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意識するきっかけ2
しおりを挟む数十分後。軽く目を通した漫画や小説が散らばるその中心で。
「姉ちゃん……まじか……」
煩いぐらいの脈を感じながらも俺は酷く脱力していた。
それもそうだろう。エロとは縁遠いものかもと思いたかったのに、ケースの中身は案の定性描写のあるあれやこれやのオンパレードで。女性向けとは言えかなり際どい描かれ方がされているのも中にはあって、正直、俺の持ってるエロ本といい勝負かもしれない。
女性向けのエロっていうとなんかこう、ふわっとしてさらっと終わる、そんなイメージを持っていただけに受けるダメージが倍率だ。
そしてそれを姉ちゃんが読んでたかと思うと。……うん、というか少し落ち着こうか愚息よ。
ひっひっふーと明らかにそぐわない呼吸法で心臓(と愚息)を落ち着かせ、散らばした諸々を片していく。
そして再びえろえろな諸々をベッド下へと戻し終えるとよくわからない疲れがいっきにどっと出てきたのでそのままベッドに突っ伏してへばった。
姉ちゃん……なんてもの見てんだよ……。
自分だってエロ本見てるけど、という事実は高い高い棚に上げておく。
「……にしても」
どくどくと速いままの脈拍を聞きながらさっき内容を確認していた時に気付いたえろえろな諸々の共通点を思い出し。
「なんで義理ものばっかなの姉ちゃんー!!」
ばふっと布団に顔を埋めて叫び悶えた。
その言葉からも分かるようにあの中のものは「義理の家族同士」の恋愛ものばっかりだった。
義理の父娘から始まり、義理の母息子、義理の兄妹、そして好みなんだろうか一番数が多かった義理の姉弟。まるで判子でも押したように全て全て義理、義理、義理。パンドラの箱を制覇する頃には「義理ってナニ?」と若干のゲシュタルト崩壊に至ったほどだ。
これだけ詰められれば、そういうジャンルが好きなんだなと生ぬるい気持ちになって終わるところなんだと思うけど、ところがどっこい。
俺的にはそれたけで終わらせる訳にはいけない事情があった。
なんてったって、まさしく俺と姉ちゃんがその「義理の姉と弟」ってやつだからな!
それが一番好きな組み合わせって!
どういうことなの姉ちゃんっ!!
一人唸りながらばっふばっふ布団を叩いて悶える。
そしてふと、その義姉弟ものの漫画の内容が頭を過った。
血の繋がらない姉弟。家族と思いたいのにどうしても異性として意識してしまう姉。そしてそれは弟も同じで――
「っ~~~!!!」
まさかまさかまさか。
ばっふんと一際大きく布団に拳を叩きつける。
今しがた浮かんだ思考を振り切るつもりだったのに、何の意味にもならなかったらしい。
もしかして、もしかしたら、姉ちゃんもあの漫画の姉みたいに義弟の俺のこと異性として意識してる……とか……?
いくらバカだバカだとよく言われる俺でも、通常ならばこんなとんでも思考なんて繰り広げなかっただろう。
けれどえろえろな諸々により平常心を奪われていた俺の頭は本当にバカなことこの上なくそんなことあるはずがないのにそう結論を弾き出していた。
そして人間というのは単純なもので。
姉ちゃんが俺を意識してるのかもしれない。
そう思った途端に、姉ちゃんの部屋に居ることや姉ちゃんのベッドに突っ伏してるという事実に顔が熱くなり鼓動がどんどん速くなっていった。
「っ……」
布団から伝わる姉ちゃんの匂い。普段は気になりもしないくせに、今ばかりはその香りにクラクラしてくる。
早く退かなければ、ヤバイ。
そうは思うものの身体は鉛でも埋め込んだみたいにぴくりとも動いてくれない。
それどころか、より深く取り込もうとでもするように深呼吸していた。
勿論無意識のうちに、だ。
段々と鼻息荒くなってくあたり我ながらとてもキモい。
そんでもって。
……何反応してんですか愚息よ。
さっき落ち着かせた筈の愚息が、ばっちりしっかり固くなってきていた。
匂いだけでこれって。かなり変態くさくないか。
っていうか変態ですよね。姉ちゃんの匂いで興奮するとか。本当に早く止めないとどうしようもない変態ですよね。
分かってる。分かっていますとも。
……でも
「ん……も、少し……」
どうやら俺の身体は何も分かっていないようですね!
もう少しじゃねーよ!
止めるどころか徐々にベッドの上に乗り上がって匂いを堪能してる俺に一割程度の冷静な俺がそう突っ込み。だけども愚行は止まることなく。
はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す度、甘くすら感じる匂いに頭が痺れていく。
それで興奮を煽れど、しかしその先にまでは至らない。
もどかしい。
その衝動のまま、ついには直接的な刺激を求めてズボンを寛げ下着の中に手を入れて昂っているそれに触れていた。
「ふっ……ん……はぁ……」
望む快楽を自分で与えていく。口からもれる声がいつになく欲に濡れているのは、考えるまでもなくこの異常な状況のせいなんだろう。
姉ちゃんの部屋でベッドの匂い嗅ぎながらオナニーって……。
賢者モードになったら死ねるな。空しさと申し訳なさと自己嫌悪で間違いなく死ねるな、うん。
「ねぇっ……ちゃ……!」
俺がこんなことしてるって姉ちゃんが知ったらどうなるだろう?
罵られる?嫌われる?最悪、家族としての縁を切られるかもしれない。だけど、そうされても仕方ないほどのことをしてしまっているんだ。
……もし俺が姉ちゃんの立場だったら。
姉ちゃんが俺の部屋でおんなじことしたらきっと嫌いにな……らねぇわやっぱ。
むしろ更に興奮する。
姉ちゃんが俺のベッドでオナニーとか……!
匂い嗅いで俺の名前呼んでるとか……!
嫌いになるどころか美味しくいただきたいぐらいなんですが……!
「っ……あぁっ!」
まっピンクな想像(と言う名の妄想)をしていたらそれで更に煽られてとうとう精を吐き出した。しばし射精の余韻に浸る。しかしそれも、下半身の不快感にとって変わっていった。
ズボンも下着も履きっぱなしだ。もれなく下着の中がぐちゃぐちゃのどろどろになっていて、その気持ち悪さに眉を寄せる。
……何より気持ち悪いのは俺自身とか知ってますよ、はい。
間もなく賢者モードに突入した俺は案の定な自己嫌悪やら何やらを抱えつつ、いつまでも姉ちゃんの部屋にいるわけにもいかないので……というか、いつまでもいたらまた愚息が元気になってしまうような気がしたのでそそくさと自室に戻っていった。
ありがたいことに。
その日の俺の行動の数々は一つとして姉ちゃんバレることがなかった。
まあ、それからというもの。
表面上は今まで通りを装いながらも内心姉ちゃんのことを意識しまくりな俺になってしまったわけで。
その内取り返しのつかないことしでかしそうだよなぁ、俺。
と、呑気に考えていたことを後日本当にやらかしてしまう上、本気で姉ちゃんに惚れてしまって口説き落とそうと四苦八苦することになるなんてこのときの俺は全く思ってもいなかったのだった。
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