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「学者ですか、なんだかすごく似合いそうですね。今はなりたくないのですか?」

学者とは意外でしたが、物事をじっくり考えるロベルト様にピッタリかもしれません。

「昔の話だ。自分が帝王学を本格的に学ぶ頃にはすっかり諦めた夢だ。どうせ将来は決まっているんだ……いつか父上が退位したら、俺は自動的に国王になる。だから何をしても同じだと思っていた。最低限の働きさえすれば、誰も文句は言わない。別に満足もしないがな」

だからいつも無気力な様子だったのですね。でも……

「でも、子どもたちにはそうなってほしくない、って思ったのですね」

「まぁ、そうだな。君の猪突猛進ぶりを見て、少し感化されたようだ」

「それ、褒め言葉として受け取りますね」

「そうしろ」

そう言ってロベルト様は少し微笑みました。初めて笑った顔を見た気がします。もっと笑えば良いのに。

「ロベルト様、私はロベルト様にも夢を諦めてほしくありませんわ。王子という立場でも、出来ることはあるはずです。幸い、国王はまだお若く、ご健在なのですから」

「俺のことは良いから……今から何かしようなどと思わない」

「いえ!良くありません。やりたいことがあるなら挑戦すべきです。公務は私が手伝いますから、空いた時間を自由に使ってください」

「今はリリンティアン領のことを話し合っていたはずだが……」

「そちらの方も考えてますわ。ロベルト様のお話のおかげで、新しい案が浮かびそうなのです。後日改めてお話しします。ですからご自分のことも考えてみてくださいね。王子だからって全てを諦める必要なんて、どこにもないですから」

「分かったよ、全くセリーヌには叶わないな……」

名前を呼ばれたのは自己紹介した時以来でしょうか。渋々と呼ばれたあの時とは違って、なんだかドキドキするわ……。

先程まで重苦しかった馬車の中が穏やかな空気に包まれて、ロベルト様の表情も和らいだ気がしました。




帰宅した後、急いで新しい教育案をまとめました。

リリンティアン領を任せられてから私の計画に頷くだけだったロベルト様が、初めて意思を示してくださったのですから、納得していただける案にしたいわ。

子どもたちの将来の夢を手助けできるような教育システムを構築すれば、リリンティアン領の発展にも繋がるでしょう。

夢を諦める人が少しでも減れば、無気力なまま仕事をする人が減るはずです。


ロベルト様は……再び夢を取り戻してくれるでしょうか。分かった、と言ってくださいましたけれど、今から何かを始めるのは大変なはずです。

無責任な発言をしたつもりはありませんが、もっと私に出来ることがあると良いのですが。
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