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三話 二通の手紙

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一通目の手紙は、中央府からの「税金滞納処分通知書」です。

――――――――――

ダニエル・ノイラート

今年分の納税について、再三お知らせしてまいりました通り、不足分が支払われておりません。

来月末までに支払われない場合は、法に従い、爵位はく奪の上、差押を実行いたします。


中央府 財政担当

――――――――――

ダニエルは間違いなくお父様の名前です。つまり、我が家は税金を滞納していたということです。それも差押寸前まで。



そして二通目は、エドガー様のお父様、グレアム公爵からのものです。

――――――――――

ダニエル・ノイラート伯爵

貴殿のご令嬢とエドガーとの婚約は、なかったことにしていただきたい。

理由はご自分が一番理解しているだろう。


ショーン・グレアム

――――――――――

そこにはエドガーとの婚約がなくなったことが記されていました。



「お父様、我が家は伯爵家であるにも関わらず、財政的に厳しいようですね。そして、それに気づいたグレアム公爵家は、婚約をなかったことにしたようです。大変ですわね」

「サラ、お前は知っていたのか?!」

お父様はわなわなと震えながら、手紙を握りつぶしてしまいました。そんなことをしても無駄ですのに。

「もちろん知っていましたわ。なぜ中央府からの手紙を私が持っているか分かりますか?先週、私を置いて三人で旅行に行かれましたよね?その時にお預かりしたのです。お渡しするのが少し遅れました」

中央府からの手紙を受け取った日、運命は私に味方したと思いました。没落しかかっていた我が家、妹にしか興味がない両親、欲しがりな妹、その全てから解放される方法があるのだと気づかせてくれたのです。

「残念ながら、私はもうリーベルスの人間ですので、どうする事も出来ません。お父様もご存じでしょう?姓を変え、相続権を放棄した人間に、家の負債を相続する権利はありません」

「お姉様、何を言っているの?まだ男爵と結婚した訳ではないのでしょう?だったら……」

ティナが喚いていますね。あぁ、言うのを忘れていたわ。

「実は既に籍を入れているのです。ついでに相続権も放棄してきました。私は成人しているので、親の承認は必要ありませんでしたの。これも皆さんが旅行中のことですわ。何なら役所で確認してみてください」

そう言った時、我が家に二人の訪問者がやってきました。



「遅かったですわね、エドガー様、ハンス」

「すまない、書類を発行するのに時間がかかってね」

「エドガー様が余計な書類まで発行していたからですよ」
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