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しおりを挟む口でもしてもらいたいけど、他のこともしてもらいたいし、俺からもしたいなぁ。なんて、恍惚そうにうっとりとぶつぶつ世迷い言をもらす義弟にブリザードの視線を向ける。
暫く自分の世界に浸っていた義弟は、その視線に気付くやいなやシュンとしおらしく項垂れた。そして、
「……ねぇ、だめ?」
飼い主に捨てられた犬さながら縋るように見つめてくるもんだから思わず良心が痛くなった。が、だめだ、これが奴の手なのだ。絆されるわけにはいかない!
「だめったらだめ!」
「……ちぇっ」
若干の防御も含めて胸の前で大きくバツ印を作る。しつこくても今度は絶対に流されないんだからね!なんて意気込んだからなのだけど、義弟は少しだけ不満を表したもののあっさりと引き下がり拍子抜けした。
「……これ以上迫ったら本当に姉ちゃんに嫌われそうだし、今回は諦める」
まるで次もあるみたいな言い方に引っ掛かりを覚えつつも、どうやら(性的な)危機的状況からの脱出ができるようでほっと胸を下ろす。
精神力を削られはしたものの、体力の方はそれなりに回復した。
だったらこの部屋からは早く抜け出した方がいいだろう。
善は急げだ。
そんなわけで、ベッドから素早くおりると一目散にドアに向かった。
「あ」
ドアノブに手を伸ばしかけてところで、そういえば、とあれでそれなことをしていた最中に疑問に感じていたことを思い出した。
まあ、この際だし聞いてみるか。
「一つ聞きたいんだけどさ」
「何?」
「いったい何が切っ掛けで私のこと意識しだしたのさ」
それも無意識で押し倒したあげく我慢しきれなくなったぐらいの、とは流石に言えずのどの奥に押し込む。
一瞬ぽかんと呆けた義弟は、すぐに気を持ち直して思い出すようにぽつりぽつりと私の問いかけに答えてくれた。
「結構前に姉ちゃんの漫画読もうと部屋に行った時だったんだけど」
ふんふん。
「机の上に出しっぱなしにしてあった漫画が見たことない表紙だったから読んでみたんだ」
ふんふん。
「その内容が義理の姉と弟の恋愛もので」
ふんふ……ん?
「最終的にはセックスしてて」
……。
「それ、二巻だったから一巻も探して見つけたら、似たような内容のものも同じ場所にたくさんあって」
…………。
「あー、姉ちゃんこういうの好きなんだなーって思って」
………………。
「……もしかして、俺のこと、少しだけでもそんな風に見てんのかな、なんて思ったらむしろ俺の方が気になるようになっちゃったというか……」
「うん、分かった。ありがとう。そしてお前はやっぱりバカだ」
「えっ、ちよ、姉ちゃん!!」
待ってよ!なんて言葉に勿論待つはずもなく、すべるような滑らかな動きで義弟の部屋から即退室した。
素早く自室に戻りドアを閉める。バタン、と大きな音をたてたそれに背中を預け、そのままずるずると崩れ落ちた。
「まじでか……」
いくら互いに漫画を読みあってるとはいえど、真に受けやすい義弟には流石に義姉弟もの(エロ付属)を見せるわけにはいかねぇよなと、そういったジャンルの本は見つからないように隠していたというのに。
まさか発見された上にばっちり影響出ちゃってるとか。
そして本当に真に受けちゃってる義弟は本当にバカだと思う。
二次元と現実の趣向は必ずしも一致するとは限らないのだよおバカさん。
うん、でもそれよりなにより。
「あの漫画出しっぱだったとか私の大バカァァァァ!!」
結局あれって、ある意味自業自得でもあったってことですか!?
うわぁぁぁぁぁぁ!!
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