異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

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1章

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この世界には魔力が満ちているらしい。
生き物には全て魔力があって、魔力が酸素みたいに生きていくのに必須の成分のひとつなんだそうだ。

「カイトの国には魔力がないんでしょう?
今まで馴染んでないから異物感で、カイトの場合は見えちゃってるんだと思う」

馴染んだらそのうち見えなくなるんじゃないかな。だそうだ。

この世界でも生まれたときは魔力は持ってなくて、魔力を溜める器官に徐々に溜めていく。空気中の魔力を吸ったり皮膚からも吸収するし、食べ物に含まれる魔力も溜まる。そうやって1才くらいから魔法が使えるようになるらしい。

魔法!
まじか!

一度魔法が発動するくらい溜まったら、後は意識して摂取しなくても大丈夫。体調が悪いときに魔力多めの食べ物を食べるくらいだそうだ。
ちなみに死んだら体内の魔力は抜けて無くなるそうです。

「食べ物の魔力はどんな風に感じるの?」
「えーっと、熱い感じ。です。火傷するほどじゃないけど飲み込むときに熱く感じます」
「魔力に反応していたのか…。
最初に水を飲ませたときに様子がおかしかったが体調が悪くなるようでもなかったし、携帯肉は硬そうにしていたが普通に食べていたから水分かと思っていた」
「森の果実にも反応してたけど、好きそうだったしね」

ギィもルークも何も言わないけど観察してたんだな…。

「携帯肉に苦労していたから肉を狩ってもよかったんだが、水分に反応しているなら確認してからが良いかと控えていた。魔力が原因なら食べさせなくて正解だったな…」

食べ物の魔力は、植物より動物の方が多くて新鮮なほどたくさん含まれているらしい。死んだら抜けていくからね。
あと血とか内臓は魔力多め。赤ちゃんは母乳で魔力を効率良く摂取して溜めるそうです。

「さすが上位冒険者。出会ったのがこの2人でカイトは運が良かったね。サトはすっごく苦労してたから」

サトと言うのが、魔王が会ったことのある俺と同じ日本人らしい人。魔王に会うまで1ヶ月以上1人で森に居て力尽きて倒れてるとこをたまたま通った魔王が拾ったとか。
その人はどうやってここに来たんだろう。
何もわからない状態で1人で居たその人を俺は尊敬する。宿木の下でギィに会わず、怖くて不安でどうしたらいいかわからなかったあの時があれ以上続いたら、俺は耐えられなかったと思う。

「あの、その人は今は…?」
「元気にしてるよ。伴侶見つけて一緒にそいつの国で暮らしてる。今はもう魔力にも慣れて普通に過ごせてるから、カイトもきっと大丈夫!」

サトさんは帰らずにこっちで暮らしているのか…。
俺みたいに帰れないのか、帰れるけど結婚したから帰らなかったのか、どっちなんだろう。
会って色々聞いてみたいけど…。

俺の顔を見て思っていることがわかったのか、眉を下げた魔王はごめんね。と言った。

「会ったらサトも喜ぶと思うんだけど、暮らしてる国っていうのが遠くてその上他国と交流してない国で行ったり来たりが難しいんだよね。
いつか機会があったらってことで…ごめんね」
「いえ…大丈夫です」

がっかりして俯いた俺の頭をギィがそっと撫でてくる。ルークも肩を軽く叩いてくれた。
慰めが心に沁みる…。

「あ、カイトはお風呂好き?
サトはお風呂大好きでしょっちゅう入ってたけど、カイトも入る?」

!!
お風呂!あるのか!
こっち来てからずっと入ってなくて、めちゃくちゃ気になってた。
途中の川でもギィが入ったりしてる様子もなかったし、不思議とべたべたしたりしないからそのままにしてたけどあるなら是非とも入りたい!
あー、でも話の続きも気になる!

迷う気持ちが顔に出ていたのか、晩御飯の後に話をする時間を取ってくれることになった。

まずはお風呂で疲れを癒してちょっとお昼寝でもしてらっしゃいって。

「水が良くないかと思って水浴びもさせてなかったんだが、そんなに好きなら少しくらいさせておけばよかったか…」

ギィ、気にすんな!
今から入れるなら問題ない!

お風呂にはハクが案内してくれるってことで、俺はウキウキしながらお茶会の席を抜けた。
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