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ドンドンドン!
手紙を出した一週間後、アリシアの家の扉はまたしても乱暴に叩かれた。
「はい、どちら様でしょうか……。あら、皆様お揃いで」
アリシアが微笑みかけた先には、両親、リリアナ、そしてロベルトが立っていた。
皆アリシアとは正反対な表情をしている。
「アリシア、どういうことだ! お、お前、我が家と縁を切るだなんて許さん!」
「こんな娘に育てた覚えはないわ!」
「そうよ! お姉様にはロベルト様と結婚する義務があるのですから、自分だけ逃げようだなんて……!」
「アリシア、僕と結婚する話はどうなったんだ!」
皆が悲痛な表情で口々に訴えてくる。
しかしアリシアは笑顔を崩さなかった。
「手紙に書いた通りです。私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに。皆様私の知らないところで穏やかに暮らしてくださいまし」
ぺこりと頭を下げる。
父が「そんなこと許されるわけない」と言いかけて、口をつぐんだ。
アリシアの後ろに人影が見えたからだ。
「アリシア、お客さんかい? 随分と賑やかだね」
「あらフランツ殿下、申し訳ありません。すぐにお帰りいただきますわ」
フランツと呼ばれた男性がやって来ると、皆の顔がさあっと青くなった。
「で、で……殿下!?」
皆はその場で跪き、頭を低く下げた。
彼はフランツ・フォン・リーメルト。この国の第二王子だ。
「僕のアリシアに何か用かい? 今、彼女は忙しいんだ。大した用じゃないなら帰ってもらえるかな?」
柔らかい口調だったが、有無を言わさぬ圧を放っている。
皆が固まっていると、アリシアは「頭を上げてください」と微笑んだ。
「申し訳ありません。フランツ殿下をお待たせしているので、これで失礼いたします。私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに。さようなら」
それだけ言って扉を閉めると、部屋に静寂が戻ってきた。
手紙を出した一週間後、アリシアの家の扉はまたしても乱暴に叩かれた。
「はい、どちら様でしょうか……。あら、皆様お揃いで」
アリシアが微笑みかけた先には、両親、リリアナ、そしてロベルトが立っていた。
皆アリシアとは正反対な表情をしている。
「アリシア、どういうことだ! お、お前、我が家と縁を切るだなんて許さん!」
「こんな娘に育てた覚えはないわ!」
「そうよ! お姉様にはロベルト様と結婚する義務があるのですから、自分だけ逃げようだなんて……!」
「アリシア、僕と結婚する話はどうなったんだ!」
皆が悲痛な表情で口々に訴えてくる。
しかしアリシアは笑顔を崩さなかった。
「手紙に書いた通りです。私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに。皆様私の知らないところで穏やかに暮らしてくださいまし」
ぺこりと頭を下げる。
父が「そんなこと許されるわけない」と言いかけて、口をつぐんだ。
アリシアの後ろに人影が見えたからだ。
「アリシア、お客さんかい? 随分と賑やかだね」
「あらフランツ殿下、申し訳ありません。すぐにお帰りいただきますわ」
フランツと呼ばれた男性がやって来ると、皆の顔がさあっと青くなった。
「で、で……殿下!?」
皆はその場で跪き、頭を低く下げた。
彼はフランツ・フォン・リーメルト。この国の第二王子だ。
「僕のアリシアに何か用かい? 今、彼女は忙しいんだ。大した用じゃないなら帰ってもらえるかな?」
柔らかい口調だったが、有無を言わさぬ圧を放っている。
皆が固まっていると、アリシアは「頭を上げてください」と微笑んだ。
「申し訳ありません。フランツ殿下をお待たせしているので、これで失礼いたします。私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに。さようなら」
それだけ言って扉を閉めると、部屋に静寂が戻ってきた。
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