異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

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1章

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降ろされようとしているのに気づいて、目が覚めた。で、普通に目を開けてしまい、眩しさに悶絶する羽目に…。

俺の学習能力どこいった…。

「今日はここで野営する。
少し離れるが、そのままここを動くなよ」
「うー…わかりました」

そう言ってギィは両手で目を押さえてうめく俺を、地面にそっと降ろす。

ギィもルークも静かに動くというか、気配が薄いから、聴覚だけだと居るのか居ないのかが、よくわからない。

1人ぼっちになった様な気がして、じわじわ不安が湧いてきて、俺は俯きながらそっと薄目を開けて周りを窺ってみた。

今は早めの夕方くらいの時刻のようだ。
開けた場所という訳でもなく、移動中にそのままその場に止まったかのような、森の中。
ここが野営に適しているのか俺にはさっぱりわからないけど、冒険者の2人がここでって言うならここがいいんだろう。

相変わらず周りは薄ら光ってるし、粒々も飛んでる。これから暗くなってくるとますます眩しくなってくるだろう。
視界の隅に入ってくる光で、ギィが少し離れた木の根元にいるのを確認する。
ルークは見える範囲には居ない。

軽い感じで村まで送るって言われたから今日中に着くんだと思ってた。
明日には村に着けるだろうか。
村に着いたらまず働き口を探して、家はお金が手に入るようになってからだよな…。食料はすぐ必要だし、賄いつきの仕事なんてあるかな。飲食店?料理なんてしたことないけど掃除とかできそうな事で雇ってもらわないと。
村は眩しくないといいな…。
ここに来たのが俺でほんとによかった。小学生の弟たちだったら働くなんてできないし、生きていけないとこだった。

いや、俺だって生きていけるかわからないけどな…
思考が落ち込みそうになったとき、ギィが近づいて来たのに光で気づいた。

「疲れたろうから、楽にしておけ。
火は焚かないからまた携帯食になるが、暗くなる前には食べて、すぐに寝ろ
「あの…ルークは?」
「あぁ、周りを見に行ってるだけだ、すぐ戻る」

俺の横の少し後ろ側、視界に入るギリギリの場所に座りながら、ギィが言う。

「カイトは16才だったな。国ではどんな事をしていたんだ?家族は?」
「学生です。学校に行って勉強するのが仕事…みたいな。家族は父と母と弟と妹です」
「勉強するのが仕事か。こちらでは16才だと皆働いている年だな」
「あの、村には俺でもできる仕事ってあるでしょうか?」
「村では店自体が少ないし人を雇ってるようなところはないな。手伝い程度の仕事ならあるかもしれないが…。村より規模の大きい街へ行けば人を雇っている店も多いがそういうところは身元の確認があることが普通だな」
「そうですか…」
「あとは冒険者だな。冒険者は身元の確認などはない。ただ、戦える力が必要だ。訓練次第で身に付けることはできるぞ。
まぁ、まずは言葉づかいは普通にしろ。この辺りでお前の年でその言葉づかいの奴はいない。要らない詮索をされることになりかねんから気をつけろ」

仕事を探すのは大変そうだ。
先行きが不安過ぎて泣きそうだけど、出来ることからやらないと。

「さっき光ってると言っていたが、俺たちが光って見えるんだよな?
他はどうだ?」
「木も葉っぱも草も、ギィたちほどじゃないけど光ってる。空気中にも小さい粒々がいっぱい光って浮いてる。
村でも光ってるのかな…?」
「光って見える。か。俺には光って見えるものはないな…」
「ずっとだから、頭が痛くなってきて…」
「だろうな。
目を閉じ続けるのも難しいだろうし、布を巻いておくのはどうだ?少しは眩しさが軽減されるんじゃないか?
無意識に開けてしまったときのダメージも少なくなるだろうしな」

最後の一言はちょっと揶揄う感じで付け加えられて、俺の意志力っていうか学習能力っていうかをいじられた感じだったけど、学校で仲の良い友達と揶揄い合うような雰囲気で全然嫌な気分にはならなかった。
言われてみれば確かにそうだ。
Tシャツを破いて巻くかと考えていると、ギィが身じろぎし、大きな乾いた手のひらが、後ろからそっと前髪を掻き上げてきた。

「巻いてやるから、じっとしてろ」
「あ、ああ、ありがと」

担がれた時には掴まれたし、こちらからも体に触っていたけれど、気づかうように触れられることに妙にドキドキして照れてしまう。
布を結び終わっても何も言わないギィに、話しかけられずソワソワしているところに、ルークが戻ってきた。
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