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1章

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「おぃ、どうした?」

突然かけられた男の声に、飛び上がらんばかりに驚いた。
本当に座ったまま飛んでたかもしれない。

どれぐらい座り込んでいたのか、でも、絶対寝てはいなかった。目はつぶってたけどこれからを考えて頭はフル回転してたし、心臓の動悸も全然おさまってなかった。
むしろ、耳だけで周りを窺ってたくらいだ。
なのに、全く気がつかなかった。
いくら草地だと言っても、近づいて来る足音が聞こえない訳ないのに、その声はすぐ側から聞こえた。
でもその時は、そんな不自然に全く気づけず、ただ人がいたことに安心して、顔を上げた。

「…あのっ、俺…!お…れ…」
「大丈夫か?」

見えたのは…
3mくらいの距離にいる、もの凄く発光している人型の何かだった。

「っ!!!?」

何、なんだなんだ、なんだあれ?
エイリアンか!?
逃げないと!やばいやばいやばい!!
頭の中は、誘拐で人体実験でチップを埋め込まれる!でいっぱいになって、すぐさま逃げ出そうとしたものの、ずっと縮まって座り込んでた足は持ち主の命令に従えず…。

「待て。何もしないから、ここから離れるな」

立ち上がる事も出来ずに、それでも膝で這って逃げ出そうとした俺を、エイリアン?は襟首を掴んであっさり捕獲した。

「落ちつけ。
いいか?大丈夫だから。
危害を加えることはない」

後ろから襟首を掴まれても必死で抵抗してる俺に、何度も声をかけながらゆっくりとしゃがみ込んだらしい、発光した人型の何か。

俺は、体力を全て使い切って荒い息をするしか出来なくなってへたり込んだ。息を吸ったら、粒々を吸い込むかもしれないなんて考えることもできない程ヘトヘトで、心臓は痛いし、そいつは眩しいし、もう死ぬんじゃないかとか、勝手に涙は出てくるし、体はガクガクで抵抗する気力も残ってなかった。

「落ちついたか?落ちついたな?
手を離すが、動くなよ?
俺の言っていることは、わかるか?」

ゆっくりと話しかけられて、離して欲しくて必死に頷く。
そっと手を離されて、恐る恐る振り向いた。

眩しっ!

そいつは、ギリギリ手が届くくらいの場所にしゃがんでこちらを向いているようだったが、直視出来ない眩しさに、慌てて顔を背けて目をつぶる。
見てないと怖い、でも眩し過ぎて見ると頭というか目玉の奥というかがズキズキしてくる。

「1人か?何処から来た?
ケガはないな?」

低く落ち着いた声音からは、危害を加えられそうな雰囲気は感じられなかった。
俺は四つん這いのままだった姿勢を、そっと体育座りに戻す。顔は反対を向いたままだけどな!

「……ケガは無いです…」

1人であることを教えてもいいかわからず、何処から来たかはもっとわからず、でも、こちらを気づかう様子を感じさせる問いに無視することも出来ずに小さな声で答える。

「よし。
俺は冒険者だ。連れとはぐれたのか?
こんな所で知らない人間といるのは不安だろうが、危険だから宿木からは離れるな。
宿木の側は獣も襲ってこないし、人間も争うことはしない。
怖いならそっちを向いたままでいいから、宿木からは離れないようにしろ。
いいな」

冒険者。宿木。
馴染みのない言葉に不安はますますわいてくる。
怖がって顔を背けてると思われていることが癪に触るけど、眩しいからだなんて言い返すことはできない。相手が何で怒りだすかはわからないんだ。

発光している男はしばらく俺の反応を窺っていたようだが、動かないと判断したのかそのまま座って荷物を開けているようだ。
安全だって言っていたこの場所でキャンプするんだろうか。
不安だし眩しいし、できれば離れたいけど詳しそうな人?の言葉を無視して森に入る勇気もでずその場で膝に顔を埋める。

この森も、光ってることも、男の話も、考えれば考えるほど信じたくなかった現実を突きつけてくる。

ここは俺が知ってる所じゃない。
裏山じゃないし日本でもない。
光ってる人なんて地球にもいない。

ここは…神様が言ってた通りの『違う世界』でその通りだったら俺はもう帰れないんだ。

涙が滲んでくるけど、泣いているのがバレるのは嫌で精一杯息を押し殺して膝に強く顔を押しつける。
そのまま耳で周りを窺っていたはずが、張りつめていた神経は限界でいつのまにか眠ってしまっていた。
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