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社交界デビュー(2)
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「わぁっ……!」
パーティー会場に着くと、クリスティーナは思わず声を上げた。上品できらびやかな会場は、お伽噺の中のようだ。
そこでは鮮やかなドレスをまとった貴族達が会場に華を添えていた。
(王族の生誕祭は華やかね。人も多いし、これならひっそり社交界デビュー出来そう)
会場の絢爛さに多少怯んだものの、有象無象になれるというのは大きな利点だった。
ところがパーティー会場に入った途端、クリスティーナは自分の予想が間違っていたことに気がついた。
「ヘンリー様だわ! いつ見ても麗しいわね」
「久しぶりにお見かけしたわ! 本当に素敵!」
「隣りにいるのは……見ない方ね」
「誰かしら? とても親密そう」
「後でご挨拶したいわ!」
ヘンリーにエスコートされて歩くだけで、皆から注目されてしまったのだ。
(忘れてたわ。ヘンリーって皆から人気があるんだった……!)
ひっそりと過ごす計画が頓挫したクリスティーナは、恨めしそうにヘンリーを睨んだ。
クリスティーナの心情に気がつかないヘンリーは、優雅に微笑み返した。
「そうだ。言い忘れてましたけど、殿下の様子がいつもと違っても気にしないでくださいね」
「様子が違う? 体調が優れないの?」
「そうではなく……後で挨拶に行きましょう。そうすれば分かりますから」
「?」
ヘンリーの煮えきらない返答に頭を傾げていると、遠巻きにしていた何人かが近づいてきた。
「お久しぶりですわ、ヘンリー様。隣のお嬢様は初めてお見かけするのですけれど……ご紹介していただけます?」
二人が誰にも挨拶をしないので、痺れを切らしたご令嬢が自ら話しかけてきたのだ。
ヘンリーは一瞬だけ面倒くさそうな顔をしたが、すぐに笑顔に切り替えた。
「あぁ……クリスティーナ、こちらはマルネ公爵のご令嬢です」
「ソフィアです。以後お見知りおきを」
挨拶をしたソフィアはとても可愛らしかったが、品定めをするような目つきをしていた。
「クリスティーナ・フェンネルと申します」
「フェンネル……? あの伯爵家の、ですか?」
怪訝そうな表情をするソフィア。
その反応は、周囲で聞き耳を立てていた人々と同じだった。
「フェンネル家にご令嬢なんていたか?」
「聞いたことがないですわ。もしかして……妾の子だったりして」
「なるほどな。フェンネル夫妻が亡くなったから出てきたのかも」
「まぁっ! 下品なこと」
「何故ヘンリー様といらっしゃるの?」
(これが社交界……ヴェラの言う事は正しかったのね)
憶測が噂となり瞬く間に広がっていく。その様を間近で見たクリスティーナは、言葉が出なくなってしまった。
「失礼します。フェンネル伯爵、ヘンリー様、ジュリアス殿下がお呼びです」
「え、あ、はい。すぐに伺います」
石のように固まっていたクリスティーナを動かしたのは、礼儀正しい声だった。
執事と思われる初老の男性は周囲に礼をして、クリスティーナとヘンリーに奥の方へ進むように示した。
パーティー会場に着くと、クリスティーナは思わず声を上げた。上品できらびやかな会場は、お伽噺の中のようだ。
そこでは鮮やかなドレスをまとった貴族達が会場に華を添えていた。
(王族の生誕祭は華やかね。人も多いし、これならひっそり社交界デビュー出来そう)
会場の絢爛さに多少怯んだものの、有象無象になれるというのは大きな利点だった。
ところがパーティー会場に入った途端、クリスティーナは自分の予想が間違っていたことに気がついた。
「ヘンリー様だわ! いつ見ても麗しいわね」
「久しぶりにお見かけしたわ! 本当に素敵!」
「隣りにいるのは……見ない方ね」
「誰かしら? とても親密そう」
「後でご挨拶したいわ!」
ヘンリーにエスコートされて歩くだけで、皆から注目されてしまったのだ。
(忘れてたわ。ヘンリーって皆から人気があるんだった……!)
ひっそりと過ごす計画が頓挫したクリスティーナは、恨めしそうにヘンリーを睨んだ。
クリスティーナの心情に気がつかないヘンリーは、優雅に微笑み返した。
「そうだ。言い忘れてましたけど、殿下の様子がいつもと違っても気にしないでくださいね」
「様子が違う? 体調が優れないの?」
「そうではなく……後で挨拶に行きましょう。そうすれば分かりますから」
「?」
ヘンリーの煮えきらない返答に頭を傾げていると、遠巻きにしていた何人かが近づいてきた。
「お久しぶりですわ、ヘンリー様。隣のお嬢様は初めてお見かけするのですけれど……ご紹介していただけます?」
二人が誰にも挨拶をしないので、痺れを切らしたご令嬢が自ら話しかけてきたのだ。
ヘンリーは一瞬だけ面倒くさそうな顔をしたが、すぐに笑顔に切り替えた。
「あぁ……クリスティーナ、こちらはマルネ公爵のご令嬢です」
「ソフィアです。以後お見知りおきを」
挨拶をしたソフィアはとても可愛らしかったが、品定めをするような目つきをしていた。
「クリスティーナ・フェンネルと申します」
「フェンネル……? あの伯爵家の、ですか?」
怪訝そうな表情をするソフィア。
その反応は、周囲で聞き耳を立てていた人々と同じだった。
「フェンネル家にご令嬢なんていたか?」
「聞いたことがないですわ。もしかして……妾の子だったりして」
「なるほどな。フェンネル夫妻が亡くなったから出てきたのかも」
「まぁっ! 下品なこと」
「何故ヘンリー様といらっしゃるの?」
(これが社交界……ヴェラの言う事は正しかったのね)
憶測が噂となり瞬く間に広がっていく。その様を間近で見たクリスティーナは、言葉が出なくなってしまった。
「失礼します。フェンネル伯爵、ヘンリー様、ジュリアス殿下がお呼びです」
「え、あ、はい。すぐに伺います」
石のように固まっていたクリスティーナを動かしたのは、礼儀正しい声だった。
執事と思われる初老の男性は周囲に礼をして、クリスティーナとヘンリーに奥の方へ進むように示した。
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