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ジュリアスからの課題
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「ヘンリーの誕生日ってもうすぐなんですか?」
「えー知らなかったの? 婚約者なのにぃ?」
ジュリアスの言い方に、ぎくりとした。怪しまれている。軽い言い方だが、ジュリアスにはいつも見透かされている気がする。
「あの、聞く機会がなくて……何日ですか?」
「来月の十八日だよ。後一ヶ月ちょっとだね」
(そういえば以前、婚約破棄の計画表を見せられた時に書いてあったような……)
婚約破棄の計画表を見せてもらった際に生誕祭の文字を見た気がするが、さすがに日付までは覚えていなかった。
「毎年どのような感じなのですか? パーティーをしたり……?」
「あいつは大がかりなことを嫌うからねー。親しい友人を呼ぶだけのささやかな生誕祭って感じだね。多分今年も同じ感じだと思うよ」
ジュリアスの言葉にホッと胸を撫でおろす。大変な準備はなさそうだ。それでも婚約者としては、準備を手伝うべきだろう。
当然、プレゼントの用意もしなければならない。
「何か用意すべきですよね?」
「そりゃあ、ねぇー? 僕だったら、婚約者から何も貰えなかったら泣いちゃうかも」
「ヘンリーは何が好きなのでしょうか? 何をあげれば……」
「え、分かんないの? ……婚約者なのに?」
今度の「婚約者なのに?」の言い方には、多少の驚きが見え隠れしていた。
婚約を発表から数ヶ月が経っているのに、好きな物すら知らないのは変かもしれない。
(聞こうと思っていたけれど、聞きそびれていただけなんです……! 本当です!)
クリスティーナは心の中で必死に弁明した。
「はい、婚約者なのに、です……。何か好みとか、教えてもらえませんか?」
もう、こうなったらジュリアスに頼るしかない。クリスティーナよりも付き合いが長いのだから、好き嫌いも分かっているだろう。
「うーん、そうだなあ。あいつの好きな物って……じゃあ、トクベツに教えてあげようかな」
ジュリアスは少し考えた後、何か良いものを思いついたらしい。
キラキラとした笑顔でクリスティーナにぐっと近づくと、耳元でささやいた。
「ヘンリーが好きなのは、クリスティーナだよ」
「か、からかわないでください!」
甘くささやかれたことに驚いて、クリスティーナは数歩後ずさった。
「心外だなぁ、本当のことなのに。要は、君の気持ちがこもった物を渡せばいいってこと! 物はなんだって構わないよ。ヘンリーに好きとか嫌いとかないもん。あ、女性は嫌いだけど」
「あ、あぁ……なるほど。って、普通に教えてくださいよ!」
「ごめんごめん、クリスティーナはいい反応くれるからさー。ヘンリーは最近からかっても無反応だから、新鮮で」
クリスティーナが抗議しても全く悪びれる様子はない。これが自分の上司なのだと受け入れるしかないのだろう。
けれど、ヘンリーもこんな風にからかわれているのだと思うと、少し面白かった。
「じゃあ、ちゃーんと愛の告白をして、心を込めたプレゼントを贈ること! 楽しみにしてるからねっ」
裏庭の散策が終わると、ジュリアスはクリスティーナを解放した。
ご機嫌に去っていくジュリアスを見ながら、クリスティーナはまた頭を抱えた。
(心を込めたプレゼント……余計にハードルが上がった気がするわ。実際何を贈れば良いの?)
