122 / 159
冒険者Dと近隣国
私掠船強奪3
しおりを挟む「俺の船に来て何をしてる!」
俺は積荷をインベントリに仕舞いながら答える。
「何って、強奪してるだけだが」
俺の言葉にイクアウトはポカンとしたが直ぐに激怒し始めた。
「ふ、巫山戯るな!その積荷を奪うのは止せ!直ぐに返せ!」
俺に掴み掛かりながら大声で叫んだ。俺はイクアウトから逃れながら積荷を奪うのは止めない。もう少しで全部を収納出来る。
ついでにイクアウトが身に着けている宝石類も奪ってやる。
俺の腕に縋りついたイクアウトを見降ろしながら俺は言った。
「忘れちゃいねえぜ、お前が俺にした仕打ちも、損害もな」
イクアウトは俺から手を離し、後ろにずり下がり始めた。
「弁解も謝罪も必要ねえ、欲しいのはお前の命くらいなもんさ」
睨みつけながら俺は振り返る。幾つかのスキルがカンストしているせいで俺の身体はかなり鍛え上げられた身体付きをしている。背の高さも高くなっているはすだ。
イクアウトは怯える様に首を横に振り、逃げ腰だ。さっきまでの勢いはなくなってる。
「どうした、お前の積荷を奪ってやったのに何も言うことは無いのか」
「・・・あ、あ、命だけはお助けを」
「お前が金だけを持って逃げたせいで俺は酷い目にあった。お前の口車に乗って商品を納入する事で俺の特殊能力が貴族にバレた。
いや、あれは俺込みで売ったんだろ、そうだろイクアウト」
俺がスキル『無貌』の使い方を余り分からないで商人べゼットワイグマの知識だけで商人として居た時にイクアウトに騙されたのだ。
ある貴族に俺は売られ、危うく隷属させられる所をやっとの事で逃げ出し、他の貴族の力を借りる羽目になったな。まぁ、あの出会いが商人を辞める切っ掛けになった訳だけど。
俺は腰を抜かし、床に染みを作り始めたイクアウトを笑った。
「ははははは、今更お前を殺しても金にもならん」
俺は船倉に居た奴らが俺とイクアウトのやり取りで逃げ出して、誰も居ないことを確認した上で、イクアウトにスキル『無貌』を掛けた。直ぐに泥人形から元に戻して、イクアウトが今何をしてこの船に居るのかを理解した。
イクアウトはやはりアロシア帝国と取引をしていた。アロシア帝国の私掠船の積荷をベラーシやマジェント共和王国へ少し安く売り払い、その売買益の4割を得ていたのだ。
しかもマジェント共和王国の交易相手はあの悪名高い第11王子ゴーマンだった。この船に居たのは襲う船を指示して売り払う積荷を確認するためだった。商人のイクアウトなら商船の積荷を確認するのも容易だ。
しかも第11王子ゴーマン•マジェントは継承権が低いが、王族のひとりだ。性格は貴族の特権意識ばかり高い、強欲な男だった。23歳で既婚だと言うのに既に同じ様な強欲な商人や爵位は低いが権力を振り回すのが好きな貴族の取巻きがいた。イクアウトもそのひとりで何度も会って指示を受けたりしていた。俺を嵌めた時はまだ知り合っていなくて、別の貴族の仲介で仲間となっていたようだ。
その貴族に俺は売られそうになっていた事にも腹が立つ。どうやら第11王子ゴーマン•マジェントが戦争反対の急先鋒に立っているのは何かの隠れ蓑にしているらしい。イクアウトも詳しくは知らされて居なかったので推測らしいが、本心は別の所にあるらしい。
何にしてもこいつはマジェント共和王国の獅子身中の虫らしい。俺の敵だ。
それからイクアウトが俺を売ろうとした貴族、名前までは分からなかったが、そいつの手先は黒服の『フクロウ』と言う男らしい。いつも突然現れて命令だけを告げて行くようだ。イクアウトも命令されるのは嫌いだが、フクロウの命令は的確で言われたとおりにすれば危険も無く濡れ手に粟だった。それ故に従って居たのだ。
泥人形から元に戻って頭を振っているイクアウトを蹴り飛ばし、気絶させる。こいつを生かして置けば俺を嵌めた貴族が分かるかも知れない。イクアウトを利用しようと俺は決めた。
俺は残りの積荷を収納仕切ると船倉から外に出た。
見ると護衛していたアロシアの軍船に乗っていた魔法使いがみんな倒れて、他の船員がうろうろしていた。
戦艦の周りで海獣リバイスの姿が見え隠れしている。近付いては潜り、反対側から姿を見せて翻弄していた。投げつける銛も尽きたのか偃月刀を持って彷徨いていた。海獣リバイスに為す術もなく蹲って祈っている奴も居る。
俺が空歩で空に駆け上がりアロシアの商船と軍船から離れて行くと海面上に海獣艇『リバイア』が姿を見せた。100m程度しか離れて居ないが混乱の極みにある軍船の船員が見ていても問題無いだろう。
俺は『リバイア』の中に入るとユキが飛び付いて来た。
操船をしているランドルトや機関を監視していたベラベララに顔を向けられたので俺は「ばっちりだぜ!」と言ってやると歓声が上がった。
海獣艇『リバイア』は一旦、隠れ家に戻り、やる気に満ちているランドルト達のメンテナンスを受けて居る間に俺は寝させて貰った。勿論ユキも一緒だ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
性癖の館
正妻キドリ
ファンタジー
高校生の姉『美桜』と、小学生の妹『沙羅』は性癖の館へと迷い込んだ。そこは、ありとあらゆる性癖を持った者達が集う、変態達の集会所であった。露出狂、SMの女王様と奴隷、ケモナー、ネクロフィリア、ヴォラレフィリア…。色々な変態達が襲ってくるこの館から、姉妹は無事脱出できるのか!?
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる