9 / 11
9
しおりを挟む
「……ローラ、聞いていますか?」
「え?ごめんなさい。えっと、何でしたっけ?」
いけません。昔のことを思い返していたら、ぼんやりしてしまったようです。ヘンリー様に会ったからでしょうか……。
「婚礼について話をしようと思ったのですが……疲れているならまた改めます」
そうでした。これからチャールズ様と結婚に関する行事について話し合うのでしたね。
「いえ、大丈夫です!……あの、婚約披露のパーティーはささやかなものにしたいのですが」
「そうですね、親しい方々だけ呼べば良いでしょう。ただ、国王には報告に行かなければならないので……大丈夫ですか?」
チャールズ様は大公ですものね。直接国王に報告する必要がありますよね。王族の方々に会うのは気が重いですが、仕方がありません。
「お気遣いありがとうございます。ですが、チャールズ様が一緒なら大丈夫です」
私がそう言うと、チャールズ様は嬉しそうに笑って私の手を握りました。握られた手が熱い……。どうか気づかれませんように。
「ふふっ、手が熱いですね。ではパーティーの日程等を調整しておきます」
「……はい」
恥ずかしいわ。でも手を離されてしまうと、なんだか名残惜しいです。
「また明日会いにきます。明日はゆっくり過ごしましょう」
私が寂しく思っているのが分かったのでしょうか。本当に優しい方です。この方と結婚出来るのが、今でも夢のようです。
私が磁器や土壌に夢中になっている数日の間に、チャールズ様が婚礼の準備を整えてくださいました。
今日はいよいよ国王に挨拶に行く日です。
「ローラ、準備は出来ましたか?そろそろ行きましょう」
「はい」
何事もなく終われば良いのですが……。
「殿下、こちらが婚約相手のローラ・フィンレーです。すでにご存知でしょうが」
「ローラ・フィンレーです。……お久しぶりです、殿下」
「二人のことは聞いている。めでたい話だ。後日祝いの品を贈ろう。大公は気難しいが優秀だ。きっとレディと相性が良いだろう」
国王に何か言われるかと思いましたが、むしろ祝福されたので安心しました。
「「ありがとうございます」」
国王は祝福してくれましたが、宮殿に長居はしたくありません。ヘンリー様とのこともあり、居心地が悪いです。
早く帰りましょう、とチャールズ様に目線を送ると頷いてくれました。通じたようです。
「では僕たちはこれで失礼します」
そう言って、私を連れ出してくれました。
「早めに切り上げてくださり、ありがとうございます」
「いえ、僕も宮殿は嫌いですから」
「では早く帰りましょう!」
笑い合いながら廊下を歩いていると、知った声に呼び止められました。
「お、おい!ちょっと待って!少し話をさせてくれ」
「ヘンリー様……」
振り向くとすっかりやつれたヘンリー様が立っていました。
「え?ごめんなさい。えっと、何でしたっけ?」
いけません。昔のことを思い返していたら、ぼんやりしてしまったようです。ヘンリー様に会ったからでしょうか……。
「婚礼について話をしようと思ったのですが……疲れているならまた改めます」
そうでした。これからチャールズ様と結婚に関する行事について話し合うのでしたね。
「いえ、大丈夫です!……あの、婚約披露のパーティーはささやかなものにしたいのですが」
「そうですね、親しい方々だけ呼べば良いでしょう。ただ、国王には報告に行かなければならないので……大丈夫ですか?」
チャールズ様は大公ですものね。直接国王に報告する必要がありますよね。王族の方々に会うのは気が重いですが、仕方がありません。
「お気遣いありがとうございます。ですが、チャールズ様が一緒なら大丈夫です」
私がそう言うと、チャールズ様は嬉しそうに笑って私の手を握りました。握られた手が熱い……。どうか気づかれませんように。
「ふふっ、手が熱いですね。ではパーティーの日程等を調整しておきます」
「……はい」
恥ずかしいわ。でも手を離されてしまうと、なんだか名残惜しいです。
「また明日会いにきます。明日はゆっくり過ごしましょう」
