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第三章
妖精との再会
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翌日、再び森に向かうことにした。クリスティーナさんは、一日くらい休んでから行きなさいと言ってくれたけれど、遅くなればなるほど状況が悪化するかもしれない。呪いだけでも早めに解いておきたかった。
(いつ寿命で死んでしまうか分からないし……とにかく今日中にパールとルチルを見つけなきゃ!)
帝国を出て森に入ると、クラウスは私の手をひいて歩き始めた。
「クラウス、この手は一体……」
「森の中で離ればなれになると危ないだろう? こうして繋いでおけば大丈夫」
(そうだった、森は危険だものね。他に意味なんてないわ。……それよりパールとルチルを探さなきゃ)
「クラウスもパールとルチルをご存知なんですよね。 いつもどの辺りで会うのですか?」
「うーん……いつも会える訳じゃないんだ。向こうの気が向いたら目の前に現れるって感じだから。でも、時々こちらからの呼びかけにも応じてくれる」
「では、呼びながら探してみましょう」
クラウスと一緒にパールとルチルの名を呼びながら森を彷徨っていると、見覚えのある花畑に辿り着いた。
「この場所……あの二人と遊んだ場所です。もしかしたら、ここにいるかも……パール! ルチル!」
二人を呼ぶと、呼びかけに応じるように風が吹いた。
「リディアだー」
「クラウスもいるー。遊びに来たのー?」
(来てくれた! 良かった……)
私がホッとしていると、クラウスが繋いでいる手を強く握り直した。こんなにも緊張しているクラウスを見るのは初めてだった。
「今日は君たちにお願いがあって来たんだ。リディアのことで……」
「なになにー?」
「リディアがどうかしたの?」
クラウスは声も表情も固かったが、妖精の二人はきょとんとしていて対照的だった。彼らに初めて会った時は流されるままに会話をしていたけれど、それは本来危険なことなのだろう。私達とは常識が異なる妖精を相手にするのだから、私も気を引き締めないといけない。
クラウスは私の方を見て、話すように促した。ここからは自分で交渉しなければ。
「先日お会いした時、私の呪いを一時的に解いてくださいましたよね。本当にありがとうございました。それで……今回は完全に解いていただきたいのです。お願いできませんか?」
「呪いだって気づいたんだ! ぜんぶ解いてほしいの?」
「解いたら妖精になる? ずっと一緒に遊べる? ずーっと遊びたーい」
パールとルチルは、にこにこと笑いながら遊ぼう遊ぼうと楽しそうにはしゃいでいた。二人を見ているとだんだん頭がボーっとしてしまう。思わずうなずきかけた時、クラウスが私の肩を強くゆすった。
「リディア、あまり二人を見つめないほうが良い。一度深呼吸をして」
耳元でクラウスが囁いた。その声にハッとして、顔を背けて深呼吸をした。危ない、また惑わされるところだった。
「申し訳ありません、妖精にはなれないのです。お礼は別で差し上げます。……価値のあるものは持っていないのですが……」
「クラウス、邪魔しないでよーあと少しだっだのに!」
「じゃあーそのお守りちょうだい! それも邪魔だし、嫌な感じがする」
ルチルが私の方を指さすと、ポケットに入っていたはずのお守りが熱くなり、白く光り始めた。
(いつ寿命で死んでしまうか分からないし……とにかく今日中にパールとルチルを見つけなきゃ!)
帝国を出て森に入ると、クラウスは私の手をひいて歩き始めた。
「クラウス、この手は一体……」
「森の中で離ればなれになると危ないだろう? こうして繋いでおけば大丈夫」
(そうだった、森は危険だものね。他に意味なんてないわ。……それよりパールとルチルを探さなきゃ)
「クラウスもパールとルチルをご存知なんですよね。 いつもどの辺りで会うのですか?」
「うーん……いつも会える訳じゃないんだ。向こうの気が向いたら目の前に現れるって感じだから。でも、時々こちらからの呼びかけにも応じてくれる」
「では、呼びながら探してみましょう」
クラウスと一緒にパールとルチルの名を呼びながら森を彷徨っていると、見覚えのある花畑に辿り着いた。
「この場所……あの二人と遊んだ場所です。もしかしたら、ここにいるかも……パール! ルチル!」
二人を呼ぶと、呼びかけに応じるように風が吹いた。
「リディアだー」
「クラウスもいるー。遊びに来たのー?」
(来てくれた! 良かった……)
私がホッとしていると、クラウスが繋いでいる手を強く握り直した。こんなにも緊張しているクラウスを見るのは初めてだった。
「今日は君たちにお願いがあって来たんだ。リディアのことで……」
「なになにー?」
「リディアがどうかしたの?」
クラウスは声も表情も固かったが、妖精の二人はきょとんとしていて対照的だった。彼らに初めて会った時は流されるままに会話をしていたけれど、それは本来危険なことなのだろう。私達とは常識が異なる妖精を相手にするのだから、私も気を引き締めないといけない。
クラウスは私の方を見て、話すように促した。ここからは自分で交渉しなければ。
「先日お会いした時、私の呪いを一時的に解いてくださいましたよね。本当にありがとうございました。それで……今回は完全に解いていただきたいのです。お願いできませんか?」
「呪いだって気づいたんだ! ぜんぶ解いてほしいの?」
「解いたら妖精になる? ずっと一緒に遊べる? ずーっと遊びたーい」
パールとルチルは、にこにこと笑いながら遊ぼう遊ぼうと楽しそうにはしゃいでいた。二人を見ているとだんだん頭がボーっとしてしまう。思わずうなずきかけた時、クラウスが私の肩を強くゆすった。
「リディア、あまり二人を見つめないほうが良い。一度深呼吸をして」
耳元でクラウスが囁いた。その声にハッとして、顔を背けて深呼吸をした。危ない、また惑わされるところだった。
「申し訳ありません、妖精にはなれないのです。お礼は別で差し上げます。……価値のあるものは持っていないのですが……」
「クラウス、邪魔しないでよーあと少しだっだのに!」
「じゃあーそのお守りちょうだい! それも邪魔だし、嫌な感じがする」
ルチルが私の方を指さすと、ポケットに入っていたはずのお守りが熱くなり、白く光り始めた。
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