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旅立ち

デーモンスパイダー戦

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デーモンスパイダーはロックボアを越えた脅威だった。

森の中にぽつんとあった大岩の裂け目に蜘蛛の巣を張り、餌を捕まえては保存していた。森に住む魔物は殆どがデーモンスパイダーの餌だったが、その子供達は弱く100匹の中数匹しか生き延びて大きくなることは無かった。しかもつがいとなると子を育て無い雄は雌に喰われてしまうのだ。さらには子が巣立つと雌親は寿命を迎えて死んでしまう。

森の木々を渡すように蜘蛛の糸があちこちに見えるようになって魔物だけでなく動物も姿を消していた。ぬたぬた進むと見つけた蜘蛛の巣はかなり大きくて俺の餌を横取りしたデーモンスパイダーが古強者であることが分かった。
蜘蛛の糸に触れぬように近付き、岩山の隙間にいくつもの繭玉を見つけた。手前の地面に置かれている比較的大きな物が四ツ目熊と分かった。僕の分体は干渉されないのを良いとこに脳から胴体に移動して内蔵を半分以上侵食していた。デーモンスパイダーは獲物を巣に放置してまた出掛けていた。

これはチャンスでは?

2つの魔石を持つスライムは分体が居る繭玉に近付き、体液を吐いて繭玉に穴を開けるとそこから分体を脱出させて合体した。スライムの体積が増える。
2つの魔石を持つスライムが近場の他の繭玉に近付き、先程と同じ様に穴を開けて、中に潜り込んで侵食し始めた。脳を目指して侵食すると魔石を見つけ、取り込む。
魔石が溶けて消えると2つの魔石を持つスライムがブルリと震えた。そして、ドロリと繭玉の穴からスライムが出てくる。

魔物じゃ無かったな。

魔石を取り込む時の感覚がホーンラビットやダートマウスとは違っていたのだ。

>スライム(粘性生命体)
>人名:記憶喪失状態
>変質魔生物
>レベル43
>スキル『捕食+5』『分裂+5』『同化』『俊敏+10』『嗅覚上昇』『肉体強化+3』『剛力+2』『威嚇』『気配探知+5』『隠蔽+5』『獣化』
>称号『転生者』『辺り一帯の支配者』

ステータスを確認するとレベルが5増えていた。魔物を取り込んだ時よりも遥かに大きくレベルが伸びていた。それから『肉体強化』と『剛力』が1づつ増えていた。特筆すべきは『獣化』だった。

『獣化』
獣人が本来の獣の姿になる為の力。獣が獣人に戻る為の力。

あの繭玉に居たのは獣人だったのか!何の獣人だったのか分からないが俺にも使えるのか?

2つの魔石を持つスライムはスキル『獣化』を使って見たが魔力を消費するだけで何も変わらない事に気付いた。

くそっ!俺には使えないのか?・・・待てよ、スキル『同化』は今まで何の力も発揮出来ていないが、これを使えば。

スキル『同化』をスキル『獣化』と同時に使用した途端に2つの魔石を持つスライムの身体が光りだした。

くそっ!駄目か。

ステータスを出したままにしていて、ステータスに変化があった事に気付く。スキル『獣化』が『人化』に変わって居た。

おお!スキルが変化したぞ!『人化』なら人の姿になれるのかも知れない。

そこで、2つの魔石を持つスライムは近づきつつ歩く気配に気が付いた。

不味い。デーモンスパイダーが戻って来る。

2つの魔石を持つスライムは素早くその場を動き、岩の裂け目の奥に移動してスキル『隠蔽+5』を使った。すると2つの魔石を持つスライムの外皮が岩のような見た目となった。『隠蔽+5』が『隠蔽擬態+5』となった瞬間だった。

巣に戻ったデーモンスパイダーは巣にあった気配が消えた事に気付いていた。遠目からだったが光が視えていたのだ。光を使うのは人間達の筈だった。
巣の糸を伝って移動すると繭玉が揺れた。繭玉の揺れから中身が軽く成っているのに気付いた。
だからデーモンスパイダーは人間がやって来て繭玉の中身を盗み逃げ出したと考えた。大岩の裂け目の前には蜘蛛の巣があるから裂け目の奥に逃げたと考え、地上に降りて慎重に進み始めた。薄暗い裂け目でも蜘蛛の目には何ら問題は無い。
人間が居るとしたらこの奥に違いないとデーモンスパイダーは睨んでいたのだ。

岩の裂け目に潜んでいた2つの魔石を持つスライムはデーモンスパイダーが自分の近くに来たことを全天視覚と魔力に依って捉えた。
岩の裂け目は森の中に合って湿度が高かった。そして暗がりであることで気温も低かった。そのせいで天井より水滴が落ちている状況にあった。

2つの魔石を持つスライムは人間の思考を持つが故に、この環境を利用することを考えていた。
正面切って相対したらデーモンスパイダーの2つの鎌に依って切り裂かれるだろう。『俊敏+10』による速さはデーモンスパイダーの移動速度を越えている可能性はあるけど鎌を躱せるとは限らない。

自分の強みは多様なスキルを持っている事だと考えていた。

『分裂+5』『俊敏+10』『肉体強化+3』『剛力+2』『隠蔽擬態+5』

これらのスキルを有効活用することがデーモンスパイダーに勝つ要因になると考えた。

そしてある作戦を考えたのだった。







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