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覚醒(1)
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眩しい。
クリスティーナはカーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました。
「ん……ぅん? 朝? なんだか久しぶりによく寝たわね」
やけに寝覚めが良い。両腕を上げて伸びをすると、至近距離で声がした。
「おはようございます」
「おはよう……ん? ヘ、ヘンリー!?」
耳馴染みの良い声の方向に顔を向けると、そこにはいないはずのヘンリーがいた。
ヴェラでもモニカでもマシューでもない。家の中に自分と使用人以外がいる状況が、全く飲み込めなかった。しかも相手はヘンリーなのだ。
「な、な、何故ここにっ!?」
「昨日のこと、覚えていないのですか? 視察の帰りに倒れたんですよ?」
「え……あっ、私……あの後……」
昨日のことがフラッシュバックするかのように思い浮かぶ。
(そうだ、視察の帰りにヘンリーに会って、馬車に乗ろうとしたら……)
「ヘンリーが運んでくれたの? お、重かったでしょう?」
「羽のように軽かったですよ。お医者様によると過労、睡眠不足、栄養不足だそうです。目が覚めたら食事をしっかりとるようにと」
「一晩中、ここにいたの?」
「えぇ。マシューさんに許可は取りましたよ。クリスティーナの顔を見ていたら、僕も眠ってしまったみたいです」
(ヘンリーに抱えられてたってこと!? しかもベッドの横の椅子で寝かせてしまったの!? なんてことを……)
ヘンリーの言葉に頭を抱えたくなった。
「迷惑をかけて、ご、ごめんなさい」
クリスティーナは頭を下げた。
抱きかかえられた恥ずかしさと申し訳無さで、そのまま顔を上げることが出来なかった。
反対に、ヘンリーはすごく楽しそうだった。
「いいえ。昨日の夜は可愛らしいクリスティーナをたくさん見られたので、役得でした」
何故かご機嫌な様子のヘンリーに、クリスティーナは嫌な予感がした。おそるおそるヘンリーを見ると、満足そうに笑みを浮かべている。
「私……何もしてないわよね? なにか貴方を困らせるようなことを……」
「あぁ残念ですね。覚えていないのですか? ふふっ……何もありませんでしたよ」
ヘンリーはますます笑みを深めてそう言った。
(絶対嘘だわ! 私、何をしたのー!?)
クリスティーナは昨夜のことを必死に思い出そうとしたが、ほとんど思い出せなかった。
(なんだかすごく気持ち良くて、ふわふわしていたような……。途中でヘンリーの声が聞こえた気がするけど、その後の記憶なんか全くない……一体何が起きてたの!?)
「寝ていた時にしたことは、悪気があったわけじゃないと思うの……」
「そうでしょうね。大丈夫ですよ、怒っていませんから」
ヘンリーの反応から察するに、相当な何かをやらかしたに違いない。こんなにも楽しそうなのだから。
(もう絶対、ヘンリーの前では倒れないわ!)
「ところでクリスティーナ、僕は反省しました」
「な、何を?」
「もっと貴女のそばにいるべきだったと。貴女にもっと気を配り、少しの変化も見逃すべきではなかったと」
真剣な眼差しでそう言いながら、ヘンリーはクリスティーナの手を握った。
「や、えっと、健康管理は私の怠慢というか……ヘンリーが悪いわけじゃっ……!」
言い終わる前に、クリスティーナの手にヘンリーの唇が触れた。
「なっ……!」
「驚いた顔も可愛らしいですね」
「!!?」
クリスティーナは、もう声も出なかった。
クリスティーナはカーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました。
「ん……ぅん? 朝? なんだか久しぶりによく寝たわね」
やけに寝覚めが良い。両腕を上げて伸びをすると、至近距離で声がした。
「おはようございます」
「おはよう……ん? ヘ、ヘンリー!?」
耳馴染みの良い声の方向に顔を向けると、そこにはいないはずのヘンリーがいた。
ヴェラでもモニカでもマシューでもない。家の中に自分と使用人以外がいる状況が、全く飲み込めなかった。しかも相手はヘンリーなのだ。
「な、な、何故ここにっ!?」
「昨日のこと、覚えていないのですか? 視察の帰りに倒れたんですよ?」
「え……あっ、私……あの後……」
昨日のことがフラッシュバックするかのように思い浮かぶ。
(そうだ、視察の帰りにヘンリーに会って、馬車に乗ろうとしたら……)
「ヘンリーが運んでくれたの? お、重かったでしょう?」
「羽のように軽かったですよ。お医者様によると過労、睡眠不足、栄養不足だそうです。目が覚めたら食事をしっかりとるようにと」
「一晩中、ここにいたの?」
「えぇ。マシューさんに許可は取りましたよ。クリスティーナの顔を見ていたら、僕も眠ってしまったみたいです」
(ヘンリーに抱えられてたってこと!? しかもベッドの横の椅子で寝かせてしまったの!? なんてことを……)
ヘンリーの言葉に頭を抱えたくなった。
「迷惑をかけて、ご、ごめんなさい」
クリスティーナは頭を下げた。
抱きかかえられた恥ずかしさと申し訳無さで、そのまま顔を上げることが出来なかった。
反対に、ヘンリーはすごく楽しそうだった。
「いいえ。昨日の夜は可愛らしいクリスティーナをたくさん見られたので、役得でした」
何故かご機嫌な様子のヘンリーに、クリスティーナは嫌な予感がした。おそるおそるヘンリーを見ると、満足そうに笑みを浮かべている。
「私……何もしてないわよね? なにか貴方を困らせるようなことを……」
「あぁ残念ですね。覚えていないのですか? ふふっ……何もありませんでしたよ」
ヘンリーはますます笑みを深めてそう言った。
(絶対嘘だわ! 私、何をしたのー!?)
クリスティーナは昨夜のことを必死に思い出そうとしたが、ほとんど思い出せなかった。
(なんだかすごく気持ち良くて、ふわふわしていたような……。途中でヘンリーの声が聞こえた気がするけど、その後の記憶なんか全くない……一体何が起きてたの!?)
「寝ていた時にしたことは、悪気があったわけじゃないと思うの……」
「そうでしょうね。大丈夫ですよ、怒っていませんから」
ヘンリーの反応から察するに、相当な何かをやらかしたに違いない。こんなにも楽しそうなのだから。
(もう絶対、ヘンリーの前では倒れないわ!)
「ところでクリスティーナ、僕は反省しました」
「な、何を?」
「もっと貴女のそばにいるべきだったと。貴女にもっと気を配り、少しの変化も見逃すべきではなかったと」
真剣な眼差しでそう言いながら、ヘンリーはクリスティーナの手を握った。
「や、えっと、健康管理は私の怠慢というか……ヘンリーが悪いわけじゃっ……!」
言い終わる前に、クリスティーナの手にヘンリーの唇が触れた。
「なっ……!」
「驚いた顔も可愛らしいですね」
「!!?」
クリスティーナは、もう声も出なかった。
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