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王都のQT

接近

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翌日、商業ギルドに仕事終わりのサインの入った送り状をソーロさんに渡して、商業ギルドでの依頼の完了としてサインを貰う。
ソーロさんからはまた来てほしいと熱心に勧誘を受けたが何とか躱す。
ソーロさんは悪くないが王都東地区商業ギルドのギルドマスタードネツクが嫌だ。二度と見たくないし、会いたくもない。

直ぐに王都東地区冒険者ギルドに行き、依頼完了の手続きをしょうとして筆頭受付嬢ランさんに会った。ランさんはとても褒めてくれて処理も直ぐにしてくれた。
実は少し焦っていたのだ。冒険者ギルドの入ったら既に酒場の隅っこでアンナさんとダリが待っていて、あたしが入ったら手を振っていたのだ。チラチラ、そちらを気にしていたからかランさんが聞いてきた。
「あちらの女性の二人を気にしているみたいだけど知り合いかしら?」

「ええ、まあ。商業ギルドの依頼中に仲良くなりました。今日は一緒に買い物でも行こうって話で」
言い訳がましく話すと何だか訳知りみたいにランさんが頷いたのだった。

アンナさんは可愛らしいワンピースの重ね着で、ダリはボーイッシュなパンツスタイルだった。仕事とは違う服装は二人の魅力を余すことなく伝えてきた。
アンナさんは18歳という年齢もさることながら女の絶頂を見せ付けるような体型は誰もが振り向かざるを得ない魅力に溢れていた。
ダリは17歳とアンナさんと然程違わない年齢で小柄でありながらメリハリのある体型でしかも黒髪黒眼で異国の雰囲気を醸しながらボーイッシュな魅力があった。
それに比べて自分と来たら、浮浪児上がりで年齢は15歳と二人より若いけど胸は薄いし痩せっぽっちで魅力無いんだなあと思って仕舞う。比べても仕方がない事と分かっていてもせめてランさんくらい普通だったらと思う。

ぼんやりそんなことを考えていたら階上からヨハンナさんが降りてきて会話に加わった。
「良かったわぁ、キュウにもお友達が出来て。」

ちらっとヨハンナさんがアンナさんとダリを二度見した。その顔はアンナさんとダリの事を知っているかのようだった。ヨハンナさんは王都東地区冒険者ギルドの副ギルドマスターだからアンナさんの事を知っていても不思議では無いけど何かあるのだろうか。
「キュウには明日からまた破軍の星デストロイスターに参加して貰えるようにパーティリーダーのローリエには連絡してあるから、今日はゆっくりして楽しんでね」

こちらに明日からの指示を出したヨハンナさんは普通だった。


◆◆ヨハンナ視点◆◆
順調にQTが王都に慣れて来ている事に安心していた。
冒険者としての適正もあるし、依頼をこなし結果を出している。依頼先からの抗議やトラブルも無い、むしろまた依頼したいと言う要望があるくらいだ。

筆頭受付嬢のランの評価も高く、そろそろE級にしても良いのでは無いかと考えているようだ。恐らく今度の依頼を破軍の星と一緒にクリアすればQTの昇級は確実だろう。

筆頭受付嬢のランとQTの話し声が聞こえたのでQTと話しておこうと受付に降りてきた。
QTにも友達が出来たと聞いたのでそちらを見て、二度見してしまう。

あの女、いつの間に王都に戻ったんだ?
あ、いや、ダリア•マルチネスが暁燿旅団の団員であることは知っていたし、あの女に執着しているのは聞いていた。
でもあの女が王都に戻っていて、しかもダリア•マルチネスが見つけていたなんて。もしかしてQTが?

後でQTに聞けば良いか。それよりも副ギルドマスターとして破軍の星との合流を言って置かなければいけない。
「キュウには明日からまた破軍の星デストロイスターに参加して貰えるようにパーティリーダーのローリエには連絡してあるから、今日はゆっくりして楽しんでね」

辛うじて心の内の動揺を抑えて言えた。
表情も・・・大丈夫な筈だ。

筆頭受付嬢のランから報酬を受け取り楽しそうに二人の女と元へ向かうQTを見送った。二人の女を見ても態度を変えない所を見るとランは知らないのだろう。


アンナ・ハサイエル。
ハサイエル侯爵家の長女。
そして3年前、あたしがまだ冒険者ギルドの副マスターでなかった頃、王家を揺るがした大事件の首謀者と目された、または被害者であろう者。

A級冒険者として大規模クランの構成員だったあたしが冒険者を辞める切っ掛けとなった大事件である。あの大事件で何人もの将来有望な人材が冒険者や傭兵となる道を選ばざるを得ない事態となり、その道を閉ざしたのだ。

あの女が何の因果かQT絡みで目の前に現れたのだ。あの女からしたらあたしなんて知らないだろうし、無関係だろうがあたしにとっては疫病神そのものに思えた。

気持ちを切り替え、仕事の内容を考える。

冒険者ギルドの自分の部屋に向かいながら階段を登る。
今、副ギルドマスターとして抱えている事案の解決をどのように対処するべきか。頭の痛い問題が増えたとボヤキながらも、今日は早めにDの元へ行って甘えたいと切望するのたった。



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