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翌日、新しい教育案を持ってロベルト様のもとを訪れると、ロベルト様はご不在でした。

「もうしばらくしたら戻りますので、こちらでお待ちください」

執事に案内されてロベルト様の執務室でしばらく待っていると、バタバタと音がして、ロベルト様がやってきました。

「待たせてすまない。ちょっと王立図書館に行ってきたんだ」

そう言いながら大量の本を机の上に置きました。

「図書館ですか?何か領地のことで調べ物でも?」

「いや、そうではなく……昨日の夜、久しぶりに鉱物の本を読んだんだ。そうしたら居ても立っても居られなくて、早速図書館で最近の論文を借りてきたんだ」

「まあ!そうだったのですか。これから研究をなさるのですか?」

「今はまだ情報収集をしているだけだ。……いずれしたいと思っているが。近くの鉱山が良い採集場になりそうなんだ。……ところで、今日は学校の新しい案を持ってきてくれたのでは?見せてくれ」

なんだか昨日までとは違って、ロベルト様が生き生きして見えます。いつにも増して饒舌ですし、目が輝いています。

本当に良かったわ。

「その通りですわ、こちらをご覧ください。この案ならロベルト様の懸念も払拭できるかと。細かいところは、ロベルト様のご助言がいただければと思います」

資料をお渡しすると、ロベルト様は熱心に読み始めました。

「……なるほど、花の教育だけでなく、希望した専門的な分野を学べるようにするのか。領内で学べない内容は、他領へ学習に行かせる……。これの資金は……成績上位順に奨学金を設けるのだな。確かにこれなら努力次第で、好きなことを学べるな」

「そうです。また、専門分野の指導者を学校に配置することで、新たな雇用も生まれるかと。他領との交流のきっかけにもなりますし、他領から花育成の技術を学びに来てもらうのも面白そうです」

「内容は大方問題ないだろう。専門分野の選定と奨学金の条件はもう少し……」




それから、ロベルト様のご助言もあって学校制度の改定は順調に進みました。

ロベルト様はご自身の鉱物研究の時間を確保しながらも、今まで以上の効率で領地の改善に取り組んでくれています。

出会った頃とは別人のようです。無気力無関心だった彼が精力的に公務を行う姿に、国王や王妃様も驚かれるほどでした。

「セリーヌ、私に研究の時間を確保させるために、無理しているのではないだろうな。君も自由な時間が必要だろう?占いが好きだと言っていたではないか。その時間は確保できているのか?」

「大丈夫ですよ。好きなことをする時間は設けてますから。ロベルト様こそ、あまり無理をなさらないでくださいね」

「心配はいらない。順調すぎて怖いくらいだ」

笑って答えるロベルト様を見ていると、幸せな気持ちになります。

「ロベルト様、せっかくですから運勢を占ってさしあげます。そうですね……ロベルト様は最近運気が上がってきているようです。今は、やりたいことにじっくり取り組むのか吉です。途中つまづくことがあるかもしれませんが、周囲に協力を仰ぐと乗り越えられそうですよ」

「上々な内容だが、それは当たるのか?」

「ふふっ、占いを楽しむコツは、良いことだけ信じることですよ」

「そういうものか。そういえば、セリーヌとの婚約も占いがきっかけだったな。そう思うと、占いも悪くないな」

「でしょう?」




二人が統治するリリンティアン領は、教育や産業が盛んとなり、他領の見本となっていった。

また、ロベルトとセリーヌが正式な夫婦となった時、社交界では仲の良さと相性の良さで評判となった。
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