向けに倒れてギィに押さえ込まれてた。
スピードも速かったんだろうけど、予備動作が全く見えなかった。自分の状態が一瞬わからなくて放心してしまったけど、はっと気づいて押さえ込みから脱出すべく全力でもがき始める。

押しても引っ張っても体をくねらせてもギィの体は全く動かない。
息が切れてとうとう力が抜けて手を離してギィの顔を見ると、至近距離からこちらを凝視していたギィの目は今まで見たことのない表情を浮かべてた。
なんだろう。熱い?何かを耐えてる感じ?

「…ギィ?」
俺が声をかけるのと同時にヘキが手を叩いて見つめ合っていた視線が切れた。

「カイト、まだまだだな!」
「構えた姿勢も距離を取る判断もよかったと思うぞ。相手の動きを見ようとしすぎて遅れてる気がするな」

手を引いて起こしてくれながら言うギィからは、さっきの雰囲気はもうない。
なんだったんだろなー。

「今日はここまでにしとくか。
ギィ殿も荷物を置いてゆっくりするといい。昼までカイトと散策でも行って来ては?
ギィ殿が来られるのを楽しみにしてたようですし。
な、カイト」

ニシシって感じで笑うヘキにむむってなるけどギィと散策に行けるのは嬉しい。

「ギィ、休憩する?」
「いや、魔王に挨拶をしたらすぐ出れるぞ」
「じゃあ駱借りて来る!まだ俺1人で乗れないんだけどいいかな?」
「あぁ。行き先はカイトが決めてくれ」
「わかった!ここに駱連れて来とくから!」

急いで獣舎に行って準備しないと!

「あー、必死で走っていきましたね。無自覚で煽って来るのがタチが悪いですな!ははっ」
「久しぶりに会えて俺も浮かれていた様です。押さえ込まずとも他の方法もあったのに触れられるチャンスと思ってしまった。自制が足りてなくて困ったものです」
「はははは!ギィ殿も苦労しますな!」
「はぃ、全くです。カイトがかわいいのが悪い」
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