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冒険者Dと近隣国
歓迎
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ハイドゥン村の前に馬車を止めると馬に乗った傭兵達が頭を振りながら止まる。一応、馬からは降りずに俺の対応を待っている。
ハイドゥン村の木柵の向こうから初心者装備みたいな男が走り出て来た。
「よう、久しぶりだな。モードウィンさん」
声を俺に掛けられて驚いて答えた。
「な、な、何だぁ。エイスじゃねえか。おめぇ、死んだんじゃ無かったのかかよ!」
「おいおい、殺すなよ。久しぶりに帰省したんだから歓迎してくれよ」
モードウィンさんは破顔して、馬車や周りの傭兵を見て言った。
「それにしても物々しい人数でやってきたな。まさかと思うが制圧に来たんじゃないよな」
「冗談は止めてくれよ。この場所には他所の国の貴族がいるから物々しいだけさ。ただのハイドゥン村観光団だよ」
俺の言葉にモードウィンさんが頷いた。俺じゃないけど昔同じように村を出た者が騎士団を連れて来てハイドゥン村を制圧しようとしたけど失敗してるからな。ハイドゥン村に来れば誰もがそれどころじゃ無くなるからな。
「ちょっと待っててくれ、村長を呼んでくる」
モードウィンさんが村の中に駆けて行った。後続で付いてきたアルマ達の馬車の馬が嘶くとみんなの意識が覚醒したのかざわつき始めた。御者をしている馬車の窓が開いてアンナが顔を見せて言った。
「着いたのですか、ゼオン」
アンナには俺が別の人間に見えるらしく俺の知らない名前を言った。
「ああ、着いたぜアンナ」
俺が名前を呼んだのに自分が呼ばれたとは思わなかったようにきょとんとしている。
「何を言ってるよの、ゼオン。あたしはアンナじゃなくてクリスティアよ」
本気で言っている。
「クリスティア•ヨドンナ•セントレール、セントレール帝国の女帝だわ」
セントレール帝国ねぇ。聞いたこともねえな。アンナは自分で言って置いておかしな事を言ったと思ったらしい。
「あれ?あたしは死んだよのねぇ。おかしいわ」
前世の記憶が戻ってアンナは混乱しているようだな。まぁ放って於けば落ち着くだろうさ。
そういう俺も記憶を取り戻しつつあった。外に居れば前世の記憶なんて忘れていられるんだがな。個人的な記憶を取り戻す事には違和感ありまくりだな。
俺の前世は化粧師だったらしい。名前も思い出すが大した名前じゃねえ。夜の界隈で女のヒモをしながら街に繰り出す俺の女の顔を弄くり倒す男だったのさ。
女に仕事をさせて金をせびる最低な男だったが時間はたんまりあったから趣味に没頭していたな。心理術、武闘術、改造術を嗜みミリタリーオタクでもあったから顔は広かった。
女を扱う商売もやってたぜ。売春、派遣、水商売とか何でもやってそこそこ稼いでも居たが賭事だけは手を出してなかった。それとヤバイ薬もやってなかったのは893の所場に行きたくなかったからだ。腐れ縁のアホ野郎とはつるんだりしたけどな。
結局は痴情の縺れで女に一緒に死んでくれと頼まれて腹を刺されて死んだんだがな。
そんな事を考えていたらモードウィンさんが村長と女性を連れてやってきた。村長はファーガーソンと言って30近い筈だ。隣でにこやかに俺を見ている女性は村長の妻ベルベッタ、つまり俺の姉貴だ。俺より6歳年上だから27歳になったのか。
彼らの後ろからは村人がぞろぞろ集まって来ている。これだけの集団が来たから珍しいのだろうさ。その中には俺の両親も混じっていた。馬車の上の御者台からはみんなの顔がよく見えた。懐かしい気持ちと共に少し後ろめたい。
「おお、良く来なさった。ハイドゥン村を代表してこのファーガーソンが歓迎しますぞ。」
「宿もありますのでごゆるりとお休み下さい」
ベルベッタ姉貴が俺の方を見ていたから俺のことに気づいたのかと思ったが違ったようだった。
「ありがとうございます」
大人しく返事をしてファーガーソン村長の後を馬車で追った。馬車の横を馬で並走する傭兵の二人も時間が経つに連れてしっかりとしてきた。村の広場の近くの宿屋で馬車を止めて俺は扉を開けてアンナに手を貸して降ろす。
「あ、ありがと。ゼオンじゃなくてディー」
まだ記憶がごっちゃになっているようだ。いったいゼオンってどんな奴なんだ。俺は宿の下男に馬車を預けながら見ると宿の入口には『ハイドゥンの宿』とあった。まんまだな。
入口を開けてファーガーソン村長とベルベッタ姉貴がアンナを見て少し目を丸くする。アンナは貴族らしいドレスを着てるからな、QTもそうだけど。
「申し訳ありません、お貴族様々でしたか。宜しかったら御家名を教えて頂けますでしょうか?」
ファーガーソン村長の言葉にアンナが答えた。
「セントレール・・・は違う?アンナ•ハサイエル、マジェント共和王国の者です。」
ファーガーソン村長はアンナの最初の言葉に眉を潜めたがマジェント共和王国の名を聞いて感激した。
「おお、そんな遠くからこんな田舎の村まで良くぞいらっした。」
