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トーカ
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「次の土曜日と日曜日、続けて休みが取れそうなんだ。立花君も仕事はないだろう。どこか遠くにでも行こうか」
ふてくされていた立花は、その言葉を聞いて瞳をきらきらと輝かせた。
「旅行でもいいけど、お家で涼風さんと過ごしたい。映画を観たりお昼寝したりゲームしたり……」
「……遠慮してる? それとも具合悪い?」
「違うんです。お休みだから、ゆっくり贅沢に過ごしたいなー……って。……ダメですか?」
「ゆっくり贅沢に、っていいね。じゃあ贅沢に映画とゲーム、たくさん買いに行こうか」
悪巧みしている子供みたいに、茶目っ気たっぷりにそう言うものだから、何だかおかしかった。涼風は気になっていたというタイトルを挙げて、立花に提案する。家には「またいつか」と購入したものの封さえ破らずに積んでいるものもある。新たに買うものと合わせれば、とても2日では消化しきれない。
「それはまた今度に」と一部を却下した。2人でやりたいことは、まだまだたくさんあるし、時間だって足りない。
たまの休日でも、涼風は1時間だけ多く寝て、後は読書をしたり立花の用事に付き合ってくれる。だらだら寝たりぼーっとしているところを見た記憶がない。だから、今週末ちょっと自堕落な生活へ誘ってしまい、少し申し訳ない気持ちにもなる。
防波堤を歩いていると、大きな水鳥が急に降り立ってきて、立花の行く道を防いだ。立花の身長よりも尺寸のある立派な2枚の羽を拡げるものだから、驚いてバランスを崩してしまった。
さすがに転げ落ちたりはしなかったが、立花は弾みで防波堤から飛び降りた。着地の衝撃が少なかったのは、涼風が上手く立花の身体を受け止めてくれたからだ。
「……心臓に悪いな。ほら、ちゃんと隣を歩いて」
「ごめんなさい……」
叱られて、立花は素直に謝る。段差を降りた後でも、握っている手の強さは変わらない。しっかりと触れられるのは嬉しいけれど、いい加減痺れてきた。同時にどくん、と血が通うときの感触を腹の奥で感じる。
「びっくりさせちゃったから、怒られたのかな」
立花は労るようにして、自分の腹を撫でた。手の内側にしっかりとした胎動が伝わってきて、立花はふふ、と微笑む。愛しい人の血を半分分けた、大切な子が自分のお腹の中にいる。
「立花君に似てきっと元気な子だな」
自分を、そして新たに芽吹き始めた命を、彼は愛してくれる。
他の何もかもを失ったとしても、その事実だけで強く生きていけるような気がした。
水平線に沈み始めたオレンジ色の夕日が、立花の髪と頬を優しく照らす。
歩きながら、立花は「好き」と呟くように言う。胸で感じている幸せを色で表せるとしたら、ちょうどこんな色なんだと思う。返ってきた同じ言葉に、立花は満ち足りた表情で横顔を見つめ返した。
fin.
ふてくされていた立花は、その言葉を聞いて瞳をきらきらと輝かせた。
「旅行でもいいけど、お家で涼風さんと過ごしたい。映画を観たりお昼寝したりゲームしたり……」
「……遠慮してる? それとも具合悪い?」
「違うんです。お休みだから、ゆっくり贅沢に過ごしたいなー……って。……ダメですか?」
「ゆっくり贅沢に、っていいね。じゃあ贅沢に映画とゲーム、たくさん買いに行こうか」
悪巧みしている子供みたいに、茶目っ気たっぷりにそう言うものだから、何だかおかしかった。涼風は気になっていたというタイトルを挙げて、立花に提案する。家には「またいつか」と購入したものの封さえ破らずに積んでいるものもある。新たに買うものと合わせれば、とても2日では消化しきれない。
「それはまた今度に」と一部を却下した。2人でやりたいことは、まだまだたくさんあるし、時間だって足りない。
たまの休日でも、涼風は1時間だけ多く寝て、後は読書をしたり立花の用事に付き合ってくれる。だらだら寝たりぼーっとしているところを見た記憶がない。だから、今週末ちょっと自堕落な生活へ誘ってしまい、少し申し訳ない気持ちにもなる。
防波堤を歩いていると、大きな水鳥が急に降り立ってきて、立花の行く道を防いだ。立花の身長よりも尺寸のある立派な2枚の羽を拡げるものだから、驚いてバランスを崩してしまった。
さすがに転げ落ちたりはしなかったが、立花は弾みで防波堤から飛び降りた。着地の衝撃が少なかったのは、涼風が上手く立花の身体を受け止めてくれたからだ。
「……心臓に悪いな。ほら、ちゃんと隣を歩いて」
「ごめんなさい……」
叱られて、立花は素直に謝る。段差を降りた後でも、握っている手の強さは変わらない。しっかりと触れられるのは嬉しいけれど、いい加減痺れてきた。同時にどくん、と血が通うときの感触を腹の奥で感じる。
「びっくりさせちゃったから、怒られたのかな」
立花は労るようにして、自分の腹を撫でた。手の内側にしっかりとした胎動が伝わってきて、立花はふふ、と微笑む。愛しい人の血を半分分けた、大切な子が自分のお腹の中にいる。
「立花君に似てきっと元気な子だな」
自分を、そして新たに芽吹き始めた命を、彼は愛してくれる。
他の何もかもを失ったとしても、その事実だけで強く生きていけるような気がした。
水平線に沈み始めたオレンジ色の夕日が、立花の髪と頬を優しく照らす。
歩きながら、立花は「好き」と呟くように言う。胸で感じている幸せを色で表せるとしたら、ちょうどこんな色なんだと思う。返ってきた同じ言葉に、立花は満ち足りた表情で横顔を見つめ返した。
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