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第二章
33. 晩酌
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風呂を出ると、俺用の物なのか替えのルームウェアとタオルが用意されていた。
ここまできたら腹を括り、大人しく借りることにする。少しダボつくTシャツとスウェトのズボンに体を通し、半ばヤケになって部屋へと戻る。
そこには、ダイニングテーブルでくつろぐ芦名さんの姿があった。
「もう、お子ちゃま達は寝たわ。ずいぶん長湯だったけど、のぼせたんじゃない?」
椅子に座る彼女は、頬杖をしながら上目遣いで尋ねてくる。その拍子に薄手のTシャツ越しに、たゆんと豊満な胸が揺れたのがみえて俺は天を仰いだ。
(早川さんの巨乳好きっ! すけべっ!)
頭の中であの綺麗な顔にグーパンチを入れながら、俺は言った。
「聞いてもいいですか?」
「何を?」
上目遣いのまま聞き返されるが、深呼吸を一つして、ついに意を決して口を開く。
「早川さんのことです」
すると、グラスを手にした芦名さんが笑って言った。
「いいわよ。ただし、付き合って」
「…………はい?」
それは、晩酌のお誘いだった。
「ぷっはぁ~!」
その一時間後、俺はブドウジュース片手に唖然としていた。
芦名さんは、すこぶるご機嫌だ。
なぜなら、先程からその腕に焼酎の瓶を抱え、ストレートでグラスに注ぎガバガバと飲み干しているから。その酒豪っぷりは、もはや清々しいものだった。
その合間に、夕飯のお礼にと俺が出したツマミに笑顔で舌鼓を打っている。
「なにこれ!」
「えっと、チーズ巾着っす。冷蔵庫にあった油揚げにとろけるチーズいれて、フライパンでサッと焼きました」
「これは!?」
「あ、サキイカあったんでアレンジしてみました。青海苔の衣つけて揚げ焼きに……」
「て、……天才かっ!」
その姿に、もう第一印象であったエキゾチックな雰囲気は吹き飛んでいる。
俺が出したものにはしゃぎながら、オーバーリアクションをしてくれる彼女は、なんて愛らしい人なのだろう……と思う。
(早川さんと、お似合いだな……)
卑屈になりそうになる心を押し殺して、なんとかブドウジュースをあおる。
しかし、彼女のそんな姿に、少しだけ気分が高揚している自分もいた。
自分が出した酒のツマミを誰かに喜んでもらえるなんて、随分と久しぶりのことだったから。
「うまい!」
芦名さんは非の打ち所がないくらい美人なのに、そう叫びながら頬張っている。
その姿に、どことなく爺ちゃんの面影が重なった。
『うまい!』
あの厳しかった爺ちゃんも、晩酌の席ではこうやって俺の料理を心底褒めながら、楽しげに酒を呑んでいた。
そんなことを思い出せば、こんな状況なのに笑ってしまう。
「……ふはっ!」
堪えきれずについにふき出すと、芦名さんは不思議そうに首を傾げる。
でも俺は、胸に湧き上がった素直な気持ちを言わずにいられなかった。
「食べてくれて、すっげぇ嬉しい。芦名さんのめっちゃいい食べっぷり、俺好き」
あまりに褒められたせいで、赤くなった頬を両手で隠しながら呟く。
すると、なぜか芦名さんは箸を取り落として前のめりに言った。
「ねぇ、君。人たらしでしょう」
「…………はい?」
そんな夜は、ゆっくりとふけてゆく。
けれど、ちびちびと飲んでいたコップのブドウジュースが、ようやく空になった頃だった。
「昔話を聞いてくれる?」
何杯目か分からない焼酎を注いでいた芦名さんが、唐突に言った。
「…………昔話?」
そう聞き返せば、彼女は静かに頷く。
瓶を置く音が、小さく響いた。
「悠介と私の、昔話」
机の下で、握りしめた手のひらが痛む。
『聞きたくない』
本当は、そう言いたかった。
だが、芦名さんの瞳は真っ直ぐに俺を捉えて離さない。
きっとこれが、今日俺がここに呼ばれた本題だったのだろう。
俺は、覚悟を決めてゆっくりと頷いた。
ここまできたら腹を括り、大人しく借りることにする。少しダボつくTシャツとスウェトのズボンに体を通し、半ばヤケになって部屋へと戻る。
そこには、ダイニングテーブルでくつろぐ芦名さんの姿があった。
「もう、お子ちゃま達は寝たわ。ずいぶん長湯だったけど、のぼせたんじゃない?」
椅子に座る彼女は、頬杖をしながら上目遣いで尋ねてくる。その拍子に薄手のTシャツ越しに、たゆんと豊満な胸が揺れたのがみえて俺は天を仰いだ。
(早川さんの巨乳好きっ! すけべっ!)