「何も無い村ですがごゆるりと堪能下さいませ」
貴族を迎えたと聞いて後ろで立っていた宿の主人と思われる男が慌てて下男や手伝いに指示をしていたな。どうなることやら。
ハイドゥン村の木柵の向こうから初心者装備みたいな男が走り出て来た。
「よう、久しぶりだな。モードウィンさん」
声を俺に掛けられて驚いて答えた。
「な、な、何だぁ。エイスじゃねえか。おめぇ、死んだんじゃ無かったのかかよ!」
「おいおい、殺すなよ。久しぶりに帰省したんだから歓迎してくれよ」
モードウィンさんは破顔して、馬車や周りの傭兵を見て言った。
「それにしても物々しい人数でやってきたな。まさかと思うが制圧に来たんじゃないよな」
「冗談は止めてくれよ。この場所には他所の国の貴族がいるから物々しいだけさ。ただのハイドゥン村観光団だよ」
俺の言葉にモードウィンさんが頷いた。俺じゃないけど昔同じように村を出た者が騎士団を連れて来てハイドゥン村を制圧しようとしたけど失敗してるからな。ハイドゥン村に来れば誰もがそれどころじゃ無くなるからな。
「ちょっと待っててくれ、村長を呼んでくる」
モードウィンさんが村の中に駆けて行った。後続で付いてきたアルマ達の馬車の馬が嘶くとみんなの意識が覚醒したのかざわつき始めた。御者をしている馬車の窓が開いてアンナが顔を見せて言った。
「着いたのですか、ゼオン」
アンナには俺が別の人間に見えるらしく俺の知らない名前を言った。
「ああ、着いたぜアンナ」
俺が名前を呼んだのに自分が呼ばれたとは思わなかったようにきょとんとしている。
「何を言ってるよの、ゼオン。あたしはアンナじゃなくてクリスティアよ」
本気で言っている。
「クリスティア•ヨドンナ•セントレール、セントレール帝国の女帝だわ」
セントレール帝国ねぇ。聞いたこともねえな。アンナは自分で言って置いておかしな事を言ったと思ったらしい。
「あれ?あたしは死んだよのねぇ。おかしいわ」
前世の記憶が戻ってアンナは混乱しているようだな。まぁ放って於けば落ち着くだろうさ。
そういう俺も記憶を取り戻しつつあった。外に居れば前世の記憶なんて忘れていられるんだがな。個人的な記憶を取り戻す事には違和感ありまくりだな。
俺の前世は化粧師だったらしい。名前も思い出すが大した名前じゃねえ。夜の界隈で女のヒモをしながら街に繰り出す俺の女の顔を弄くり倒す男だったのさ。
女に仕事をさせて金をせびる最低な男だったが時間はたんまりあったから趣味に没頭していたな。心理術、武闘術、改造術を嗜みミリタリーオタクでもあったから顔は広かった。
女を扱う商売もやってたぜ。売春、派遣、水商売とか何でもやってそこそこ稼いでも居たが賭事だけは手を出してなかった。それとヤバイ薬もやってなかったのは893の所場に行きたくなかったからだ。腐れ縁のアホ野郎とはつるんだりしたけどな。
結局は痴情の縺れで女に一緒に死んでくれと頼まれて腹を刺されて死んだんだがな。
そんな事を考えていたらモードウィンさんが村長と女性を連れてやってきた。村長はファーガーソンと言って30近い筈だ。隣でにこやかに俺を見ている女性は村長の妻ベルベッタ、つまり俺の姉貴だ。俺より6歳年上だから27歳になったのか。
彼らの後ろからは村人がぞろぞろ集まって来ている。これだけの集団が来たから珍しいのだろうさ。その中には俺の両親も混じっていた。馬車の上の御者台からはみんなの顔がよく見えた。懐かしい気持ちと共に少し後ろめたい。
「おお、良く来なさった。ハイドゥン村を代表してこのファーガーソンが歓迎しますぞ。」
「宿もありますのでごゆるりとお休み下さい」
ベルベッタ姉貴が俺の方を見ていたから俺のことに気づいたのかと思ったが違ったようだった。
「ありがとうございます」
大人しく返事をしてファーガーソン村長の後を馬車で追った。馬車の横を馬で並走する傭兵の二人も時間が経つに連れてしっかりとしてきた。村の広場の近くの宿屋で馬車を止めて俺は扉を開けてアンナに手を貸して降ろす。
「あ、ありがと。ゼオンじゃなくてディー」
まだ記憶がごっちゃになっているようだ。いったいゼオンってどんな奴なんだ。俺は宿の下男に馬車を預けながら見ると宿の入口には『ハイドゥンの宿』とあった。まんまだな。
入口を開けてファーガーソン村長とベルベッタ姉貴がアンナを見て少し目を丸くする。アンナは貴族らしいドレスを着てるからな、QTもそうだけど。
「申し訳ありません、お貴族様々でしたか。宜しかったら御家名を教えて頂けますでしょうか?」
ファーガーソン村長の言葉にアンナが答えた。
「セントレール・・・は違う?アンナ•ハサイエル、マジェント共和王国の者です。」
ファーガーソン村長はアンナの最初の言葉に眉を潜めたがマジェント共和王国の名を聞いて感激した。
「おお、そんな遠くからこんな田舎の村まで良くぞいらっした。」
「何も無い村ですがごゆるりと堪能下さいませ」
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