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第一章
3. 招待と正体
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日は傾き、辺りはすっかり暗くなる。
連れて来られた場所は、ドラマでしかみたことのないようなタワーマンションだった。
「さぁ、どうぞ」
促されるままロックを解除した扉を潜れば、コンシェルジュのお姉さん達に出迎えられる。俺が目を白黒させている間に、早川さんは長い足でさっさとエレベーターに乗ってしまった。
エレベーターはどんどん階を上がってゆく。
「……なぁ、本当にここが家なの?」
恐る恐る尋ねれば、彼は笑った。
「そうだよ。だってここのオーナーだし」
「オーナーって……、え?大家?」
「そっ。面倒だから業者に委託してるけど」
ポケットに手を入れたまま飄々と語られる情報に頭がついていかない。
「は?漫画家じゃないの?」
「作品当てる度に土地転がしたりして資産運用してたんだよ。漫画家なんて、安定しない職業だからね」
「転がし……、うんよう……」
頭が見事キャパオーバーになった頃、エレベーターは最上階へと到着していた。
そして、通された無駄に広い部屋に震えながら足を踏み入れれば、
…………そこは戦場だった。
「ようこそ、我が家へ。適当に座って」
「え、どこに?」
間髪入れずに突っ込んだ。
言葉の通り、どこに座ればいいのか分からなかったからだ。
床には服や本、よく分からん原稿用紙が散乱しているし、洒落た皮張りのソファーにだって、これまたよく分からん本が山積みになっていた。
「わっ!」
次の瞬間、足元のトラップに引っかかり、前のめりに転んでしまう。
「あぁ、ごめんね?」
早川さんはにっこりと微笑むと、山積みの本を一気に崩した。
「わぁああああっ!!!」
転んだ上に、さらに本の雪崩に巻き込まれて情けない悲鳴を上げるしかなった。
しかし、その間に、彼はもう既に着席している。
「ほら。遊んでないで早く座ってよ」
「遊んでないわっ!」
そう、叫んだ時だった。
何気なく手元に触れた本を一冊拾う。
それは見たこともない漫画だった。
タイトルはありきたりなのに、その表紙を思わず二度見する。だって、二つの肌色が絡み合っているんだもの。
明らかにエロ本だ。
そして、さらに三度見した。
だって、それが男同士だったから。
「興味があるみたいで良かった」
柔らかく優しい響きのその声は、まるで死刑宣告のように邪悪に聞こえた。
ブリキ人形のようにぎこちなく見上げれば、彼は長い足を組みながら、此方を見下ろし微笑んだ。
「僕、早川悠介28歳。"元"人気漫画家」
よく見れば、艶のない唇が言葉を紡ぐ。
「出版社に契約を打ち切られそうですが、一発逆転狙っています」
「……一発、逆転?」
「そう」
美しいヘーゼルの瞳は、よくよく見れば淀んでいた。
「BL漫画でね」
だからよろしく、間宮くん♪
絶対、語尾に音符がついていたと思う。
俺は、大きく息を吸い込んだ。
「全然っ!!よろしくねぇええええええっ!!!」
じいちゃん……
どうやら俺は、エセ王子様に捕まったようです。
虚しい叫びは、窓から望む百万ドルの夜景に響いて消えた。
連れて来られた場所は、ドラマでしかみたことのないようなタワーマンションだった。
「さぁ、どうぞ」
促されるままロックを解除した扉を潜れば、コンシェルジュのお姉さん達に出迎えられる。俺が目を白黒させている間に、早川さんは長い足でさっさとエレベーターに乗ってしまった。
エレベーターはどんどん階を上がってゆく。
「……なぁ、本当にここが家なの?」
恐る恐る尋ねれば、彼は笑った。
「そうだよ。だってここのオーナーだし」
「オーナーって……、え?大家?」
「そっ。面倒だから業者に委託してるけど」
ポケットに手を入れたまま飄々と語られる情報に頭がついていかない。
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「転がし……、うんよう……」
頭が見事キャパオーバーになった頃、エレベーターは最上階へと到着していた。
そして、通された無駄に広い部屋に震えながら足を踏み入れれば、
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「え、どこに?」
間髪入れずに突っ込んだ。
言葉の通り、どこに座ればいいのか分からなかったからだ。
床には服や本、よく分からん原稿用紙が散乱しているし、洒落た皮張りのソファーにだって、これまたよく分からん本が山積みになっていた。
「わっ!」
次の瞬間、足元のトラップに引っかかり、前のめりに転んでしまう。
「あぁ、ごめんね?」
早川さんはにっこりと微笑むと、山積みの本を一気に崩した。
「わぁああああっ!!!」
転んだ上に、さらに本の雪崩に巻き込まれて情けない悲鳴を上げるしかなった。
しかし、その間に、彼はもう既に着席している。
「ほら。遊んでないで早く座ってよ」
「遊んでないわっ!」
そう、叫んだ時だった。
何気なく手元に触れた本を一冊拾う。
それは見たこともない漫画だった。
タイトルはありきたりなのに、その表紙を思わず二度見する。だって、二つの肌色が絡み合っているんだもの。
明らかにエロ本だ。
そして、さらに三度見した。
だって、それが男同士だったから。
「興味があるみたいで良かった」
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ブリキ人形のようにぎこちなく見上げれば、彼は長い足を組みながら、此方を見下ろし微笑んだ。
「僕、早川悠介28歳。"元"人気漫画家」
よく見れば、艶のない唇が言葉を紡ぐ。
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「……一発、逆転?」
「そう」
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