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しおりを挟む恋人でも友達でもない今まで赤の他人だった年齢も性別すらも違う人間同士が、紙切れ一枚で家族になったところで、はい仲良くなりました、とは、そりゃいかないだろう。
私は手放しで受け入れたものの、義弟にとってはそうじゃなかったのかもしれない。
小学五年生という多感なお年頃ということもあり、いきなりできた義母と義姉に色々と思うところがあるんだろう。
そう思ってしまうのが自然なくらい、義弟はそれはそれは見事に私と母を無視していた。
初めこそショックを受けて凹んだりもしたが、それが毎日と続いていけば嫌でも慣れるもので。
実の息子の態度に難色を示す義父を宥めて、私と母は努めて気にしないように生活をしていくことにした。
……でもやっぱり、できれば仲良くなりたいなぁ。
はぁ、とここ最近癖になったため息が漏れる。
早いうちから父を亡くし、自分と子どもを養うために常に忙しかった母。
遅くまで仕事していた母が帰ってくるのを、一人っ子の私はいつも心待ちにしていた。
一生懸命仕事をして私を育ててくれた母には感謝しかない。そう、感謝しかないのだけど。
それでも、やっぱり家族との会話というものに飢えていたんだと思う。
母に紹介された時から義父はとても気さくで優しくて、とてもいい人なのだけれど、やはり血の繋がらない娘に対してどこか適度な遠慮がある。
それは別に構わない。私だってまだまだ多少なりとも大人の男性に遠慮みたいなものを持っているから。
私と義父の間にある居心地のいい壁はきっとこれからも続くんだろうな、と初めからなんとなく感じている。
それに母同様義父も仕事が忙しい人で帰ってくるのが遅いので、日々の会話はあまりたくさんできなかった。
だからこそ、義弟とだったら、と期待をしていたのかもしれない。
家に帰れば一人だった。それが二人になる。
「ただいま」と言って、「おかえり」と返ってくる。
誰かと過ごしながら帰り人を待つそんな生活が、ようやく過ごせるようになったのだと。
きっと、義弟とはそんな生活をしていくのだと。
やんわりと淡い希望を抱いていた。
…………まぁ、未だに「おかえり」と言ってもらえたこともないのが現状だけど。
義弟には義弟なりの理由があって、あえて口を聞いてくれないんだろうことは分かってる。
本当の兄弟のようになりたい、なんてそんな高望みはしない。
それでもやっぱり、いつか義弟の口から「おかえり」という言葉が聞けるくらいには仲良くなりたいとは思うので。
本気でうざがられない程度に、これからと義弟に話しかけ続けていこうとかなとは思っている。
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