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冒険者Dと近隣国

私掠船強奪3

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「俺の船に来て何をしてる!」

俺は積荷をインベントリに仕舞いながら答える。
「何って、強奪してるだけだが」

俺の言葉にイクアウトはポカンとしたが直ぐに激怒し始めた。
「ふ、巫山戯るな!その積荷を奪うのは止せ!直ぐに返せ!」

俺に掴み掛かりながら大声で叫んだ。俺はイクアウトから逃れながら積荷を奪うのは止めない。もう少しで全部を収納出来る。
ついでにイクアウトが身に着けている宝石類も奪ってやる。

俺の腕に縋りついたイクアウトを見降ろしながら俺は言った。
「忘れちゃいねえぜ、お前が俺にした仕打ちも、損害もな」

イクアウトは俺から手を離し、後ろにずり下がり始めた。
「弁解も謝罪も必要ねえ、欲しいのはお前の命くらいなもんさ」

睨みつけながら俺は振り返る。幾つかのスキルがカンストしているせいで俺の身体はかなり鍛え上げられた身体付きをしている。背の高さも高くなっているはすだ。

イクアウトは怯える様に首を横に振り、逃げ腰だ。さっきまでの勢いはなくなってる。
「どうした、お前の積荷を奪ってやったのに何も言うことは無いのか」
「・・・あ、あ、命だけはお助けを」
「お前が金だけを持って逃げたせいで俺は酷い目にあった。お前の口車に乗って商品を納入する事で俺の特殊能力が貴族にバレた。
いや、あれは俺込みで売ったんだろ、そうだろイクアウト」

俺がスキル『無貌』の使い方を余り分からないで商人べゼットワイグマの知識だけで商人として居た時にイクアウトに騙されたのだ。
ある貴族に俺は売られ、危うく隷属させられる所をやっとの事で逃げ出し、他の貴族の力を借りる羽目になったな。まぁ、あの出会いが商人を辞める切っ掛けになった訳だけど。

俺は腰を抜かし、床に染みを作り始めたイクアウトを笑った。
「ははははは、今更お前を殺しても金にもならん」

俺は船倉に居た奴らが俺とイクアウトのやり取りで逃げ出して、誰も居ないことを確認した上で、イクアウトにスキル『無貌』を掛けた。直ぐに泥人形から元に戻して、イクアウトが今何をしてこの船に居るのかを理解した。

イクアウトはやはりアロシア帝国と取引をしていた。アロシア帝国の私掠船の積荷をベラーシやマジェント共和王国へ少し安く売り払い、その売買益の4割を得ていたのだ。
しかもマジェント共和王国の交易相手はあの悪名高い第11王子ゴーマンだった。この船に居たのは襲う船を指示して売り払う積荷を確認するためだった。商人のイクアウトなら商船の積荷を確認するのも容易だ。

しかも第11王子ゴーマン•マジェントは継承権が低いが、王族のひとりだ。性格は貴族の特権意識ばかり高い、強欲な男だった。23歳で既婚だと言うのに既に同じ様な強欲な商人や爵位は低いが権力を振り回すのが好きな貴族の取巻きがいた。イクアウトもそのひとりで何度も会って指示を受けたりしていた。俺を嵌めた時はまだ知り合っていなくて、別の貴族の仲介で仲間となっていたようだ。

その貴族に俺は売られそうになっていた事にも腹が立つ。どうやら第11王子ゴーマン•マジェントが戦争反対の急先鋒に立っているのは何かの隠れ蓑にしているらしい。イクアウトも詳しくは知らされて居なかったので推測らしいが、本心は別の所にあるらしい。
何にしてもこいつはマジェント共和王国の獅子身中の虫らしい。俺の敵だ。

それからイクアウトが俺を売ろうとした貴族、名前までは分からなかったが、そいつの手先は黒服の『フクロウ』と言う男らしい。いつも突然現れて命令だけを告げて行くようだ。イクアウトも命令されるのは嫌いだが、フクロウの命令は的確で言われたとおりにすれば危険も無く濡れ手に粟だった。それ故に従って居たのだ。

泥人形から元に戻って頭を振っているイクアウトを蹴り飛ばし、気絶させる。こいつを生かして置けば俺を嵌めた貴族が分かるかも知れない。イクアウトを利用しようと俺は決めた。

俺は残りの積荷を収納仕切ると船倉から外に出た。
見ると護衛していたアロシアの軍船に乗っていた魔法使いがみんな倒れて、他の船員がうろうろしていた。

戦艦の周りで海獣リバイスの姿が見え隠れしている。近付いては潜り、反対側から姿を見せて翻弄していた。投げつける銛も尽きたのか偃月刀を持って彷徨いていた。海獣リバイスに為す術もなく蹲って祈っている奴も居る。

俺が空歩で空に駆け上がりアロシアの商船と軍船から離れて行くと海面上に海獣艇シーモンスター『リバイア』が姿を見せた。100m程度しか離れて居ないが混乱の極みにある軍船の船員が見ていても問題無いだろう。

俺は『リバイア』の中に入るとユキが飛び付いて来た。
操船をしているランドルトや機関を監視していたベラベララに顔を向けられたので俺は「ばっちりだぜ!」と言ってやると歓声が上がった。

海獣艇シーモンスター『リバイア』は一旦、隠れ家に戻り、やる気に満ちているランドルト達のメンテナンスを受けて居る間に俺は寝させて貰った。勿論ユキも一緒だ。




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