6 / 6
6
しおりを挟む
トリスタンと一緒に穏やかな日々を過ごしていたある日、両親から連絡がありました。なんと、リアが実家に戻されたようなのです。
パウルがリアを軟禁し、その仕返しとしてリアがパウルの全財産を使い切ってしまったのだとか……。バカバカしい話です。
しかもリアがパウルの悪評をばら撒いたようで、二人の評判は地に落ちていました。パーティーで根掘り葉掘り聞かれる私の身にもなってほしいものですわ。まあ、トリスタンが野次馬から守ってくれているので安心ですけれど。
「シーラはもうクラーク家の一員ですから、詳しいことは知らないのですよ。それにシーラは渦中の人々とは違って、とても知性的で魅力あふれる自慢の妻ですよ」
なんて言ってくださるのです。もうトリスタンったら……!
実家に戻されたリアは反省の色が全くなく、両親にパウルへの支払いをせがんだそうです。これにはリアに甘々な両親もさすがに怒ったようですね。
「リアにはバトラー公爵家の使用人として働いてもらうことにしたわ。使った金額を稼ぎきるまでね……」
お母様がげっそりとしながら教えてくれました。バトラー公爵家といえば、令嬢の花嫁修行の場として有名です。とても厳しいようですが、今のリアには丁度良いかもしれませんね。
「お姉様!私を匿ってください!お父様もお母様も、私をバトラー公爵家に連れて行くなんて言うのですよ?!」
あらあら、噂をすればってやつかしら……。今さら私を頼ろうだなんて甘いですわね。
「あら、リアじゃない。遊びに来るのは結構だけど、先に連絡をくれないと……。私たち出かける用事があるから、構ってあげられないの。じゃあね」
「そんな、お姉様……!」
リアはオロオロしながら家の前を彷徨っていましたが、しばらく放っていたら諦めて帰ったようです。最後までわがままな子ね。
なんて思っていたら、今度はパウルがやって来ました。
「シーラ!ここにいるんだろう?俺についての噂、否定してくれないか?俺は妻を軟禁するような男じゃないって!」
本当に似たもの夫婦ね。二人揃って蔑ろにしていた私を頼るなんて。
「パウル、巷で流れている噂は嘘ではないわ。本当のことでしょう?私のこともリアのことも、軟禁していたのは事実なのですから。仮面をかぶって外面だけ良くしても、いずれは剥がれてしまうってことね」
「いや、俺はただ……リアに反省してほしくて……そんなつもりでは」
なにやらボソボソと呟いていましたが、クラーク家の使用人によって外に連れ出されていきました。
「シーラ、わざわざ面倒な客人達の相手をする必要はないよ。僕に任せてくれても良いんだから」
「いいえ、トリスタンの手を煩わせるつもりはありませんわ。私の撒いた種ですから……」
心配してくれるトリスタンには申し訳ないですが、私はこの状況を結構楽しんでいます。
あの二人がお互いに足を引っ張りあって、堕落していく様をよく観察出来るのですからね。
パウルがリアを軟禁し、その仕返しとしてリアがパウルの全財産を使い切ってしまったのだとか……。バカバカしい話です。
しかもリアがパウルの悪評をばら撒いたようで、二人の評判は地に落ちていました。パーティーで根掘り葉掘り聞かれる私の身にもなってほしいものですわ。まあ、トリスタンが野次馬から守ってくれているので安心ですけれど。
「シーラはもうクラーク家の一員ですから、詳しいことは知らないのですよ。それにシーラは渦中の人々とは違って、とても知性的で魅力あふれる自慢の妻ですよ」
なんて言ってくださるのです。もうトリスタンったら……!