それに、ジュリアスからの課題はかなり重たいものだった。
「もう……正直に告白してしまおうかしら」
思わずつぶやいた言葉に、自分でハッとした。
振られたら、少し早いけれど婚約を破棄すれば良い。
期間は一年だったけれど、こちらから破棄すれば、ヘンリーは傷心しているということに出来る。そうして残りの期間を過ごしてもらえばいい。
違約金だって払おう。心がそう決まれば、クリスティーナの目の前はパッと明るくなった。
「よしっ、やるか!」
「えー知らなかったの? 婚約者なのにぃ?」
ジュリアスの言い方に、ぎくりとした。怪しまれている。軽い言い方だが、ジュリアスにはいつも見透かされている気がする。
「あの、聞く機会がなくて……何日ですか?」
「来月の十八日だよ。後一ヶ月ちょっとだね」
(そういえば以前、婚約破棄の計画表を見せられた時に書いてあったような……)
婚約破棄の計画表を見せてもらった際に生誕祭の文字を見た気がするが、さすがに日付までは覚えていなかった。
「毎年どのような感じなのですか? パーティーをしたり……?」
「あいつは大がかりなことを嫌うからねー。親しい友人を呼ぶだけのささやかな生誕祭って感じだね。多分今年も同じ感じだと思うよ」
ジュリアスの言葉にホッと胸を撫でおろす。大変な準備はなさそうだ。それでも婚約者としては、準備を手伝うべきだろう。
当然、プレゼントの用意もしなければならない。
「何か用意すべきですよね?」
「そりゃあ、ねぇー? 僕だったら、婚約者から何も貰えなかったら泣いちゃうかも」
「ヘンリーは何が好きなのでしょうか? 何をあげれば……」
「え、分かんないの? ……婚約者なのに?」
今度の「婚約者なのに?」の言い方には、多少の驚きが見え隠れしていた。
婚約を発表から数ヶ月が経っているのに、好きな物すら知らないのは変かもしれない。
(聞こうと思っていたけれど、聞きそびれていただけなんです……! 本当です!)
クリスティーナは心の中で必死に弁明した。
「はい、婚約者なのに、です……。何か好みとか、教えてもらえませんか?」
もう、こうなったらジュリアスに頼るしかない。クリスティーナよりも付き合いが長いのだから、好き嫌いも分かっているだろう。
「うーん、そうだなあ。あいつの好きな物って……じゃあ、トクベツに教えてあげようかな」
ジュリアスは少し考えた後、何か良いものを思いついたらしい。
キラキラとした笑顔でクリスティーナにぐっと近づくと、耳元でささやいた。
「ヘンリーが好きなのは、クリスティーナだよ」
「か、からかわないでください!」
甘くささやかれたことに驚いて、クリスティーナは数歩後ずさった。
「心外だなぁ、本当のことなのに。要は、君の気持ちがこもった物を渡せばいいってこと! 物はなんだって構わないよ。ヘンリーに好きとか嫌いとかないもん。あ、女性は嫌いだけど」
「あ、あぁ……なるほど。って、普通に教えてくださいよ!」
「ごめんごめん、クリスティーナはいい反応くれるからさー。ヘンリーは最近からかっても無反応だから、新鮮で」
クリスティーナが抗議しても全く悪びれる様子はない。これが自分の上司なのだと受け入れるしかないのだろう。
けれど、ヘンリーもこんな風にからかわれているのだと思うと、少し面白かった。
「じゃあ、ちゃーんと愛の告白をして、心を込めたプレゼントを贈ること! 楽しみにしてるからねっ」
裏庭の散策が終わると、ジュリアスはクリスティーナを解放した。
ご機嫌に去っていくジュリアスを見ながら、クリスティーナはまた頭を抱えた。
(心を込めたプレゼント……余計にハードルが上がった気がするわ。実際何を贈れば良いの?)
それに、ジュリアスからの課題はかなり重たいものだった。
「もう……正直に告白してしまおうかしら」
思わずつぶやいた言葉に、自分でハッとした。
振られたら、少し早いけれど婚約を破棄すれば良い。
期間は一年だったけれど、こちらから破棄すれば、ヘンリーは傷心しているということに出来る。そうして残りの期間を過ごしてもらえばいい。
違約金だって払おう。心がそう決まれば、クリスティーナの目の前はパッと明るくなった。
「よしっ、やるか!」
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