異常性癖者たちー三人で交わる愛のカタチー

フジトサクラ

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おあそびはおしまいー凛sideー

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「ここって、、、?」

東條の家から車で15分ほど走り、シックな外観のいかにも高級そうなマンションの前に車は停まった。

「松本ん家。」
「へっ!えっ!」
「行ってこい、俺は帰るから。」

不機嫌そうにしながらも、凛の頭を撫でる手つきは優しい。

「ぁっ、あのっ、、なんで、、」
「なんでって…会いたかったんだろ?俺といてもずーっと松本のこと考えてるくせに。」
「ぅ、す、すみません、、」
「ったく…。ほら、御礼のキスは?」
「、、っっ、、」

半分冗談で言っているようだが、東條への感謝や愛おしさも募り、勢いで軽くキスをする。

「うん、、、、やっぱ、連れて帰るわ。」
「もうっ!社長のばかっ!」
「うそうそ。凛、多分あいつ、なんか背負い込んでると思うから、よろしくな。」
「……ぁ、はい…そうですね。」

東條も何となく松本が思うところあって距離をとっていることに気づいているのだろう。

「…俺は、お前が幸せならそれでいい。」
「え?」
「ほら、寒いから早く行け、風邪ひくなよ。」
「あ、はいっ、ありがとうございました、おやすみなさい」

どことなく表情が寂しげに見えて気にかかったが、問いかける間も無く片手を上げ颯爽と去っていってしまった。

ーーーせっかく連れてきてもらったんだから、松本さんに向き合おう。

一方的に距離を取られているため、急に訪ねることに不安と緊張が走るが、会いたい一心でインターホンを押す。

ピンポーンーーーーー

『ーーーーーー凛…』
「あっ、あのっ、すみません急にっ、社長に、連れてきてもらって…それで…あの…」
『中で待ってて、すぐ迎えにいくから』

インターホン越しに聞こえる松本の声に戸惑いと困惑の感情が感じられて、少し悲しくなる。

ーーーやっぱり迷惑だったかな、、、

立派なロビーのソファに腰掛け、冷たくされたらどうしようとネガティブスイッチが入る。
ぐるぐると悪い想像ばかりして涙が溢れ出てきたところに足音が近づいてきた。

「凛、どうしてここに?」
「ぁ、あのっ、ごめんなさい、、っ、」

会いたくて仕方なかったはずなのに、怖くて顔を上げられず、涙がどんどん溢れていく。

「なんで泣いてるの?おいで。」

驚きながらも凛を抱きしめて頭をぽんぽんと撫でるその手がいつものように暖かく優しくて、さらに涙が溢れてしまう。

「ひっく、っぅっ、うぅ~っ、、」
「よしよし、泣かないで。歩ける?とりあえずうちに入ろう。」

泣いていても意味がないのに、変わらず優しい松本に少し安心して手を引かれるままについていくことしかできない。

ーーー泣いてちゃ余計困らせるだけなのに。しっかりしなきゃ…

「ほら、ここ座ってて。お水もってくるから。」
「は、はぃ、、すみません、、」

顔を上げると、東條宅に負けず劣らずの立派な部屋と景色に驚く。
物が少ないからだろうか。無機質で冷たく、寂しい感じがする。

「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。あの、すみません、急に押しかけてしまって。」
「いいよ、社長に連れて来られたんでしょ?」
「はい、、でも、、その、、私が会いたくて…」
「そうか………」

困ったように微笑む松本に心が折れそうになるが、それよりも少し見ないうちにだいぶ痩せたように見えて驚く。

「松本さん、痩せた…?ちゃんと食べてるんですか?」
「ん?あぁ…大丈夫だよ。ちょっと忙しくてね。」

愛おしい頬に手を添えるが、やんわりとその手をどかされてしまう。
今までにない対応に心が傷つくが、意を決して問いかける。

「…松本さん、、どうして避けるんですか…?」
「………」
「もしかして…吉岡くんに何か脅されたりとか…」
「いや…違うよ、、」

見つめ合うその瞳はいつも通り優しくて、そしてどこか寂しげだ。

「じゃあどうして…?…もう、私のことはどうでもよくなりましたか…?」
「そんなことないよ。凛を大事に思ってる。」
「ならどうして急に…?」
「……………俺……結婚するんだ。」
「ーーーーっーーーー、、え?」

たった一文字、声を出すことが精一杯だった。
よく聞く言葉なのに、意味が全く理解できない。

「結婚するんだ、お見合いでね。実家と付き合いのある会社の御令嬢と。」
「……ぁ、、そ、そうなんですか…」

全身から、血の気が引いていくような感覚がする。

「うん。だからもう……お遊びはお終いにしないと。」
「……おあそび…?」

耳鳴りがして、今にも倒れそうになるのをやっとの思いで堪える。

「…凛も、この先みんなから祝福される恋をした方がいい。…東條なら、その相手に相応しいと思うよ。」

戸惑い、悲しみ、恥ずかしさ、悔しさ、怒り、…いろんな感情がうずめいて呼吸を狂わせる。

ーーー私は勘違いをしていたのね…

お互いに特別だと思っていた。愛し合っていると思っていた。

ーーーそう思っていたのは私だけだったんだ

松本の顔は見れなかった。
きっと私、酷い顔をしている。

「わ、わたし、帰りますね…」
「………っ、、」

それだけ言って、無我夢中で家を出た。
11月の寒空の下、こんな時に限って雨が降っている。
でも寒さなんて感じなかった。
何も考えることができず、ただただ雨の中、見慣れない住宅街をひたすら歩いた。
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