頭の中であの綺麗な顔にグーパンチを入れながら、俺は言った。
「聞いてもいいですか?」
「何を?」
上目遣いのまま聞き返されるが、深呼吸を一つして、ついに意を決して口を開く。
「早川さんのことです」
すると、グラスを手にした芦名さんが笑って言った。
「いいわよ。ただし、付き合って」
「…………はい?」
それは、晩酌のお誘いだった。
「ぷっはぁ~!」
その一時間後、俺はブドウジュース片手に唖然としていた。
芦名さんは、すこぶるご機嫌だ。
なぜなら、先程からその腕に焼酎の瓶を抱え、ストレートでグラスに注ぎガバガバと飲み干しているから。その酒豪っぷりは、もはや清々しいものだった。
その合間に、夕飯のお礼にと俺が出したツマミに笑顔で舌鼓を打っている。
「なにこれ!」
「えっと、チーズ巾着っす。冷蔵庫にあった油揚げにとろけるチーズいれて、フライパンでサッと焼きました」
「これは!?」
「あ、サキイカあったんでアレンジしてみました。青海苔の衣つけて揚げ焼きに……」
「て、……天才かっ!」
その姿に、もう第一印象であったエキゾチックな雰囲気は吹き飛んでいる。
俺が出したものにはしゃぎながら、オーバーリアクションをしてくれる彼女は、なんて愛らしい人なのだろう……と思う。
(早川さんと、お似合いだな……)
卑屈になりそうになる心を押し殺して、なんとかブドウジュースをあおる。
しかし、彼女のそんな姿に、少しだけ気分が高揚している自分もいた。
自分が出した酒のツマミを誰かに喜んでもらえるなんて、随分と久しぶりのことだったから。
「うまい!」
芦名さんは非の打ち所がないくらい美人なのに、そう叫びながら頬張っている。
その姿に、どことなく爺ちゃんの面影が重なった。
『うまい!』
あの厳しかった爺ちゃんも、晩酌の席ではこうやって俺の料理を心底褒めながら、楽しげに酒を呑んでいた。
そんなことを思い出せば、こんな状況なのに笑ってしまう。
「……ふはっ!」
堪えきれずについにふき出すと、芦名さんは不思議そうに首を傾げる。
でも俺は、胸に湧き上がった素直な気持ちを言わずにいられなかった。
「食べてくれて、すっげぇ嬉しい。芦名さんのめっちゃいい食べっぷり、俺好き」
あまりに褒められたせいで、赤くなった頬を両手で隠しながら呟く。
すると、なぜか芦名さんは箸を取り落として前のめりに言った。
「ねぇ、君。人たらしでしょう」
「…………はい?」
そんな夜は、ゆっくりとふけてゆく。
けれど、ちびちびと飲んでいたコップのブドウジュースが、ようやく空になった頃だった。
「昔話を聞いてくれる?」
何杯目か分からない焼酎を注いでいた芦名さんが、唐突に言った。
「…………昔話?」
そう聞き返せば、彼女は静かに頷く。
瓶を置く音が、小さく響いた。
「悠介と私の、昔話」
机の下で、握りしめた手のひらが痛む。
『聞きたくない』
本当は、そう言いたかった。
だが、芦名さんの瞳は真っ直ぐに俺を捉えて離さない。
きっとこれが、今日俺がここに呼ばれた本題だったのだろう。
俺は、覚悟を決めてゆっくりと頷いた。
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