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トリスタンと一緒に穏やかな日々を過ごしていたある日、両親から連絡がありました。なんと、リアが実家に戻されたようなのです。

パウルがリアを軟禁し、その仕返しとしてリアがパウルの全財産を使い切ってしまったのだとか……。バカバカしい話です。

しかもリアがパウルの悪評をばら撒いたようで、二人の評判は地に落ちていました。パーティーで根掘り葉掘り聞かれる私の身にもなってほしいものですわ。まあ、トリスタンが野次馬から守ってくれているので安心ですけれど。

「シーラはもうクラーク家の一員ですから、詳しいことは知らないのですよ。それにシーラは渦中の人々とは違って、とても知性的で魅力あふれる自慢の妻ですよ」

なんて言ってくださるのです。もうトリスタンったら……!



実家に戻されたリアは反省の色が全くなく、両親にパウルへの支払いをせがんだそうです。これにはリアに甘々な両親もさすがに怒ったようですね。

「リアにはバトラー公爵家の使用人として働いてもらうことにしたわ。使った金額を稼ぎきるまでね……」

お母様がげっそりとしながら教えてくれました。バトラー公爵家といえば、令嬢の花嫁修行の場として有名です。とても厳しいようですが、今のリアには丁度良いかもしれませんね。



「お姉様!私を匿ってください!お父様もお母様も、私をバトラー公爵家に連れて行くなんて言うのですよ?!」

あらあら、噂をすればってやつかしら……。今さら私を頼ろうだなんて甘いですわね。

「あら、リアじゃない。遊びに来るのは結構だけど、先に連絡をくれないと……。私たち出かける用事があるから、構ってあげられないの。じゃあね」

「そんな、お姉様……!」

リアはオロオロしながら家の前を彷徨っていましたが、しばらく放っていたら諦めて帰ったようです。最後までわがままな子ね。

なんて思っていたら、今度はパウルがやって来ました。

「シーラ!ここにいるんだろう?俺についての噂、否定してくれないか?俺は妻を軟禁するような男じゃないって!」

本当に似たもの夫婦ね。二人揃って蔑ろにしていた私を頼るなんて。

「パウル、巷で流れている噂は嘘ではないわ。本当のことでしょう?私のこともリアのことも、軟禁していたのは事実なのですから。仮面をかぶって外面だけ良くしても、いずれは剥がれてしまうってことね」

「いや、俺はただ……リアに反省してほしくて……そんなつもりでは」

なにやらボソボソと呟いていましたが、クラーク家の使用人によって外に連れ出されていきました。

「シーラ、わざわざ面倒な客人達の相手をする必要はないよ。僕に任せてくれても良いんだから」

「いいえ、トリスタンの手を煩わせるつもりはありませんわ。私の撒いた種ですから……」



心配してくれるトリスタンには申し訳ないですが、私はこの状況を結構楽しんでいます。

あの二人がお互いに足を引っ張りあって、堕落していく様をよく観察出来るのですからね。
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