冷めない恋、いただきます

リミル

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【Lesson.5】

新しい生活1

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そろそろ年が変わる。十二月に入り、朝には必ず暖房を入れるようになった。久住とは週末にどちらかの家で過ごすようになり、週二回欠かさず多希の職場へ通っている。

多希は人がはけた頃を見計らって、三好の元へ行った。小さな会社だから通勤や家賃の変更申請は、直接社長である三好へ提出できるのは楽だ。

「え? 多希くん引っ越しするの?」
「はい。まあ、ルームシェアといいますか……」

多希はつい浮かれて口走ってしまった。今週末、久住のところへ住まいを移す予定だ。

提案は久住からで、物置きとして使っている部屋を整理して、多希の部屋をつくると言ってくれた。久住の部屋がないことが気にかかったが、彼はリビングで十分だと多希に部屋を譲ってくれたのだ。

引っ越した後で服やら日用品を揃えがてら新調しようと思っているので、多希の部屋は段ボールだらけでもの寂しい。

通勤手当申請書の駅の名前を見て、何故か三好はにやついている。

「ここ、久住くんの家の近くだろ」
「な、なんで知ってるんですか……!」
「いやぁ……だって、生徒さんの住所は何となく覚えてるし」

多希の反応で交際していることを確信し、三好は書類を受け取った。と、同時に軽く溜め息を吐く。

「ということはやめちゃうのかなぁ。タダで多希くんのご飯食べられるんだからな」
「やめないそうですよ。もしかしたら、仕事が忙しいから週一に変更するかもしれませんが。……そのことについては、すみません」

貴重な週二回通いの生徒を減らすことについては、申し訳なく思う。三好は軽く「別にそれはいいけどさ」と、紙片をひらひらとさせながら言った。

「多希くんが退職しないでくれてよかったよー! それだけが気がかりだった!」
「……はい?」
「だって久住くん大企業勤めだし、多希くん一人養うくらいさぁ……」
「辞めませんよ。そんな簡単に。何でそんなに久住さんのこと知ってるんですか。仲いいんですか、久住さんと」

勘繰る多希に、三好は「申込書に書いてもらってるからね」と種明かしをする。裏でこそこそと多希のことを聞いていたり、久住に余計なことを吹き込んだものと思っていたから、勘違いに多希は顔を赤くした。


……────。


会社での手続きも無事終わり、週末は久住が荷物運びを手伝ってくれる。引っ越しといっても家電はほとんど処分してしまうため、持っていくものは少ない。何回かに分けて、久住の借りたレンタカーに詰め込んだ。

「休日にすみません。車まで。ありがとうございました」
「暇してたので大丈夫ですよ」

今日から久住と一緒の家に帰り、同棲がスタートするのだ。多希の心は浮かれていた。久住の告白に了承したその日に、同棲の話は何となく出ていたのだが、多希のほうが踏ん切りがつかずにいた。

一緒に住むというのは、それなりに覚悟がいることだと思う。心理的にも労力的にも。

週末通いの回数を重ねる度に、その話題を出されるものだから、多希はついに絆されてしまった。

「せっかくだから、うちに荷物を置いたらそのままデートに行きませんか」
「デート……」
「多希さんの食器とかタオルとか。消耗品はたくさんあってもいいと思うので、買いに行きましょう」

多希は久住の提案に頷いた。荷物を運び終えたらちょうど昼時で、ショッピングモールは混み合っていた。店で腹ごしらえをした後、二人は日用品雑貨の揃う店舗を見て回った。

グラタン皿やサラダボウルなど、久住の家になかったものを中心に購入していく。

「お茶碗とお箸、あとコップも。お揃いにしたくないですか?」
「そんなに買って……今使ってるものもあるのに」
「多希さんと一緒に住むから、俺はお揃いにしたいです」

お揃いのグラタン皿から始まり、久住は普段使いする食器までペアのものを買った。買い過ぎな気もするが、ペアセットという響きに、多希の心は弾む。

一通り新住居に必要なものを買い揃えた後、久住が寝具を見たいと言い出した。

「ベッドも欲しいですね。二人寝られるくらいの」
「……それ。今日買うんですか」
「実物を見て検討します」

久住の家へ泊まる日は、ベッドか敷き布団か。どちらかで別々に眠っている。抱き合った日はそのまま寝落ちてしまい、同じベッドで目覚める日もあるが……とにかく、一人用では窮屈なのだ。

かといって、多希の部屋と久住の使っているリビングに二つ置けるほどのスペースの余裕はない。

久住は真剣にパンフレットと現物を見比べている。

「これいいですね。ソファーベッド。多希さん、テレビ見ながら寝落ちするタイプだし、ちょうどいいと思います」
「まあ……そうですね」

久住の言う通り、週末で出掛ける予定のない日は、家で映画を見たりしてくつろいでいるのだが、いつの間にか久住の肩に寄りかかっている。「警戒心なさ過ぎです」と、久住に少し困った顔で言われながら、多希は起こしてもらうのだ。

久住はパンフレットをいくつか手に取り、ついでに替え用のシーツをカゴに入れた。二つ……三つ、四つと。
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