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冒険者Dとダドンの街
塩漬け案件1ーゾットの裏切り
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俺=ゾットは適当な時間に部屋を出て、厨房へ向かう。
厨房ではゾットの弟子であるマイクが夕飯の準備に掛かっていた。マイクはひたすら自分の仕事に没頭している。
このマイクはある貴族の妾の子で生まれつき頭が弱い。
後から生まれた正妻の嫡子に馬鹿にされ苛め抜かれていたが、庇っていた母親が事故で亡くなる事で逆上して嫡子を殺してしまった為、故郷を逃げ、街に隠れ住んでいた所を俺=ゾットに1年前に拾われたのだ。
マイクの事は心配要らないだろう。俺=ゾットは記憶通り今晩の調理の準備に取り掛かる。材料を用意しながら物資の入出経路の事を考えていた。
この砦に生活する盗賊集団が生きる為に必要な食材や生活必需品の事だ。
もちろん街道を往く商隊を襲う分もあるが全てか必要分として賄える訳ではない。武器弾薬を運ぶ商隊もあれば食料を運ぶ商隊もあるし、衣料品·医療品を運ぶ商隊もある。
情報はギリの様な冒険者に潜入している者や街の情報屋を通して得ているのだが、やはり城塞に立て籠もるリスクとして必要な物が揃わないのだ。
街から調達する方法もあるが盗賊団に売ってくれる筈が無い。
必然的に奪うのだが盗賊団が欲しい物を商隊が揃えて街道を往くなんて都合の良いことがある訳がないのだ。
そこで強奪王オレンは考えた。奪った不要な武器、物資を売る相手に用意させて街道を往かせ、街道の途中で交換して必要な物資を得る。
只の強奪よりリスクが低くこちらの都合も良い。
そして相手は奪った不要な武器、物資を捌ける力を持った相手が良い。秘密取引を行う事で強奪の目溢しを出来る権力を持った相手として強奪王オレンが選んだのが街の副街長ゴルバカ•トンマーだった。
こいつは一族郎党金遣いが荒く、あちらこちらで借金にまみれていた。借金相手は商人ばかり。
強奪王の誘いにあっさりと乗った。お互いがウィン・ウィンと言う悪の間柄であった。
こうして強奪王は1年以上も捕まらないで済んでいたのだった。とっても悪い奴らだ。だが、それが俺の獲物だ。弱みを握れる。
とても都合が良い事に夕飯の後、夜半に数人でその交換作業を行うらしい。無論、料理人の俺=ゾットが立ち会うのだ。今回は食料と武器の交換日なのだからだ。しかも、俺=ゾットだけで立ち合った事も何度もあるから何の問題もない。
くくくっ上手く行けば今晩中に街の副宰相の屋敷に潜り込めるかも知れない。まあ、副宰相の悪事を暴くのは仕事じゃあ無いからな。
上手く立ち回れればガッポガッポだろう。
夕飯は順調に用意できた。
砦内の連中を動けなくする方策も講じた。
後は強奪王オレンと副将バイダルと見張りで筋肉の塊のようなアシとルイの始末だ。
何食わぬ顔で二人分の食べ物と四人分の飲み物をトレイに乗せてマイクと共に砦の最上階に向かう。
ドアを押し開けテーブルに食事を用意する。オレンとバイダルの分だ。
マイクにはトレイの飲み物をアシとルイに渡すよう顎で指示する。これは何時もの事では無いため、二人は怪訝な顔をする。
「いらんのか?休憩もなく喉が乾いたろうとマイクに持ってこさせたのに」
アシとルイは何故か白痴のようなマイクに優しい。俺=ゾットが渡したら絶対に受け取らないだろうがマイクならどうだ?
「気を利かせるとは珍しいな、ゾット。」
とバイダルが血の滴るステーキに舌鼓を打ちながら声を掛ける。
「あ、いや俺じゃねぇ。マイクが鮮度の良い果実を見つけ自分で用意したんだ。」
そう俺=ゾットが告げる。
俺の言葉にマイクに優しい目を向けて、無言だか二人は受け取り、一気に煽った。そしてカップをマイクのトレイに戻す。
マイクはニコニコしている。
「マイク、戻って良いぞ。後は俺がやっておく。片付けを始めて置け!」
と俺が言うと頷いてトレイを持ったままドアを抜けていった。
機嫌良くなったかと思ったが、俺を見るアシとルイは相変わらず仏頂面だった。
「このステーキは何の肉だ?」
とオレンが貪り食いながら言う。
「ああ、そりゃロングホーンカウだ。魔物じゃなく肉食化されたでけえ牛さ。付け合せの葉っぱはケロンの葉と言って臭み消しだ。
ロングホーンカウは肉質の固さも臭みも強ぇからな、嫌う奴が多いんだよ。」
話を聞いては居ないが旨そうにガッついている。
付け合せの芋も赤い根菜も柔らかく煮てあるから肉汁が絡めば良いアクセントになる筈だか凄い勢いなので味わって居るのか心配だ。
二人共ステーキに夢中で一緒に出したスープにゃ見向きもしないなぁ。
「そのクリーム色のスープはモロコシを擦り潰して丁寧に裏ごしして、ロングホーンカウの肋骨から取った出汁で伸ばした物だ。
薄くスライスした骨髄が入ってるから肉より深い味わいがある筈だぞ。マイクの力作だぜ、そりゃ。」
説明しているのに余り聞いていない。
しかも、生野菜のサラダには手も付けてない。まぁ毎度の事だが。
オレンとバイダルがほぼ食い終わった頃、扉の近くで直立不動だったアシとルイがモゾモゾさせ始めた。凄く不審な動きをしている。
それに気付いたバイダルが二人に声を掛ける。
「アシ、ルイ、どうした!?」
モゾモゾさせていた2人が酷い汗を掻き始めた。両手が尻を押さえている。
「「失礼しまーすぅ~」」
ハモった声の後に
ブブフッブブー
ビビビービィー
物凄い音をさせて2人がドアを蹴り破る勢いで居なくなった。
厨房ではゾットの弟子であるマイクが夕飯の準備に掛かっていた。マイクはひたすら自分の仕事に没頭している。
このマイクはある貴族の妾の子で生まれつき頭が弱い。
後から生まれた正妻の嫡子に馬鹿にされ苛め抜かれていたが、庇っていた母親が事故で亡くなる事で逆上して嫡子を殺してしまった為、故郷を逃げ、街に隠れ住んでいた所を俺=ゾットに1年前に拾われたのだ。
マイクの事は心配要らないだろう。俺=ゾットは記憶通り今晩の調理の準備に取り掛かる。材料を用意しながら物資の入出経路の事を考えていた。
この砦に生活する盗賊集団が生きる為に必要な食材や生活必需品の事だ。
もちろん街道を往く商隊を襲う分もあるが全てか必要分として賄える訳ではない。武器弾薬を運ぶ商隊もあれば食料を運ぶ商隊もあるし、衣料品·医療品を運ぶ商隊もある。
情報はギリの様な冒険者に潜入している者や街の情報屋を通して得ているのだが、やはり城塞に立て籠もるリスクとして必要な物が揃わないのだ。
街から調達する方法もあるが盗賊団に売ってくれる筈が無い。
必然的に奪うのだが盗賊団が欲しい物を商隊が揃えて街道を往くなんて都合の良いことがある訳がないのだ。
そこで強奪王オレンは考えた。奪った不要な武器、物資を売る相手に用意させて街道を往かせ、街道の途中で交換して必要な物資を得る。
只の強奪よりリスクが低くこちらの都合も良い。
そして相手は奪った不要な武器、物資を捌ける力を持った相手が良い。秘密取引を行う事で強奪の目溢しを出来る権力を持った相手として強奪王オレンが選んだのが街の副街長ゴルバカ•トンマーだった。
こいつは一族郎党金遣いが荒く、あちらこちらで借金にまみれていた。借金相手は商人ばかり。
強奪王の誘いにあっさりと乗った。お互いがウィン・ウィンと言う悪の間柄であった。
こうして強奪王は1年以上も捕まらないで済んでいたのだった。とっても悪い奴らだ。だが、それが俺の獲物だ。弱みを握れる。
とても都合が良い事に夕飯の後、夜半に数人でその交換作業を行うらしい。無論、料理人の俺=ゾットが立ち会うのだ。今回は食料と武器の交換日なのだからだ。しかも、俺=ゾットだけで立ち合った事も何度もあるから何の問題もない。
くくくっ上手く行けば今晩中に街の副宰相の屋敷に潜り込めるかも知れない。まあ、副宰相の悪事を暴くのは仕事じゃあ無いからな。
上手く立ち回れればガッポガッポだろう。
夕飯は順調に用意できた。
砦内の連中を動けなくする方策も講じた。
後は強奪王オレンと副将バイダルと見張りで筋肉の塊のようなアシとルイの始末だ。
何食わぬ顔で二人分の食べ物と四人分の飲み物をトレイに乗せてマイクと共に砦の最上階に向かう。
ドアを押し開けテーブルに食事を用意する。オレンとバイダルの分だ。
マイクにはトレイの飲み物をアシとルイに渡すよう顎で指示する。これは何時もの事では無いため、二人は怪訝な顔をする。
「いらんのか?休憩もなく喉が乾いたろうとマイクに持ってこさせたのに」
アシとルイは何故か白痴のようなマイクに優しい。俺=ゾットが渡したら絶対に受け取らないだろうがマイクならどうだ?
「気を利かせるとは珍しいな、ゾット。」
とバイダルが血の滴るステーキに舌鼓を打ちながら声を掛ける。
「あ、いや俺じゃねぇ。マイクが鮮度の良い果実を見つけ自分で用意したんだ。」
そう俺=ゾットが告げる。
俺の言葉にマイクに優しい目を向けて、無言だか二人は受け取り、一気に煽った。そしてカップをマイクのトレイに戻す。
マイクはニコニコしている。
「マイク、戻って良いぞ。後は俺がやっておく。片付けを始めて置け!」
と俺が言うと頷いてトレイを持ったままドアを抜けていった。
機嫌良くなったかと思ったが、俺を見るアシとルイは相変わらず仏頂面だった。
「このステーキは何の肉だ?」
とオレンが貪り食いながら言う。
「ああ、そりゃロングホーンカウだ。魔物じゃなく肉食化されたでけえ牛さ。付け合せの葉っぱはケロンの葉と言って臭み消しだ。
ロングホーンカウは肉質の固さも臭みも強ぇからな、嫌う奴が多いんだよ。」
話を聞いては居ないが旨そうにガッついている。
付け合せの芋も赤い根菜も柔らかく煮てあるから肉汁が絡めば良いアクセントになる筈だか凄い勢いなので味わって居るのか心配だ。
二人共ステーキに夢中で一緒に出したスープにゃ見向きもしないなぁ。
「そのクリーム色のスープはモロコシを擦り潰して丁寧に裏ごしして、ロングホーンカウの肋骨から取った出汁で伸ばした物だ。
薄くスライスした骨髄が入ってるから肉より深い味わいがある筈だぞ。マイクの力作だぜ、そりゃ。」
説明しているのに余り聞いていない。
しかも、生野菜のサラダには手も付けてない。まぁ毎度の事だが。
オレンとバイダルがほぼ食い終わった頃、扉の近くで直立不動だったアシとルイがモゾモゾさせ始めた。凄く不審な動きをしている。
それに気付いたバイダルが二人に声を掛ける。
「アシ、ルイ、どうした!?」
モゾモゾさせていた2人が酷い汗を掻き始めた。両手が尻を押さえている。
「「失礼しまーすぅ~」」
ハモった声の後に
ブブフッブブー
ビビビービィー
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