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過ちー松本sideー
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ピンポンピンポンピンポンピンポン
けたたましいインターホンの音に少し顔を上げる。
凛が出て行ってから何時間経っただろうか。
ソファから一歩も動くことができず、眠くなることもなく、ただずっとそこに座っていた。
ロビーで抱きしめた凛の温もりがまだ残っている。小さくて、柔らかくて、暖かい、愛おしい人。
何もかも捨てて、全てを凛に打ち明けて、縋ってしまおうかと思った。
優しい凛なら、きっと俺を拒否なんてできないだろう。同情でもいい。
だけど、責めるよりもなによりもまず俺の体調を心配する凛を目の当たりにして、自分の汚さに吐き気がした。
ーーー汚してはいけない。
ーーー俺は凛に、相応しくない。
自分を戒めるためにも、あえてきつい言い方をした。
凛の表情を見て胸が痛んだが、これでいいんだと思った。
ガチャ……
ようやくドアを開けると同時に、東條が物凄い剣幕で詰め寄る。
「お前!!!凛に何を言った!!!」
襟元を掴まれ、壁に押さえつけられる。
「はやく言え!!何を言ったんだ!!!」
ここまで本気で怒っているところを初めて見た。襟元を掴むその手は震えている。
「…見合いで、結婚すると伝えました。」
「っ、?!な、何の話だ?嘘だよな?」
「…嘘じゃないです。」
「っっなんで、、なんで急に、そんな、、」
急な話に動揺しつつも、怒りが収まらない様子の東條。
「前々から話はあったんです…今まではかわしてきてましたが…自分の気持ちの整理をつけるためにも、ちょうどいいかと…」
気持ちの整理なんてつくはずもないが…
これで東條も、凛と二人の、誰もから祝福される未来に進める。
「俺が凛の側にいると、凛は本当に幸せにはなれないから…。遊びはもう…お終いにしようと言いました…」
「?!!おまっ、大馬鹿野郎!!!」
ゴッーーー
右頬に衝撃を感じて床に倒れ込む。
見上げると、怒りに満ちた目には涙が浮かんでいた。
「もっと、、別の伝え方があるだろう?!!あいつ、ショック受けて、この寒空、大雨の中…何時間も…」
東條の言葉の意味を悟り、血の気が引いていく。
「っ、あ、あなたを、呼ばなかったんですか…?!」
「どうやって辿り着いたのか…家に戻ってきた頃にはもう意識もなかったんだぞ!!」
自分の過ちに体が震えだす。
ーーーなぜもっと配慮できなかったのか
ーーー凛のためにと言いながら、自分のことしか考えていなかったのではないか
ーーー凛に何かあったら…
「り、凛は?凛は今?!!」
「…っ病院だ、救急車で搬送された」
反射で立ち上がりドアに向かうが即座に腕を掴まれる。
「お前に行く権利なんてねぇよ!!!」
「、、、っ、、、、」
再び怒鳴りつけられ、足が止まる。
「お前みたいな軟弱野郎に凛は渡さない。…自分のやったことを、一生一人で後悔してろ。」
ドアが勢いよく閉まり、静寂で孤独な空間に一人取り残される。
全身の力が抜けてその場に崩れ落ち、動くことができなかった。
けたたましいインターホンの音に少し顔を上げる。
凛が出て行ってから何時間経っただろうか。
ソファから一歩も動くことができず、眠くなることもなく、ただずっとそこに座っていた。
ロビーで抱きしめた凛の温もりがまだ残っている。小さくて、柔らかくて、暖かい、愛おしい人。
何もかも捨てて、全てを凛に打ち明けて、縋ってしまおうかと思った。
優しい凛なら、きっと俺を拒否なんてできないだろう。同情でもいい。
だけど、責めるよりもなによりもまず俺の体調を心配する凛を目の当たりにして、自分の汚さに吐き気がした。
ーーー汚してはいけない。
ーーー俺は凛に、相応しくない。
自分を戒めるためにも、あえてきつい言い方をした。
凛の表情を見て胸が痛んだが、これでいいんだと思った。
ガチャ……
ようやくドアを開けると同時に、東條が物凄い剣幕で詰め寄る。
「お前!!!凛に何を言った!!!」
襟元を掴まれ、壁に押さえつけられる。
「はやく言え!!何を言ったんだ!!!」
ここまで本気で怒っているところを初めて見た。襟元を掴むその手は震えている。
「…見合いで、結婚すると伝えました。」
「っ、?!な、何の話だ?嘘だよな?」
「…嘘じゃないです。」
「っっなんで、、なんで急に、そんな、、」
急な話に動揺しつつも、怒りが収まらない様子の東條。
「前々から話はあったんです…今まではかわしてきてましたが…自分の気持ちの整理をつけるためにも、ちょうどいいかと…」
気持ちの整理なんてつくはずもないが…
これで東條も、凛と二人の、誰もから祝福される未来に進める。
「俺が凛の側にいると、凛は本当に幸せにはなれないから…。遊びはもう…お終いにしようと言いました…」
「?!!おまっ、大馬鹿野郎!!!」
ゴッーーー
右頬に衝撃を感じて床に倒れ込む。
見上げると、怒りに満ちた目には涙が浮かんでいた。
「もっと、、別の伝え方があるだろう?!!あいつ、ショック受けて、この寒空、大雨の中…何時間も…」
東條の言葉の意味を悟り、血の気が引いていく。
「っ、あ、あなたを、呼ばなかったんですか…?!」
「どうやって辿り着いたのか…家に戻ってきた頃にはもう意識もなかったんだぞ!!」
自分の過ちに体が震えだす。
ーーーなぜもっと配慮できなかったのか
ーーー凛のためにと言いながら、自分のことしか考えていなかったのではないか
ーーー凛に何かあったら…
「り、凛は?凛は今?!!」
「…っ病院だ、救急車で搬送された」
反射で立ち上がりドアに向かうが即座に腕を掴まれる。
「お前に行く権利なんてねぇよ!!!」
「、、、っ、、、、」
再び怒鳴りつけられ、足が止まる。
「お前みたいな軟弱野郎に凛は渡さない。…自分のやったことを、一生一人で後悔してろ。」
ドアが勢いよく閉まり、静寂で孤独な空間に一人取り残される。
全身の力が抜けてその場に崩れ落ち、動くことができなかった。
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