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過労(2)

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(帰ったら皆のデータをまとめて、椅子のことも報告書を作っておこう。誰か家具職人を紹介してもらえる人を探そうかな……)

 とりあえず今から戻ってデータだけまとめれば、今日中に研究所に持っていけるかもしれない。あと一踏ん張りだ。
 急いで馬車に向かうと、ヘンリーが待っていた。ヘンリーも聞き取り調査が終わったのだろう。

(丁度いいわ。これで今日分のデータが全て揃ったわね)

 クリスティーナはヘンリーに向かって手を振った。

「ヘンリー! 今から帰ってハーブの検証データをまとめようと思うの。今回のはかなり期待できそうだったわ!」
「クリスティーナの方もですか? こちらも良い結果が得られましたよ。皆さんの腰痛に、だいぶ効果があったみたいですね」
「やっぱり! じゃあ早くまとめて研究所に持っていかなくちゃ。カーミラ、きっと喜んでくれるわ!」

 ヘンリーに駆け寄ろうとした時、クリスティーナは目の前の景色がぐにゃりと歪んで見えた。

「あら?」
「クリスティーナ? ……クリスティーナ!」

 クリスティーナは気を失って、その場に倒れこんでしまったのだ。
 ヘンリーや馬車の御者が慌ててクリスティーナに駆け寄る。

「すまない! 医者を手配してくれ!」

 クリスティーナは薄れゆく意識の中で、ヘンリーが叫んでいる姿を見た。

(ごめんなさい、ヘンリー……わ、たし、また貴方を……悲し、ませて、い……)

 焦るような声も聞こえていたが、だんだんとその声も遠くなって、最後には何も聞こえなくなった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(なんだろう……すごく心地が良いわ。温かい……)

 気を失っている最中、クリスティーナは夢を見ていた。
 じんわりと温かく、雲の上にいるような夢だ。ふわふわとした感覚は心地良く、じんわりと疲れがとれていくようだった。

(気持ちが良すぎて……眠ってしまいそう)

 クリスティーナはふわふわした感覚を楽しみながら、四肢を投げ出した。
 しばらくの間ふわふわと浮いていたのだが、急に身体が冷たくなった。硬い地面の上にでも降ろされた気分だ。

(嫌、……まだ、さっきの所にいたい)

 腕を持ち上げて、手を伸ばすと、温かいものに触れた。

(あぁ、あった。温かい……これで眠れる)

 クリスティーナは意識が落ちていくのを感じた。

『クリスティーナ? 気がつきましたか?』

 その途中、ヘンリーの声が聞こえた気がした。

(ヘンリーの声、落ち着くわ……ずっと聞いていたい)

 クリスティーナは、ヘンリーの声を聞きながら再び意識を手放した。
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