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同期の存在ー凛sideー
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「疲れたぁ」
西日に傾き始めた空を背に伸びをする。
週末に開院となるYグループの総合病院には、たくさんの人が行き来している。
外来などの受付は開院後からだが、既に近隣病院から多くの入院患者を受け入れているようだ。
今日は広告を兼ねた開院セレモニーがあったことから、マスコミの姿もまだチラホラみられる。病院関係者以外にも製薬会社や医療機器メーカーなど様々な関連会社の重役もお祝いに訪れるのが常で、東條と松本もそのために足を運んでいるのだ。
一方凛と吉岡は病院スタッフへの支援機器の使用方法や不明点についての最終フォローを任されていた。
導入が決まった何ヶ月も前から吉岡が何度も研修会を開催しているので、概ね業務遂行に問題はないレベルに達していることが確認でき、早めに撤収となった。
「堂坂、フォローありがとうな。いてくれて助かった。」
「ううん、年輩の看護師さん達も問題なく使用できてて安心した。吉岡くんの研修のおかげね。」
「紙カルテに慣れてるおばちゃん達に教え込むのは大変だったよ。」
やれやれと大袈裟にため息をつく彼に苦笑いが漏れる。
吉岡康介は凛の唯一の同期だ。まだ基本的に新卒を採用していなかった時代に、凛と同じく社長に直接志願して入社に漕ぎ着けている。
どこか掴み所がなく飄々としているが、仕事はできるし年上に愛される憎めない性格で、取引先からの信頼も厚い。
ついでに見た目もすらっと背が高く甘いマスクなため、年輩女性と年下の社員からも大人気だ。
異性として意識したことはないが、なんやかんや面倒見のいい吉岡には入社当初から助けられているし、お互いに切磋琢磨しながらやってきた同士のような存在だと凛は思っている。
療養期間中も何度も見舞いに来てくれていたが、東條宅に引っ越して以来直接会うのは今日がはじめてだ。
「っていうか、急に引っ越すなんてびっくりしたわ。」
「あー、ごめんね、何回も来てくれてたのに言うのが遅くなっちゃって。」
「幼馴染の家にいるんだろ?そんなやついたんだな。知らなかったよ。」
「はは、まぁね。ちょっとの間だけ、居候させてもらってて。」
まさか社長と一緒に暮らしてるなんて言えるわけもなく、仲の良い社員たちには適当な嘘をついている。
「幼馴染ってまさか男じゃないよな?」
「えっ?い、いや、違うよ」
「ふーん。ま、何か困ったらいつでも連絡しろよ。」
「うん、ありがと。あ、そういえば吉岡くん、マネージャー昇進おめでとう」
「おいおい今更かよ。やっと堂坂に並んだと思ったんだけどなぁ。秘書室に異動なんて、会社初だよな。」
「うん。長く休んじゃったし、復帰しづらくて辞めようかと思ってたんだけど、ありがたいことにね。」
「幹部に好かれてるもんな。特に松本さん。」
「えっっ、そ、そんなことないよっ。松本さん、皆んなに優しいし。」
唐突に松本の名が出て動揺するが、なんとか平然を装う。
「いや、、そうじゃないと思うけどな。堂坂はどうなの?松本さんのこと。」
「ど、どうって?」
「いや、好きなのかなぁと思って。会社でもよく二人で話してたし。」
「いやいやいやいや、、、」
好き。大好き。だけれど…
松本の想いを多少は感じつつも、やはり自信はないし、変に期待をして悲しい思いをしたくないという逃げの気持ちが勝ってしまう。
「違うならいいけど。あ、この後メシいくだろ?社長が奢ってくれるって。体調は大丈夫そうか?」
「あ、うん。行きたい。先に始めてよっか。」
「あぁ。お前は酒飲むなよ。弱いんだから。」
「へへ、わかってまーす」
西日に傾き始めた空を背に伸びをする。
週末に開院となるYグループの総合病院には、たくさんの人が行き来している。
外来などの受付は開院後からだが、既に近隣病院から多くの入院患者を受け入れているようだ。
今日は広告を兼ねた開院セレモニーがあったことから、マスコミの姿もまだチラホラみられる。病院関係者以外にも製薬会社や医療機器メーカーなど様々な関連会社の重役もお祝いに訪れるのが常で、東條と松本もそのために足を運んでいるのだ。
一方凛と吉岡は病院スタッフへの支援機器の使用方法や不明点についての最終フォローを任されていた。
導入が決まった何ヶ月も前から吉岡が何度も研修会を開催しているので、概ね業務遂行に問題はないレベルに達していることが確認でき、早めに撤収となった。
「堂坂、フォローありがとうな。いてくれて助かった。」
「ううん、年輩の看護師さん達も問題なく使用できてて安心した。吉岡くんの研修のおかげね。」
「紙カルテに慣れてるおばちゃん達に教え込むのは大変だったよ。」
やれやれと大袈裟にため息をつく彼に苦笑いが漏れる。
吉岡康介は凛の唯一の同期だ。まだ基本的に新卒を採用していなかった時代に、凛と同じく社長に直接志願して入社に漕ぎ着けている。
どこか掴み所がなく飄々としているが、仕事はできるし年上に愛される憎めない性格で、取引先からの信頼も厚い。
ついでに見た目もすらっと背が高く甘いマスクなため、年輩女性と年下の社員からも大人気だ。
異性として意識したことはないが、なんやかんや面倒見のいい吉岡には入社当初から助けられているし、お互いに切磋琢磨しながらやってきた同士のような存在だと凛は思っている。
療養期間中も何度も見舞いに来てくれていたが、東條宅に引っ越して以来直接会うのは今日がはじめてだ。
「っていうか、急に引っ越すなんてびっくりしたわ。」
「あー、ごめんね、何回も来てくれてたのに言うのが遅くなっちゃって。」
「幼馴染の家にいるんだろ?そんなやついたんだな。知らなかったよ。」
「はは、まぁね。ちょっとの間だけ、居候させてもらってて。」
まさか社長と一緒に暮らしてるなんて言えるわけもなく、仲の良い社員たちには適当な嘘をついている。
「幼馴染ってまさか男じゃないよな?」
「えっ?い、いや、違うよ」
「ふーん。ま、何か困ったらいつでも連絡しろよ。」
「うん、ありがと。あ、そういえば吉岡くん、マネージャー昇進おめでとう」
「おいおい今更かよ。やっと堂坂に並んだと思ったんだけどなぁ。秘書室に異動なんて、会社初だよな。」
「うん。長く休んじゃったし、復帰しづらくて辞めようかと思ってたんだけど、ありがたいことにね。」
「幹部に好かれてるもんな。特に松本さん。」
「えっっ、そ、そんなことないよっ。松本さん、皆んなに優しいし。」
唐突に松本の名が出て動揺するが、なんとか平然を装う。
「いや、、そうじゃないと思うけどな。堂坂はどうなの?松本さんのこと。」
「ど、どうって?」
「いや、好きなのかなぁと思って。会社でもよく二人で話してたし。」
「いやいやいやいや、、、」
好き。大好き。だけれど…
松本の想いを多少は感じつつも、やはり自信はないし、変に期待をして悲しい思いをしたくないという逃げの気持ちが勝ってしまう。
「違うならいいけど。あ、この後メシいくだろ?社長が奢ってくれるって。体調は大丈夫そうか?」
「あ、うん。行きたい。先に始めてよっか。」
「あぁ。お前は酒飲むなよ。弱いんだから。」
「へへ、わかってまーす」
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