私が寂しく思っているのが分かったのでしょうか。本当に優しい方です。この方と結婚出来るのが、今でも夢のようです。
私が磁器や土壌に夢中になっている数日の間に、チャールズ様が婚礼の準備を整えてくださいました。
今日はいよいよ国王に挨拶に行く日です。
「ローラ、準備は出来ましたか?そろそろ行きましょう」
「はい」
何事もなく終われば良いのですが……。
「殿下、こちらが婚約相手のローラ・フィンレーです。すでにご存知でしょうが」
「ローラ・フィンレーです。……お久しぶりです、殿下」
「二人のことは聞いている。めでたい話だ。後日祝いの品を贈ろう。大公は気難しいが優秀だ。きっとレディと相性が良いだろう」
国王に何か言われるかと思いましたが、むしろ祝福されたので安心しました。
「「ありがとうございます」」
国王は祝福してくれましたが、宮殿に長居はしたくありません。ヘンリー様とのこともあり、居心地が悪いです。
早く帰りましょう、とチャールズ様に目線を送ると頷いてくれました。通じたようです。
「では僕たちはこれで失礼します」
そう言って、私を連れ出してくれました。
「早めに切り上げてくださり、ありがとうございます」
「いえ、僕も宮殿は嫌いですから」
「では早く帰りましょう!」
笑い合いながら廊下を歩いていると、知った声に呼び止められました。
「お、おい!ちょっと待って!少し話をさせてくれ」
「ヘンリー様……」
振り向くとすっかりやつれたヘンリー様が立っていました。
96
あなたにおすすめの小説
白い結婚をご希望ですか? 良いですよ。私はジャガイモと筋肉を育てますので!
松本雀
恋愛
「……いいか、エルゼ。あらかじめ言っておくが、私は君を愛するつもりはない」
「願ったり叶ったりです! 実は私、国境警備隊に幼馴染の恋人がいまして。この結婚が決まった時、二人で『体は売っても心は売らない』って涙ながらに誓い合ったんです。閣下が愛してくださらないなら、私の貞操も守られます! ありがとうございます、公爵閣下!」
「……こいびと?」
◆
「君を愛するつもりはない」
冷徹な公爵ギルベルトが新婚初夜に放った非情な宣告。しかし、新妻エルゼの反応は意外なものだった。
「よかった! 実は私、国境警備隊に恋人がいるんです!」
利害が一致したとばかりに秒速で就寝するエルゼ。彼女の目的は、愛なき結婚生活を隠れ蓑に、恋人への想いを込めた「究極のジャガイモ」を育てることだった!
公爵家の庭園を勝手に耕し、プロテインを肥料にするエルゼに、最初は呆れていたギルベルト。だが、彼女のあまりにフリーダムな振る舞いと、恋人への一途(?)な情熱を目の当たりにするうち、冷徹だった彼の心(と筋肉)に異変が起き始めて……!?
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
婚約破棄されたので30キロ痩せたら求婚が殺到。でも、選ぶのは私。
百谷シカ
恋愛
「私より大きな女を妻と呼べるか! 鏡を見ろ、デブ!!」
私は伯爵令嬢オーロラ・カッセルズ。
大柄で太っているせいで、たった今、公爵に婚約を破棄された。
将軍である父の名誉を挽回し、私も誇りを取り戻さなくては。
1年間ダイエットに取り組み、運動と食事管理で30キロ痩せた。
すると痩せた私は絶世の美女だったらしい。
「お美しいオーロラ嬢、ぜひ私とダンスを!」
ただ体形が変わっただけで、こんなにも扱いが変わるなんて。
1年間努力して得たのは、軟弱な男たちの鼻息と血走った視線?
「……私は着せ替え人形じゃないわ」
でも、ひとりだけ変わらない人がいた。
毎年、冬になると砂漠の別荘地で顔を合わせた幼馴染の伯爵令息。
「あれっ、オーロラ!? なんか痩せた? ちゃんと肉食ってる?」
ダニエル・グランヴィルは、変わらず友人として接してくれた。
だから好きになってしまった……友人のはずなのに。
======================
(他「エブリスタ」様に投稿)
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる