上 下
5 / 5

5

しおりを挟む
ユーネル伯爵の家につくと、伯爵と夫人が温かく迎えてくださいました。

「ようこそ我が家へ。今日から君の家だ」
「アリスちゃん、今日からよろしくね」

優しく迎え入れてくれたお二人の姿に、胸がいっぱいになりました。

「こんな私を受け入れてくださって、本当にありがとうございます。一年間、よろしくお願いします」

そう、一年間。私がシュカ様と結婚をする一年後まで、ユーネル家が私の面倒を見てくださるのです。

「そんなにかしこまらないで。もうあなたは私達の娘なんですからね。一年と言わず、結婚してからも時々は顔を見せに来なさいね」

「そうとも。シュカ君が嫌になったらいつでも帰ってきなさい」

「ちょ……伯爵、冗談はやめてください!アリス、この家に帰るのは構わないけれど、最後には僕のもとに戻ってきてくださいね」

冗談混じりに話している三人を見ていると、とてもあたたかい気持ちになりした。少し前までは予想もしていなかった光景です。

これからはこの方達が、私の家族なのですね。





ユーネル家の一員になってから、もう三ヶ月程が経とうという時、ゴルダン家主催のお茶会に招かれました。

ゴルダン公爵は、シュカ様と私の結婚を心待ちにしているようで、とても嬉しい限りです。シュカ様に謝罪にうかがった際、本当に結婚すれば良いと提案してくださったのは、公爵でした。

我が伯爵家は、東の国と農作物の取引を頻繁にしているため、その人脈が魅力的だったのでしょう。ユーネル伯爵もゴルダン家との繋がりが出来て喜んでいましたから、お互いに損のない縁談だったようです。

私としては、迷惑をかけるはずだったのが、両家の発展に貢献できるようになったので嬉しい限りです。シュカ様とも仲良くさせていただけて、なんとも楽しい日々です。少し前の生活が嘘のようですね。




そういえば、私の昔の家族ですが、社交界で今まで以上に悪い噂を流されているようです。今までの振る舞いに加えて、娘にまで愛想を尽かされたのですから。

もう新しい後継ぎが産まれることもないでしょうし、あの家は今の代で潰えるでしょう。そのうち名前すらも忘れられてしまうでしょうね。

まあ、もうどうでも良いことですね。





「アリス、こちらに来てください。少し挨拶してまわりましょう」

「はい、今行きますわ」

もう私は新しい家族と幸せに暮らしているのですから。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です

朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。 ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。 「私がお助けしましょう!」 レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)

悪役令嬢になる前に、王子と婚約解消するはずが!

餡子
恋愛
恋愛小説の世界に悪役令嬢として転生してしまい、ヒーローである第五王子の婚約者になってしまった。 なんとかして円満に婚約解消するはずが、解消出来ないまま明日から物語が始まってしまいそう! このままじゃ悪役令嬢まっしぐら!?

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです

あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」 伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?

【完結】強制力なんて怖くない!

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のエラリアは、十歳の時に唐突に前世の記憶を取り戻した。 どうやら自分は以前読んだ小説の、第三王子と結婚するも浮気され、妻の座を奪われた挙句、幽閉される「エラリア」に転生してしまったらしい。 そんな人生は真っ平だと、なんとか未来を変えようとするエラリアだが、物語の強制力が邪魔をして思うように行かず……? 強制力がエグい……と思っていたら、実は強制力では無かったお話。 短編です。 完結しました。 なんだか最後が長くなりましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~

可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※

【完結】え?王太子妃になりたい?どうぞどうぞ。

櫻野くるみ
恋愛
10名の令嬢で3年もの間、争われてーーいや、押し付け合ってきた王太子妃の座。 ここバラン王国では、とある理由によって王太子妃のなり手がいなかった。 いよいよ決定しなければならないタイムリミットが訪れ、公爵令嬢のアイリーンは父親の爵位が一番高い自分が犠牲になるべきだと覚悟を決めた。 しかし、仲間意識が芽生え、アイリーンに押し付けるのが心苦しくなった令嬢たちが「だったら自分が王太子妃に」と主張し始め、今度は取り合う事態に。 そんな中、急に現れたピンク髪の男爵令嬢ユリア。 ユリアが「じゃあ私がなります」と言い出して……? 全6話で終わる短編です。 最後が長くなりました……。 ストレスフリーに、さらっと読んでいただければ嬉しいです。 ダ◯ョウ倶楽部さんの伝統芸から思い付いた話です。

悪役令嬢を彼の側から見た話

下菊みこと
恋愛
本来悪役令嬢である彼女を溺愛しまくる彼のお話。 普段穏やかだが敵に回すと面倒くさいエリート男子による、溺愛甘々な御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...