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冒険者Dと近隣国

逃げる者追う者

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ギルーラは取り敢えずアロシア帝国の皇都に向かった。
途中には以前にも訪れた事のあるほぼ街だろう規模の村ドレーンがある。そこの村長は私のことを知っているから休憩と援助を受けられるだろう。結構早足でデザートエクリプスを走らせたので自分もデザートエクリプスも疲れて居たし、もうすぐ夕闇が迫り村の門も閉まってしまう。
何とか門が閉まる前に辿り着き門番の男に名乗る。
「ギルーラ•エッテンベルクだ。急用で中に入らせて貰いたい。」

私が伴も連れずにデザートエクリプスなどに騎乗して現れたので門番の男は驚いてこちらに槍を向けた。
「ほ、ほんとか?・・・領主様?」

どうやら門番の男は以前に訪れた際に私を見たことがあったらしい。一緒に門を守っていた男に村長へ知らせに行かせてくれた。
村長は直ぐに現れ、私の成りを見て慌てて、自分の家に招いてくれた。

上等な貴族服もあちこち破れ、泥や埃が付いていたからな。
風呂に入り、用意してくれた新しい服で身嗜みを整えた後に食事をしながら村長に事情を話す。もちろん、戦に負けて逃げて来たとは言わない。

少し借金をして明朝早くにドレーンの村を出た。デザートエクリプスの世話もしてくれたようで怪我も大分治り、調子は良さそうだ。
少し考えて、私はアロシア帝国の皇都を目指した。


◆◆アンナ視点◆◆
スリム•ライザップ辺境伯領の最北の街ベゼワント。ワルト山渓を通じてアロシア帝国領のスエータ地方に出る為の砦のような街だ。
北東には赤龍峰が見え、山々に囲まれて険しい。赤龍の鳴き声が街に届く事もあるという。

アンナはベゼワントの街長マクシミリアンと会っていた。というか、朝食に呼ばれて食事を共にした。マクシミリアンは下心を隠さずあたしの露出した胸の谷間を見ながら話をした。
「アンナ嬢、当家の砦は如何でしたかな。ゆっくりと休まれましたか?」

一瞬顰めてしまったが笑みを浮かべて答える。
「ええ、お陰様で快適でしたわ。」

それから他愛のない世辞をお互いに言い合いながら朝食を摂る。北の山間のせいか出された料理は野趣の効いたものだった。
「ところで、昨日お聞きした件は如何でしたでしょう?」

Dが此処に来たのは間違いない。居場所までは掴めていないが『緋空旅団』に会いに行くと言っていたならいるはずなのだ。マクシミリアンから入砦者名簿の確認が取れれば間違いない。

「ええ、名簿にありましたよ。砦の兵士達からも途轍もない魔導具に乗ってやって来た・・・・・・・・・・・・・との証言も得ています。どうやらそのディーとやらの冒険者は『緋空旅団』の関係者らしいですねえ」
「やっぱり」

マクシミリアンはあたしの笑顔が大きくなったのが気に入らないようで不機嫌さを隠さない。
「いったいその冒険者はアンナ嬢の何なのですかね」
「あら、気になりまして?」
「それはもちろん、私が婚姻を申込んでいるのはご存知でしょうに」

あたしは返答を返さず少し俯き加減に微笑む。マクシミリアンはあたしの態度に口を開こうとするがあたしの声が重なる。
「A級冒険者Dはわたくしの救い主ですのよ」

その意味を探ろうとマクシミリアンが押し黙る。マクシミリアンには悪いがC級に昇級した破軍の星デストロイスターのローリエが早く来ないかとわたしは気にしていた。

◆◆アルマ視点◆◆
商人コメツキ•バッタの話は中々面白かった。ただ、この男が自分に好意を持ってくれている事に多少の戸惑いは隠せない。

「伝説の大商人『べゼット•ワイグマ』の言葉『商人に大事なのは人の心を揺さぶる縁である』王都の危機を救って、消えた商人です!」

力説して伝説の大商人『べセット•ワイグマ』の事を話す商人コメツキ•バッタはとても好もしく思え、アルマは自分に困惑する。
もしかして自分も好きに成りかけているのかも知れない。駄目だという想いと良いじゃ無いという想いが交錯する。そんなアルマの心の内も知らずに商人コメツキ•バッタは話し続けた。

「べゼット•ワイグマは当時飢饉に陥りかけていた王都の食料事情を知り、何処からか沢山の食材を調達して来たそうですよ。それだけでなく王に有用な魔導具を用立てたという話もあります。そのお陰でこの北の国のアロシア帝国の南勢攻略を防げたと言う上位貴族も居るらしいです。王都の市場で商売を始めたのにあっと言う間に豪商となったのに、商業ギルドでは箝口令が敷かれたりして良く分からない部分もあるんです。だからギルドの記録を見ると名前を省略したのか商人Bと書かれています。」
商人コメツキバッタの熱が入る。余程好きなのだろう。

「べゼットならVですよねぇ~、そこからしておかしい。それに当時も今もワイグマ何ていう貴族は居ません。だから仲間内の商人の中には虚構じゃないかと言う奴もおります。」
そこかよ!思わずアルマは心の中で突っ込んでしまった。

「そ、そうですか」
相槌を打つくらいしか出来なかったが商人コメツキ•バッタは気にしていない。

「でも、その言葉は何故か伝わっています。そして、その言葉がわたしを商人の道に生きる決意を与えてくれたのですよ。」
「コメツキ様にとってべゼットと言う商人はとても尊敬する相手なのですね」

あたしの言葉が余程嬉しかったのか笑顔で頷いた。

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