実家に戻されたリアは反省の色が全くなく、両親にパウルへの支払いをせがんだそうです。これにはリアに甘々な両親もさすがに怒ったようですね。
「リアにはバトラー公爵家の使用人として働いてもらうことにしたわ。使った金額を稼ぎきるまでね……」
お母様がげっそりとしながら教えてくれました。バトラー公爵家といえば、令嬢の花嫁修行の場として有名です。とても厳しいようですが、今のリアには丁度良いかもしれませんね。
「お姉様!私を匿ってください!お父様もお母様も、私をバトラー公爵家に連れて行くなんて言うのですよ?!」
あらあら、噂をすればってやつかしら……。今さら私を頼ろうだなんて甘いですわね。
「あら、リアじゃない。遊びに来るのは結構だけど、先に連絡をくれないと……。私たち出かける用事があるから、構ってあげられないの。じゃあね」
「そんな、お姉様……!」
リアはオロオロしながら家の前を彷徨っていましたが、しばらく放っていたら諦めて帰ったようです。最後までわがままな子ね。
なんて思っていたら、今度はパウルがやって来ました。
「シーラ!ここにいるんだろう?俺についての噂、否定してくれないか?俺は妻を軟禁するような男じゃないって!」
本当に似たもの夫婦ね。二人揃って蔑ろにしていた私を頼るなんて。
「パウル、巷で流れている噂は嘘ではないわ。本当のことでしょう?私のこともリアのことも、軟禁していたのは事実なのですから。仮面をかぶって外面だけ良くしても、いずれは剥がれてしまうってことね」
「いや、俺はただ……リアに反省してほしくて……そんなつもりでは」
なにやらボソボソと呟いていましたが、クラーク家の使用人によって外に連れ出されていきました。
「シーラ、わざわざ面倒な客人達の相手をする必要はないよ。僕に任せてくれても良いんだから」
「いいえ、トリスタンの手を煩わせるつもりはありませんわ。私の撒いた種ですから……」
心配してくれるトリスタンには申し訳ないですが、私はこの状況を結構楽しんでいます。
あの二人がお互いに足を引っ張りあって、堕落していく様をよく観察出来るのですからね。
66
お気に入りに追加
200
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。
coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。
そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。
【完結】義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~
西東友一
恋愛
義母と義理の姉妹と暮らしていた私。
義母も義姉も義妹も私をイジメてきて、雑用ばかりさせてきましたが、
結婚できる歳になったら、売り払われるように商人と結婚させられそうになったのですが・・・・・・
申し訳ありませんが、王子と結婚します。
※※
別の作品だと会話が多いのですが、今回は地の文を増やして一人の少女が心の中で感じたことを書くスタイルにしてみました。
ダイジェストっぽくなったような気もしますが、それも含めてコメントいただけるとありがたいです。
この作品だけ読むだけでも、嬉しいですが、他の作品を読んだり、お気に入りしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった
有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。
何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。
諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。
家族から見放されましたが、王家が救ってくれました!
マルローネ
恋愛
「お前は私に相応しくない。婚約を破棄する」
花嫁修業中の伯爵令嬢のユリアは突然、相応しくないとして婚約者の侯爵令息であるレイモンドに捨てられた。それを聞いた彼女の父親も家族もユリアを必要なしとして捨て去る。
途方に暮れたユリアだったが彼女にはとても大きな味方がおり……。
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
離婚された夫人は、学生時代を思いだして、結婚をやり直します。
甘い秋空
恋愛
夫婦として何事もなく過ごした15年間だったのに、離婚され、一人娘とも離され、急遽、屋敷を追い出された夫人。
さらに、異世界からの聖女召喚が成功したため、聖女の職も失いました。
これまで誤って召喚されてしまった女性たちを、保護している王弟陛下の隠し部屋で、暮らすことになりましたが……
婚約破棄を告げられましたけど、現実的に反論して勝利しました
歩芽川ゆい
恋愛
「婚約を破棄する!」
ペルデンドシ王子の突然の宣言に、長年の婚約者だったブリランテ嬢は唖然としながらも、反論を試みた。
婚約破棄を告げられた女性が、冷静に反撃するお話、ざまあ成分は少ないです。
【完結】あなたがそのつもりなら〜婚約者は駆け落ちしました〜
白崎りか
恋愛
「君を愛している! 俺には君だけだ」
「いけないわ。あなたには婚約者がいるのに」
「この気持ちは、誰にも止められない!」
婚約者と侍女のラブシーンをのぞき見て、小説の世界に転生していたんだって気が付いた。
私の役どころは、二人の恋の障害となる婚約者の邪魔者令嬢。
ご都合主義の恋愛小説では、この後、邪魔者令嬢は庭師と駆け落ちして、勝手に消えてくれるんだけど。
私は絶対、そんなことはしない。
もしかして、私は駆け落ちしたことにされて、消されちゃうの?
あなたがそのつもりなら、私も……。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる