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覚醒(2)
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クリスティーナが呆然としている間に、ヘンリーが使用人たちを呼んできてくれた。
「お嬢様! 良かったー!! もう、心配していたんですよー!」
入ってくるなりヴェラが抱きついてきた。目には涙を溜めている。
「顔色が良くなりましたね。安心しました」
続いて入ってきたマシューは、クリスティーナの顔を見て微笑んだ。きっと一番迷惑をかけただろうに、疲れ一つ見せずにこちらの心配をしてくれている。
「消化に良いお食事をご用意しました。たくさん食べてくださいね」
いつ起きるか分からないのに食事を用意してくれていたモニカは、テーブルの上に美味しそうなご飯をたくさん並べてくれた。
(どうしよう……すごく嬉しい)
心配をかけてしまって申し訳ない気持ちもあるのに、皆が自分のことを心配してくれたことが、この上なく嬉しかった。
「皆、迷惑をかけてごめんなさい。これからは体調には気をつけるわ。心配してくれて、本当にありがとう」
クリスティーナは、皆に心からの感謝を述べた。
……そこまでは良かったのだ。
「それでは、後はお二人でごゆっくりどうぞ」
「あ、ちょっと!」
使用人の三人がぞろぞろと退室していく。
何故かヘンリーと二人で食事をとることになってしまったのだ。
帰ろうとしていたヘンリーに、モニカが「ヘンリー様も是非ご一緒に」と声をかけ、ヘンリーが二つ返事で了承したのだ。そのため、クリスティーナが口を挟む隙はなかった。
(ど、どうしてっ……)
ここは寝室で、しかもクリスティーナはベッドの上で座ったままだ。今更ではあるけれど、こんな姿を見られながらの食事なんて、したくはなかった。
「あのー……やっぱりテーブルで食べましょう? 私も少しは動けるし」
「駄目です。倒れてから何も食べてないでしょう? また目眩で倒れたらどうするんですか?」
「でもベッドの上じゃ食べ辛いし……」
ちらりとサイドテーブルに並ぶ料理を見る。横から料理をとるのは中々難しそうだった。
「はい、どうぞ」
いつの間にかヘンリーが、スプーンをこちらに向けている。
スプーンの上では美味しそうなリゾットが湯気を立てていた。
「え? ど、ど……」
「どうしたんですか? 早く食べてください。冷めますよ?」
有無を言わさぬ雰囲気に、クリスティーナは断ることが出来なかった。
大人しく口を開けると、ヘンリーがそっとスプーンを口に近づけた。
「……美味しい、です」
「それは良かったです」
ヘンリーはしたり顔で満足そうだ。クリスティーナに食べさせると、自分の分もゆっくりと食べ始めた。
(こ、これで食べろってこと!? いやいや流石にそれは……)
もう自分で食べられる。クリスティーナはそう言おうとして口を開くと、ヘンリーがすかさずスプーンを口元に持ってきた。
「も、もう自分で食べ」
「はい、食べて」
「あの、ヘンリー? 今日は一体どうし」
「ほら、どうぞ?」
クリスティーナが何か言おうとする度にスプーンを口にあてがわれ、気がつけば全て食べきっていた。
「お嬢様! 良かったー!! もう、心配していたんですよー!」
入ってくるなりヴェラが抱きついてきた。目には涙を溜めている。
「顔色が良くなりましたね。安心しました」
続いて入ってきたマシューは、クリスティーナの顔を見て微笑んだ。きっと一番迷惑をかけただろうに、疲れ一つ見せずにこちらの心配をしてくれている。
「消化に良いお食事をご用意しました。たくさん食べてくださいね」
いつ起きるか分からないのに食事を用意してくれていたモニカは、テーブルの上に美味しそうなご飯をたくさん並べてくれた。
(どうしよう……すごく嬉しい)
心配をかけてしまって申し訳ない気持ちもあるのに、皆が自分のことを心配してくれたことが、この上なく嬉しかった。
「皆、迷惑をかけてごめんなさい。これからは体調には気をつけるわ。心配してくれて、本当にありがとう」
クリスティーナは、皆に心からの感謝を述べた。
……そこまでは良かったのだ。
「それでは、後はお二人でごゆっくりどうぞ」
「あ、ちょっと!」
使用人の三人がぞろぞろと退室していく。
何故かヘンリーと二人で食事をとることになってしまったのだ。
帰ろうとしていたヘンリーに、モニカが「ヘンリー様も是非ご一緒に」と声をかけ、ヘンリーが二つ返事で了承したのだ。そのため、クリスティーナが口を挟む隙はなかった。
(ど、どうしてっ……)
ここは寝室で、しかもクリスティーナはベッドの上で座ったままだ。今更ではあるけれど、こんな姿を見られながらの食事なんて、したくはなかった。
「あのー……やっぱりテーブルで食べましょう? 私も少しは動けるし」
「駄目です。倒れてから何も食べてないでしょう? また目眩で倒れたらどうするんですか?」
「でもベッドの上じゃ食べ辛いし……」
ちらりとサイドテーブルに並ぶ料理を見る。横から料理をとるのは中々難しそうだった。
「はい、どうぞ」
いつの間にかヘンリーが、スプーンをこちらに向けている。
スプーンの上では美味しそうなリゾットが湯気を立てていた。
「え? ど、ど……」
「どうしたんですか? 早く食べてください。冷めますよ?」
有無を言わさぬ雰囲気に、クリスティーナは断ることが出来なかった。
大人しく口を開けると、ヘンリーがそっとスプーンを口に近づけた。
「……美味しい、です」
「それは良かったです」
ヘンリーはしたり顔で満足そうだ。クリスティーナに食べさせると、自分の分もゆっくりと食べ始めた。
(こ、これで食べろってこと!? いやいや流石にそれは……)
もう自分で食べられる。クリスティーナはそう言おうとして口を開くと、ヘンリーがすかさずスプーンを口元に持ってきた。
「も、もう自分で食べ」
「はい、食べて」
「あの、ヘンリー? 今日は一体どうし」
「ほら、どうぞ?」
クリスティーナが何か言おうとする度にスプーンを口にあてがわれ、気がつけば全て食べきっていた。
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